めんどくせぇことばかり マスコミの餌食(覚書)『ドキュメント 道迷い遭難』 羽根田治

マスコミの餌食(覚書)『ドキュメント 道迷い遭難』 羽根田治

地元にいてはわからなかったが、そこから出てみると分かる。地元って、埼玉県の秩父なんだけど、よその人から見れば、秩父自体が山。しかも、秩父の象徴でもある武甲山の山麓の生まれ。そんな私だけど、高校で山岳部に入るって言った時は、家族みんなから反対された。
以前書いたことがあるかもしれないが、そのとき祖母は、「探しづらいところで遭難するな」っていうような意味のことを言った。「お前は死んでも・・・」なんて意味で行ったわけじゃないんだけど、遭難救助の費用負担で田畑売って家が潰れることもあるってことを言っていた。

だから、もし、万が一、遭難するようなことがあっても、探してもらえないかもしれないし、探してもらって家が潰れたりしたら困るから、そういう時は探してほしくないなって思ってた。・・・まあ、大前提として、遭難するなんて思って山に行ってないけどね。

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「おかしいなと思ったら引き返せ」「道に迷ったら、沢を降りるな」
どんなに人命が尊ばれようが、どんなに行政が登山道を整備しようが、好き好んで山に行くならば、基本的に自己責任。もしも最悪の事態を迎えたとしても、自己責任。また、探されてしまっても、救助されてしまっても、それは自己責任なんだな。

この本には七つの遭難の事例が紹介されている。その六つ目が《房総・麻綿原高原 二〇〇三年十一月》という“できごと”。今、“できごと”としたのには意味がある。“遭難”には、代償がつきまとう。自分の身体や、時には命が代償となる。多額の救助費用を要求されることもある。だけどそれだけじゃない。救助が始まれば、赤の他人に予定外の苦労を強いることもある。人にその身を危険に晒させてしまうことも、決してないわけじゃない。

だけど、これは遭難か?
雑誌『新ハイキング』会員を中心に、雑誌に掲載された該当の山行計画につどった会員以外からも参加できる「合同山行」と呼ばれる山行にすぎない。そこには何の金銭関係も発生していないんだから、当然ツアー登山ではない。コースは石尊山から麻綿原高原までの縦走ルート。
三十人の山行だったそうだ。雑誌会員の企画、募集で始まった山行という性質上、リーダーシップの所在は自ずから定まる。また各参加者にしても、それを前提として参加した以上、リーダーの指導が常識の範囲であればそれに従うのが参加者の節度である。今回の場合、リーダー側にも、参加者側にも著しい落ち度のようなものはない。

道迷いと、幾つかのちょっとした不手際と不運な巡り合わせから、日帰りのはずが林道近くでビバーク。結果として救助が始まってしまった。
高取山
救助活動が始まってしまったが、予定外の苦労、あるいはその身を危険に晒させるような事態にも至っていない。万が一、そういった事態が発生したとしても、遭難者が頭を下げなきゃいけないのは救助関係者であって、マスコミじゃない。

それにしても見て、上の地図。・・・とても見にくいでしょうけど。等高線緩いしさ。緩い範囲で高低差が激しそうでね。見るからに厄介で、とても楽しそう。ここを歩くんなら、多少のことは“ある”ことが前提になりそう。そんなこと知りもしないマスコミが、「何人くらい死んだかな」って食らいついてきたことが、原因の八〇%かな。
  • 麻綿原高原に下りて行くと、待ち構えていた大勢の報道陣が嶋田らに殺到した。数えきれないほどマイクをつきつけられ、「なんで連絡しなかったんだ」「非常識だ」「無責任だ」という言葉が次から次へと浴びせられた。「私が話をするから、ほかの人は勘弁してくれ」と島田が言っても、誰も聞いてくれなかった。
  • 護送車で対策本部の置かれた清澄寺に搬送された。そこもまたテレビ局や新聞社の巣窟となっていた。報道陣からは「記者会見しろ」という声が上がり始めた。
  • 会見では「計画が不備だったのでは?」「どうして連絡しなかったのか?」「責任は?」と言った質問に終止した。下山してくる途中から同じような質問を浴びせられていた嶋田は最後にとうとう堪忍袋の緒が切れて、「批判はあると思うが、私の判断は間違っていなかった」と言い切ってしまった。嶋田はマスコミから袋叩きの格好となり、最後はお巡りさんが「もうやめろ」といって会見をうち切った。
  • 会見の後、大手新聞社の記者が「ちょっとお話を」と嶋田に近づいてきた。「今は手が離せないからかんべんしてくれ」と言ったら、こう捨て台詞を吐いた。「話してもらえないならそれでも構いませんよ。それなりの書き方がありますから」
  • テレビのニュースでは、ちゃんと始末したはずの焚き火の燃え残りが地面の上に積み上げられていたということだった。「焚き火の燃えカスが残っています。ここで一夜を明かしたのでしょう」というナレーションがその映像に重ねられていた。
  • 名簿は公表しなかったにも関わらず、参加者の何人かの家には報道陣が押しかけた。嶋田の家の縁側には靴底の後がついていた。

ここに出てくる“嶋田”さんという方が、リーダーの方。このできごとののち、心因性の神経症にかかってしまい、安定剤を手放せたのはずいぶんと経ってからだという。

これは遭難じゃなく、マスコミが作り上げた騒動だね。・・・まあ、マスコミにしてみれば、期待してたのに一人も死なずに帰ってきたことが許せなかったんだろうね。


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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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