めんどくせぇことばかり 『キリスト教と戦争』 石川明人

『キリスト教と戦争』 石川明人

キリスト教の大きな転機は、やっぱりコンスタンティヌス帝によるミラノ勅令と、テオドシウス帝による国教化だよね。変な話だけど、それ以前のキリスト教は、ローマ帝国の中で、時には迫害を受けながらも、だからこそキリスト教徒であることを貫くことができた。
キリスト教徒がローマの軍団にいたことを示す証拠のもっとも古いものは、一七三年のものだそうだ。危機に貧したマルクス・アウレリウス・アントニウス帝時代のローマ軍の中に、キリスト教徒がいた。そのキリスト教徒の祈りによる雨で軍団は危機を脱し、敵は稲妻によって敗走したという記録があるんだそうだ。
しかしその後、ローマの軍団の中での、キリスト教徒の殉死が問題になっていったようだ。それは、キリスト教徒の兵役の拒否という問題でもある。彼らがローマ軍兵士として戦うよりも殉死を選び、または兵役を拒否して死を選んだ理由は、けっしてキリスト教徒としての愛ゆえに、戦いを由としなかったということではなく、どうやら、「軍隊の誓い」によって神格化された皇帝を崇めることを拒否したらしい。
ところが、ミラノ勅令の翌年、三一四年になると、すでに兵役はキリスト教徒にとって何の違和感もないものになっていたようだ。逆に、キリスト教徒の兵士の脱走は非難の対象になったらしく、教会から破門の罰をくだされたらしい。
いずれにしろ、“愛の教え”は、キリスト教徒にとって、大したことではなかったようだ。

『キリスト教と戦争』    石川明人
中公新書  ¥ 886

アウグスティヌス、十字軍、ルター・・・、キリストの兵士よ 戦え❢
序章  キリスト教徒が抱える葛藤と矛盾
第一章  ローマ・カトリック教会のとく「正当防衛」
第二章  武装するプロテスタントたち
第三章  聖書における「戦争」と「平和」
第四章  初期キリスト教は平和主義だったのか
第五章  戦争・軍事との密接な関係
第六章  日本のキリスト教徒と戦争
終章  愛と宗教戦争


“キリスト教徒は、本質的に戦闘的である”というのは、たしかに、思い返してみれば著者の言うとおりだ。イスラム教もそうだしね。一神教であるということ自体が、戦闘的でなければならない原因になっているのだろう。
キリスト教社会が、信仰を盾に正義を主張し、残虐な振る舞いに及んだ事実を歴史に求めようとすれば、それこそきりがない。本書で具体的に取り上げられているのは十字軍だけだけど、キリスト教と暴力の問題を考えるなら、それだけでも十分ということか。たしかに、それはそうだ。
カタリ派や魔女狩りなどの異端審問、ユダヤ人の弾圧、レコンキスタ、インディオやインディアンの虐殺、奴隷貿易・・・。キリスト教社会の歴史は、いつも神の正義を貫いてきた。神の正義を貫くための戦いが信仰なら、信者の生活は様々な戦いに彩られている。

《信仰は精神的な闘争》
《キリスト教徒にとってこの世は、病気や死、そして悪魔から襲撃されている戦場》
《修道士はキリストに従う兵士》
《兵士が武器を捨て修道士や聖職者になることは、彼が戦死をやめるということではなく、より高いレベルの戦士となることを意味する》
《修道院の禁欲生活は軍務の一形式としてイメージされ、厳格なルールのもとで“共に闘う”ことにおいて、明らかに軍隊との類似性がある》
武器を捨て、暴力を禁止された聖職者においてすら、戦闘的精神は、信仰と全く矛盾することなく生き続けた。だからと言って、キリスト教だけがことさら血なまぐさいというわけでもない。一神教が対立の一因となりうるのは否定できないが、多くの場合、原因は他にある。人の都合で神さまの許可が偽造されるので、悪いの神さまではなく、その許可証を偽造した人間の方だ。
偽造した人間にしてみても、“信仰”にそれだけの価値がなければ、偽造すること自体なんの意味もなくなってしまう。だから、素晴らしい神さまでいてもらわなきゃいけないし、素晴らしい信仰であってもらわなきゃいけない。だから、《キリスト教は愛の宗教です》という看板は、おろすわけにはいかない。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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