めんどくせぇことばかり 『カンディード』 ヴォルテール
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『カンディード』 ヴォルテール

おもしろい。おもしろい。おもしろい。おんもしろ~い。ヴォルテールがこんな本を書いていたなんて、ちっとも知らなかった。

それにしても翻訳って難しいもんなんだな。言葉や筋の説明があるんだけど、本当にその時代をしっかり勉強しておかないと翻訳なんてできないんだね。《プロテスタント=不寛容》、《プロテスタントは教皇を“反キリスト”とみなす》、《フランシスコ会の修道士は好色》、《イエズス会の神父は同性愛者》、《「ぶどう園で働く」とはイエズス会士にとって全世界に福音を伝えること》。・・・大したもんだな。

この本の最後にヴォルテールの年譜がおまけされてるんだけど、二三歳でバスティーユに投獄されてるんですね。理由は、摂政オルレアン公を風刺した詩を発表したからだって。最初っからフランス革命にも多大な影響を与えた啓蒙哲学者ってふうに頭に入っちゃってるから、それ以外の情報をシャットアウトしちゃってたかも。

こんな面白い本を書いているなら、もっと早く読みたかった。
光文社古典新訳文庫  ¥ 1,058

お前たちは虚弱なのだから、互いに助け合わねばならない
姫は、押し込んできたブルガリアの兵士たちに強姦され、さんざん辱められたあげく、腹を切り裂かれたのだ。姫を守ろうとなさった殿も、頭を叩き割られた。奥方はあの体をぶつ切りにされた。私のもう一人の生徒、あの若殿もかわいそうに妹と同様、兵士たちに辱められて殺された。

書かれていることはこんな話ばかりで、絶望の連続。絶望から絶望に旅をするカンディード。でもなぁ。ヴォルテールが書いたって頭があるから、どうしてもこの絶望に意味があると思ってしまうところなんだけど、とりあえず最後まで面白おかしいカンディードの冒険譚として読んだ。

とは言っても考えさせられてしまう。だって、『すべては最善となるため整えられている』って、男爵のところの侍女とちょくちょくエッチなことをして梅毒を移されたパングロス先生が言うんだもの。そのたびごとに、「なにが最善だよ」ってつぶやいてしまう。

神さまは完璧だからね。失敗なんかするわけないんだからね。その神様が作った世界だから、こちらは最善なわけだね。ただし諸般の事情から、世界は最初から最善に作られたのではなく、“最善となるよう整えられている”というわけなんだな。

そんなことを考えてりゃ、なにもヴォルテールが『ガンディード』を書いて社会を風刺するまでもなく、当時、現実に起こっていたことの一つ一つがことごとくバカバカしいまでの“コント”に見えたんじゃないかな。結局、最後は「つべこべ言ってないで、自分の畑をたがやしましょう」ってことになるんだもんね。

あとから解説を読んだらね。上に書いたことを、解説の人は〈形而上学的・神学的な考えを批判している〉と書いていた。でもやっぱりヴォルテールは啓蒙思想家の時代の人だからね。『カンディード』にも神に対する疑いの萌芽は感じるけど、攻撃の対象は“迷信”であり、“不寛容”ってことでしょうね。

解説の最後に『寛容論』の一節が紹介されてましてね。ずっと以前に読んでるはずなんですが、とても新鮮だったので、最後に紹介しときます。
自然は、人間たちの全員に向かって、こう語りますー

 私はお前たち人間を、そろって虚弱で無知なるものとして生み出した。それは、お前たちをこの地上でほんの短い間生きさせて、そして、お前たちの遺体をこの大地の養分とするためである。お前たちは虚弱なのだから、互いに助け合わねばならない。お前たちは無知なのだから、互いにものを教え合い、我慢しあわねばならない。
 お前たちがそろって同じ意見になった場合、と言ってもそういうことはけっしてありえないのだが、もしもそうなった場合、そこで反対の意見をいう者がたった一人しかいなくても、お前たちはその人を許さなければならない。なぜなら、彼にそのような考えを抱かせたのは、ほかならぬこの私だからだ。
 私はお前たちに、土地を耕すための二本の腕を与えた。私はお前たちに、自分で行動できるよう理性のかすかな光を与えた。私はお前たちの心のなかに、人への思いやりを芽生えさせた。それは、お前たちが互いに助けあい、頑張ってこの世で生き抜くためである。この芽を枯らしてはならない。腐らせてはならない。この芽は神聖なものである。そう心せよ。そして、宗派同士のおぞましい怒鳴り合いで、こうした自然の声がかき消されないようにせよ。
・・・なんか、ヴォルテールがすぐ近くまで来てたように感じる。だけど、ヨーロッパは結局“理性”に神のお墨付きまで与えて、“自然”を組み伏せて言っちゃうんだよね。・・・もったいなかったな。





 


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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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