『日本史の法則』 渡部昇一
この本が出たのは平成一七(二〇〇五)年、今から十年前ですね。私はその頃にこの本を読んだ。四五歳の頃か。当時、一七歳だった娘に、「お前がもし歴史に興味をもつことがあったら、迷わずこの本を読め」と言った覚えがある。娘は迷わず美術の道へ進み、高額の学費を消費したうえで張り子づくりを職業として、一児の母となった。
長女と六歳離れた長男が高校生の時、やはり同じように、「お前がもし歴史に興味をもつことがあったら、迷わずこの本を読め」と告げた。息子は迷わず物理学の道を専攻し、もはや私には理解することの出来ない数式を相手にしている。来年の春からは年老いた両親を残して、滋賀県の企業に就職をするらしい。
結局、子どもたちはこの本を読んでない。勧め方が悪かったな。もっと強引に、「読め❢」と命ずべきだった。ある意味では、場合によっては“歴史”に関与せずに生きていくかもしれない彼らだからこそ、この本を読んでおく必要があった。

実は、この本が書かれたのはずっと前のことで、最初は昭和五四(一九七九)年、『歴史の読み方』という題名で刊行されたんだそうです。
どうも私はせっかちなもんで、あとから本の素性が知りたくなると“まえがき”やらを読む。だから、あとから「えっー❢」ってことはよくある。およそ一〇年前にこの本を読んだ時もそうだった。あとから昭和五四(一九七九)年に書かれたもんだってことを知って、「えっー❢」。その時点、というのは一〇年前だけど、ちっとも古臭さなんか感じなかった。
ということは、残念ながらこの本が最初に出された昭和五四年から平成一七年にかけて、日本の“歴史”、あるいは学校における“歴史教育”は何ら変わり映えしていないことを意味する。
韓国や支那が言い立てる“歴史認識”に、さすがに嫌気が差して、昨今ようやく変化の兆しが見られるものの、諸悪の根源である歴史教育そのものは泰然自若として、まさに動かざること山の如し。
だからこの本、今読んでも古臭くない。つまり、この本が古臭くないということは、日本人にとって悲しむべきことなんだな。
おそらく日本は世界で一番分かりづらい国。世界には歴史を見る“基準”というものがある。大概の国は、その基準によって推し量ることができる。ところが日本をその基準で推し量ろうとすると、わけの分からない化物のような国になってしまう。それを“未開人”と切って捨てられれば問題はない。欧米人はそうやって片付けてきた。
ところが、日本人だけは欧米人に匹敵する、時には上回る力を発揮してきた。日本人には基準が当てはまらない。当てはまらないが、欧米人に匹敵する能力を持つ。欧米人にすれば、わけの分からない怪物だ。
ポイントはいくつかある。一神教を受け入れてないこと、民族の交代がなく神話から現代まで歴史が連続していること、そのあたりのことはこの本にも書いてあった。この本に書かれていないことを一つ加えておきたいんだけど、それは世界を襲った“ペスト”。“ペスト”によって世界は、古代からの伝統と権威と文化に意味をもたせることができなくなった。
人の親となっていつか道を説く日が来るなら、あるいは就職して日本の看板を背負うこともあるのなら、あいつらにはこの本を読ませておかなきゃいけない。今度はこう言おう。「四の五の言わずに、読め❢」

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
長女と六歳離れた長男が高校生の時、やはり同じように、「お前がもし歴史に興味をもつことがあったら、迷わずこの本を読め」と告げた。息子は迷わず物理学の道を専攻し、もはや私には理解することの出来ない数式を相手にしている。来年の春からは年老いた両親を残して、滋賀県の企業に就職をするらしい。
結局、子どもたちはこの本を読んでない。勧め方が悪かったな。もっと強引に、「読め❢」と命ずべきだった。ある意味では、場合によっては“歴史”に関与せずに生きていくかもしれない彼らだからこそ、この本を読んでおく必要があった。
祥伝社 ¥ 1,028 あしたの予見する歴史の読み方 |
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どうも私はせっかちなもんで、あとから本の素性が知りたくなると“まえがき”やらを読む。だから、あとから「えっー❢」ってことはよくある。およそ一〇年前にこの本を読んだ時もそうだった。あとから昭和五四(一九七九)年に書かれたもんだってことを知って、「えっー❢」。その時点、というのは一〇年前だけど、ちっとも古臭さなんか感じなかった。
ということは、残念ながらこの本が最初に出された昭和五四年から平成一七年にかけて、日本の“歴史”、あるいは学校における“歴史教育”は何ら変わり映えしていないことを意味する。
韓国や支那が言い立てる“歴史認識”に、さすがに嫌気が差して、昨今ようやく変化の兆しが見られるものの、諸悪の根源である歴史教育そのものは泰然自若として、まさに動かざること山の如し。
だからこの本、今読んでも古臭くない。つまり、この本が古臭くないということは、日本人にとって悲しむべきことなんだな。
おそらく日本は世界で一番分かりづらい国。世界には歴史を見る“基準”というものがある。大概の国は、その基準によって推し量ることができる。ところが日本をその基準で推し量ろうとすると、わけの分からない化物のような国になってしまう。それを“未開人”と切って捨てられれば問題はない。欧米人はそうやって片付けてきた。
ところが、日本人だけは欧米人に匹敵する、時には上回る力を発揮してきた。日本人には基準が当てはまらない。当てはまらないが、欧米人に匹敵する能力を持つ。欧米人にすれば、わけの分からない怪物だ。
ポイントはいくつかある。一神教を受け入れてないこと、民族の交代がなく神話から現代まで歴史が連続していること、そのあたりのことはこの本にも書いてあった。この本に書かれていないことを一つ加えておきたいんだけど、それは世界を襲った“ペスト”。“ペスト”によって世界は、古代からの伝統と権威と文化に意味をもたせることができなくなった。
人の親となっていつか道を説く日が来るなら、あるいは就職して日本の看板を背負うこともあるのなら、あいつらにはこの本を読ませておかなきゃいけない。今度はこう言おう。「四の五の言わずに、読め❢」


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