めんどくせぇことばかり カリフ制復興(覚書)『クルアーンを読む カリフとキリスト』  中田考 橋爪大三郎

カリフ制復興(覚書)『クルアーンを読む カリフとキリスト』  中田考 橋爪大三郎

第一章  クルアーンとは何か
第二章  書物としてのクルアーン
第三章  クルアーンで分かる世界史
第四章  イスラームの歴史・神・法
第五章  カリフ制
やられた。問題となるのは第五章《カリフ制》でした。第三章の《クルアーンでわかる世界史》、第四章の《イスラームの歴史・神・法》を読んで、おもしろがって、分かった気になって記事を書いてしまった。そんなんでわかった気になってたら、まったくの見当はずれ。「はい、それまーで~よ。バッハッハーイ」になっちゃうところでした。

橋爪さんから突っ込まれてる部分もあるけど、突っ込まれながら中田さんは自分の思想そのものを自ら確認し、強固に確立していくかのような本になっていたんだな。そのクライマックスが第五章。

《カリフ制の復興》・・・、単刀直入に言えばそれが中田考さんの主張。・・・ったく、そんなこと言われてもねぇ。

キリスト教社会っていうのは、本来イスラーム教社会同様にユニバーサルな性質のもの。唯一の神の普遍性を根拠にしているわけだから、それは当然のこと。その社会が近代、現代へと向かう中で、例えばフランス革命が掲げた自由・平等・博愛は、その後、キリスト教社会全体が普遍的理念とするところ。

だけど、これ以前のウェストファリア条約で主権国家体制が確立し、さらにヨーロッパはフランス革命をきっかけに国民国家体制を確立していった。主権国家体制で、教皇や皇帝、つまりは神の意思を背景にその地位についた者の影響力を退け、国民国家体制で国民と非国民を明確に区別すれば、最初から自由・平等・博愛がなにがしかの意味を持つと考えるほうが、本来おかしい。

ほぼ時を同じくして西欧キリスト教社会は資本主義的経済体制へ移行し、国民国家は競って安価な労働力と原材料を求めて、・・・自由・平等・博愛の旗印を掲げたままグローバル化を推し進めた。

日本はそのグローバルルールを受け入れて、欧米の力の抗して立ったものの、結局は跳ね返された。現在は欧米の秩序の中に収まっていびつな位置づけではあるが世界に重きをなした。しかし、その間に日本が手放してきたのはあまりにも大きい。

イスラームは、当初、なにも捨てようとはしなかった。捨てないかぎりにおいて、イスラームは主権国家に、国民国家に、資本主義的グローバリズムに負け続けた。その後イスラームは、多くの場合は石油資源の保有を背景にして、捨ててはならないものを捨てることで現代社会に存続した。資本主義的グローバリズムを受け入れてエセ主権国家、エセ国民国家化していった。イスラームらしく生きようとする者たちの期待は裏切られたが、資源の安定的供給を続ける限り、その“国家”は経済的には潤った。

資本主義的グローバリズムは、さらにイスラムの懐に手を突っ込んだ。そのできごとは“アラブの春”と呼ばれた。中東は混乱に包まれた。
太田出版  ¥ 2,160

橋爪大三郎さんなら、中田考さんからイスラームを引き出せる

橋爪さんの共産主義に対する捉え方が面白かった。世界革命を目指した共産主義はユニバーサリズムであったが、それを中途で諦めたスターリンは一国社会主義という形態をとって、ソ連というナショナリズムを出現させた。しかし、周辺の小さなナショナリズム、つまり、カザフスタンであるとか、シベリアであるとか、チェチェンであるとか、自分よりも小さいもののナショナリズムに対しては普遍的な顔を装ってこれを抑圧した。そして東欧共産圏や中国を始めとする国々との間に共産主義陣営を構築した。そこに属するものはいずれも専制国家で、資本主義陣営のそれをよりいびつにしたものでしかなかった。

だから、遅れてきたユニバーサリズムである《カリフ制の再興》は、《カリフ制の再興》が意味するところがキリスト教文明に対抗するためにムスリムが一つの国家を作ることであるならば、それはスターリンの一国社会主義と同じで、大きなナショナリズムでしかない。あるいはそれがイスラム国家連合という形を取るならば、結局共産主義陣営というのと同じで、スターリン主義という敗北への道にほかならない。

そうならないためにはどうするかを考えるのが“私の仕事”と中田さんは言う。前途は厳しいが、十五億のムスリムが《カリフ制復興》に団結すれことを脅威に感じている勢力があるからこそ妨害に入る。分断を図る。

資本主義的グローバリズムはたしかに行き詰まっている。しかし、《カリフ制復興》が危険なものと捕らえられれば、彼らは妨害に入る。その力は強大であるだけに、ナショナリズムを発動するなら元の木阿弥となる。必要なのは、妨害に入る勢力にこそ《カリフ制の復興》が利益に繋がるものであることを見せなければならないし、少なくとも危険ではないことを納得させなければならない。

イスラーム国際法というのがあるそうだ。スィヤルとも呼ばれて、シャリーアの国際法規定を言うらしい。《カリフ制の復興》は世界の一元化を目指すが、出来ない。出来ないという前提があるからイスラーム国際法がある。イスラーム国際法はイスラーム世界だけの論理で、外の世界の人間は守る必要がないという。

だから中田さんの頭のなかにある世界とは、一方にカリフを中心とするイスラームの社会があって、一方には国連のようなものを中心にいくつかのナショナリズムのまとまった社会がある。二つの秩序は競い合いながらも安定した休戦状態にあって、ヒトもモノもその間を自由に動ける。そういう世界だそうだ。

現実的だとも思わないし、実現可能だとも思わない。だけど、行き詰った資本主義的グローバリズムに明るい将来があるとは到底考えられない。・・・もう一つの、・・・第三の軸を、日本から提案するってわけにはいかないもんかな。・・・甘すぎるか。



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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