めんどくせぇことばかり 鎮魂の歌集(覚書)『百人一首の謎を解く』 草野隆

鎮魂の歌集(覚書)『百人一首の謎を解く』 草野隆

撰集の依頼人は、蓮生こと宇都宮頼綱。依頼されたのはすでに歌人として揺るぎない地位にあり蓮生の娘婿でもある藤原定家。依頼内容は嵯峨中院山荘の障子色紙に書き込む和歌の撰集。数は障子の数に合わせて百枚ほど。

本質は和歌。一般には、古今の和歌からとくに優れた秀歌百首を感性豊かに選び抜いたと言われる。しかし、依頼人である蓮生は、もとは鎌倉幕府に使えた御家人宇都宮頼綱。

蝦夷を勝手に敵にまわして討伐した平安貴族は、ふと気がつけば己が怨霊に取り囲まれているように感じられたのか、無責任に治安維持を放棄した。それを代行するこちになったのが武士たちだった。そして平安から鎌倉という時代の変わり目は、源平合戦を軸に多くの騒乱を必要とし、多くの怨霊を発生させた。

貴族と違い、武士がそれに無頓着だったわけじゃない。一所懸命に、必要だったからそうしたに過ぎない。彼らこそ、蓮生こと宇都宮頼綱らこそ、より”鎮魂”を切望していたわけだ。

山荘には阿弥陀堂があり、池を隔てて母屋があった。その母屋の障子に色紙は飾られた。著者は、「苦界に沈んだ今昔の歌人の優れた和歌を飾って《苦の集積》を空間的に再現し、歌人たちを極楽浄土に導くべく祈念し」ようとしたのではないかというが、はたしてそれだけだったろうか。御家人としての彼の前半性を考えれば、ただそこに集められた歌人たちだけではないんじゃないかな。彼は、この時代の移り変わりの中で現世に無念を残したあらゆる魂の鎮魂を目指したんじゃないかな。

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長年、解かれぬままになっていた様々な謎に、明快な解答を
鎌倉幕府も安泰ではなかった。頼朝、頼家、実朝と、幕府の核ともいうべき源氏嫡流は、その役割を終え葬り去られた。周辺では義経に範頼も、幕府を支えた梶原一族、比企一族、畠山一族が滅ぼされ、宇都宮一族も時政失脚に巻き込まれそうになり、これが頼綱の出家のきっかけになる。出家の後も和田一族が滅亡し、源氏嫡流が途絶えた混乱に乗じようと承久の乱が起こる。

常に渦中にあった頼綱。出家して蓮生となり仏の道に生きる彼が、それらの魂に無関心でいられると考えるほうが不自然だ。しかもその蓮生が、和歌の撰集を依頼するとなれば余計である。もともと和歌には、そういう力がある。
柿本人麻呂、大友家持、阿倍仲麻呂、小野篁、在原行平、藤原敏行、陽成院、蝉丸、源融、菅原道真、壬生忠見、藤原実方、藤原道雅、藤原実定、崇徳院、源実朝、天智天皇、猿丸、小野小町、・・・。

だからこの百人一首。私たちは遊べばいい。無心に百人一首で遊ぶことそれだけで、じつは歴史の中で無念を残した者たちの鎮魂を繰り返していることになる。




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訪問ありがとうございました。

百人一首の奥深さ勉強になりました。(_ _)ペコり

morsutohappy さま

コメントありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。

ありがとうございました



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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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