AIIBは窮余の一策(覚書)『中国大減速の末路』 長谷川慶太郎
七月二〇日発行の本だけど、著者の長谷川慶太郎さんが書いた“はしがき”の最後に記された日付が二〇一五年五月。六月半ばから始まった上海株式市場の暴落は、その後に起こったこと。ギリシャのデフォルトが話題となるなか、突如上海株式市場の暴落が始まった。

長谷川さんはこの時点で、“中国経済の失速は避けられない”として、習近平政権がその時訪れる深刻な事態にどう対処するかに注目している。しかし、その上で、手をこまねいていれば、すぐさま支那は経済的、政治的混沌に陥る。あるいは厳しい対処で経済を健全な方向へ戻そうとすれば、結果として大量倒産、大量失業をもたらす。


アジアインフラ投資銀行、略称AIIBは、習近平が二〇一三年に提唱して、二〇一四年に参加国集めが始まった。設立メンバーの締め切りとした二〇一五年三月に参加表明が集中。四月には創立メンバー五七カ国が発表され、六月二九日に設立協定の調印式が行われる。
・・・みんなのお金を使ってさ。しかも何より“お金を使う”ってことが第一義で、あとは野となれ山となれ。欧米はじめ、世界はけっこう支那の本質に無知。
日本国内でも参加した方がいいという人は多かった。
維新の党江田憲司
中国外交の勝利、日本外交の完全敗北だ。アジア経済、インフラ開発の秩序作りに貢献すべきだ。今からでも遅くはないので参加してほしい。
民主党蓮舫
貧困解消や格差是正などのために日本はアジアで努力すべきだったが、結果は成功していない。
日本共産党志位和夫委員長
アジア諸国はこぞって参加し、韓国、オーストラリアも参加、イギリス、フランス、ドイツなど主要な欧州諸国も参加しています。日本は、「出遅れ」は否めませんが、今からでも参加すべきです。公正・民主的な新しい国際経済秩序を展望した国際金融システムをめざすという立場で、アジアインフラ投資銀行に参加し、ルールづくりに参画していくべきです。福田康夫元首相
日本政府も積極的に情報を収集して、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するかどうかを決定すべきだ。アジアにはインフラ投資の需要がある。現在の(国際金融)メカニズムでは対応できなければ、インフラが不足する国の建設の歩みが遅れることになる。孫崎享
中国主導の銀行に英国、ドイツ、フランスが米国の要請に反旗を翻し、参加を表明し、豪州、韓国もこれに続くとみなされている中、日本は趨勢に逆らって何の利益があるか。この分野はゼロサムの分野ではない。基本はウィン・ウィンの協力の分野のはずである。英国、ドイツ、フランスは中国は世界最大の経済国になることを前提にこの力をいかに取り込むか、特に英国の金融界、と考えている中、日本はいたずらに範疇を弄ぶつけがこれおから深刻に出てくる。民主党の岡田克也代表
日米も中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の枠組み作りの交渉に参加すべきだとした上で、もし米国が難しければ、日本が単独で加わることも必要だ。
さて、AIIBに対する長谷川さんの指摘。
支那がインフラ投資を通じてアジア諸国を取り込むため、シルクロード基金にAIIBを加え、豊富な資金力を武器に周辺地域への影響力を強めようとしている、と考えられているが、これは間違いだというんだな。長谷川さんは、支那が日米の反対を押し切ってまでAIIBを設立する理由を、支那の国内事情に求めている。
これまでの「国土開発バブル」が完全に行き詰まり、崩壊した今、バブル経済の泡に浮かれ、過剰供給に陥った鉄鋼、建設、セメント、鉄道車両、不動産業界が一気に吹っ飛ぶ。そうなれば、文字どおり支那社会そのものがぶっ飛ぶ。中国共産党など跡形も残さない。なんとか支那経済を軟着陸させるためには、過剰供給をさばく絶好のはけ口を海外のインフラ整備事業に求め、そのための資金調達期間としてAIIBを設立した。長谷川さんは、「中国の、中国のための銀行」とまで言っている。
イギリス、フランス、ドイツ、イタリアやオーストラリアと言った国々が参加したのは、まずは支那との経済、外交上のリスクヘッジとしてだろうと長谷川さんは言っている。だから、出資額も極めて小さいものになるだろうと。・・・私は支那に対する無知があるんじゃないかと考えたんだけど、短絡的と思われるかもしれないけど、けっこうあたってると思ってる。
あっ、そうそう。韓国だけど、・・・やっぱり支那に進んで取り込まれたいんだろうか。
既存のアジア開発銀行(ADB)の融資条件は、基本的に金利五%前後、返済は二五年以上という良い条件。二五年あればインフラの償却はほぼ終わるので、途上国の多くがADBから融資を受けているという。資金調達コストの高いAIIBは、ADBより融資条件を厳しくせざるをえないので、優良案件ほどADBの融資を受け、そこに漏れた案件がAIIBに廻る。AIIBはADBよりハイリスクとなる。しかも完成するインフラの質は、支那のものと同程度か、あるいは下。
まあ、あの時賛成してた人たちも、今では自分が言ったことなんて忘れたでしょう。彼らに必要なのは、《短い記憶と二枚の舌》ですからね。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
ところが当初、報道の中心はギリシャのデフォルトの情報ばかりを流し続け、なんとなく世界は支那の状況を呆けたように見ていたように思う。もし、本当にこれが終わりの始まりなら、債務残高四二兆円のギリシャの問題なんか跡形もなく吹っ飛ぶほどの大問題。人はあんまり問題が大きすぎると、やがて訪れる悲劇を実感できずに呆けてしまうのか。 |
長谷川さんはこの時点で、“中国経済の失速は避けられない”として、習近平政権がその時訪れる深刻な事態にどう対処するかに注目している。しかし、その上で、手をこまねいていれば、すぐさま支那は経済的、政治的混沌に陥る。あるいは厳しい対処で経済を健全な方向へ戻そうとすれば、結果として大量倒産、大量失業をもたらす。
そうなれば日本のような社会福祉制度のない支那では、失業者は一夜にして路上生活者に転落死、寒い時期には多くの凍死者を出す。そういった危機に見舞われたものの不満が爆発すれば、結局は経済的、政治的混沌に陥る。以上が長谷川さんの予想。・・・あくまで、五月の段階でのね。 |
『中国大減速の末路』 長谷川慶太郎 東洋経済新報社 ¥ 1,620 日本はアジアの盟主となる 日本は高度な技術力を背景に、世界経済を牽引していくことになる |
アジアインフラ投資銀行、略称AIIBは、習近平が二〇一三年に提唱して、二〇一四年に参加国集めが始まった。設立メンバーの締め切りとした二〇一五年三月に参加表明が集中。四月には創立メンバー五七カ国が発表され、六月二九日に設立協定の調印式が行われる。
欧米からも参加が表明されたのはけっこう驚いた。途上国のインフラ整備にみんなのお金を使って需要を創設しましょうとは言っても、それを支那が主導するということになれば、ここ三〇年間ほど支那国内で行われていたことが世界各地で行われるようになるってことでしょう。 |
日本国内でも参加した方がいいという人は多かった。
維新の党江田憲司
中国外交の勝利、日本外交の完全敗北だ。アジア経済、インフラ開発の秩序作りに貢献すべきだ。今からでも遅くはないので参加してほしい。
民主党蓮舫
貧困解消や格差是正などのために日本はアジアで努力すべきだったが、結果は成功していない。
日本共産党志位和夫委員長
アジア諸国はこぞって参加し、韓国、オーストラリアも参加、イギリス、フランス、ドイツなど主要な欧州諸国も参加しています。日本は、「出遅れ」は否めませんが、今からでも参加すべきです。公正・民主的な新しい国際経済秩序を展望した国際金融システムをめざすという立場で、アジアインフラ投資銀行に参加し、ルールづくりに参画していくべきです。福田康夫元首相
日本政府も積極的に情報を収集して、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するかどうかを決定すべきだ。アジアにはインフラ投資の需要がある。現在の(国際金融)メカニズムでは対応できなければ、インフラが不足する国の建設の歩みが遅れることになる。孫崎享
中国主導の銀行に英国、ドイツ、フランスが米国の要請に反旗を翻し、参加を表明し、豪州、韓国もこれに続くとみなされている中、日本は趨勢に逆らって何の利益があるか。この分野はゼロサムの分野ではない。基本はウィン・ウィンの協力の分野のはずである。英国、ドイツ、フランスは中国は世界最大の経済国になることを前提にこの力をいかに取り込むか、特に英国の金融界、と考えている中、日本はいたずらに範疇を弄ぶつけがこれおから深刻に出てくる。民主党の岡田克也代表
日米も中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の枠組み作りの交渉に参加すべきだとした上で、もし米国が難しければ、日本が単独で加わることも必要だ。
さて、AIIBに対する長谷川さんの指摘。
支那がインフラ投資を通じてアジア諸国を取り込むため、シルクロード基金にAIIBを加え、豊富な資金力を武器に周辺地域への影響力を強めようとしている、と考えられているが、これは間違いだというんだな。長谷川さんは、支那が日米の反対を押し切ってまでAIIBを設立する理由を、支那の国内事情に求めている。
これまでの「国土開発バブル」が完全に行き詰まり、崩壊した今、バブル経済の泡に浮かれ、過剰供給に陥った鉄鋼、建設、セメント、鉄道車両、不動産業界が一気に吹っ飛ぶ。そうなれば、文字どおり支那社会そのものがぶっ飛ぶ。中国共産党など跡形も残さない。なんとか支那経済を軟着陸させるためには、過剰供給をさばく絶好のはけ口を海外のインフラ整備事業に求め、そのための資金調達期間としてAIIBを設立した。長谷川さんは、「中国の、中国のための銀行」とまで言っている。
イギリス、フランス、ドイツ、イタリアやオーストラリアと言った国々が参加したのは、まずは支那との経済、外交上のリスクヘッジとしてだろうと長谷川さんは言っている。だから、出資額も極めて小さいものになるだろうと。・・・私は支那に対する無知があるんじゃないかと考えたんだけど、短絡的と思われるかもしれないけど、けっこうあたってると思ってる。
あっ、そうそう。韓国だけど、・・・やっぱり支那に進んで取り込まれたいんだろうか。
既存のアジア開発銀行(ADB)の融資条件は、基本的に金利五%前後、返済は二五年以上という良い条件。二五年あればインフラの償却はほぼ終わるので、途上国の多くがADBから融資を受けているという。資金調達コストの高いAIIBは、ADBより融資条件を厳しくせざるをえないので、優良案件ほどADBの融資を受け、そこに漏れた案件がAIIBに廻る。AIIBはADBよりハイリスクとなる。しかも完成するインフラの質は、支那のものと同程度か、あるいは下。
まあ、あの時賛成してた人たちも、今では自分が言ったことなんて忘れたでしょう。彼らに必要なのは、《短い記憶と二枚の舌》ですからね。


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