『2020年 世界はこうなる』 長谷川慶太郎 田原総一郎
長谷川慶太郎さんが一九二七年生れで、田原総一郎さんが一九三四年生れか。死んだ父や母が昭和三年、一九二八年生れだから、この人たちは、親の世代なんだよね。特に長谷川慶太郎さんの話を読んでると、父を思い出す。共産主義に対してものすごい拒否反応の強い人でね。若い頃の私が左翼運動に走ったのは、その反動でもあった。目が覚めて、自分を取り戻すことができたのも、やっぱり、父や母、家族のおかげだったけどね。
長谷川慶太郎さんも、戦後の貧乏の中で、共産党に籍をおいたこともあるとか。驚いた。しかも、実際に、モスクワでロシア人に接して、共産主義のなんたるかを肌身に感じて離れて言ったとか。本当に、いちいち足を踏ん張った地面からの感触が長谷川さんの思想の背景にあることに納得してしまう。
この本は、田原総一郎さんとの対談もの。テーマは《日本を取り巻く国際情勢の変貌》だったという。対談ものといっても、その筋の専門家としての長谷川さんの格の前に、田原さんは聞き役に徹している。でも、さすが経験豊富なジャーナリストであることは間違いなく、話の引き出し方がうまい。その点においては、田原さんもまた一級品だな。
おかげで、長谷川さんの分かりやすい話が、さらに飲み込みやすく、消化吸収も早められたかのように感じる。


この本が対談ものであることの効果を、もう一か所感じる部分があった。かねてから、長谷川さんの世界情勢に対する把握力には舌をまくばかりであった。決してその秘密をつかんだわけではない。・・・おそらく、情報収集の面において、とても常人にまねのできないような、しかも長谷川さんらしく“地に足のついた”方法をお持ちなのだろう。
そしてその上で、私はこの本の中で、長谷川さんと田原さんでは情報に対する向き合い方にも違いがあると、田原さんと対照することによって、長谷川さんの情報への向き合い方の一端を感じさせてもらった。
そう思わされた“場所”は、あえてここではあげないが、同じ一つの事柄に対して、田原さんはその背景に隠されたものまで感じ取ろうとして、与えられた情報をもとにして推理力を駆使して仮説を構築する。それに対して長谷川さんは、あくまで王道を貫いて、人類社会の経験知をもとに情報を正面から分析し、仮説を実証していく。
そこにはまるで、フランシス・ベーコンのイギリス経験論と、ルネ・デカルトの大陸合理論の違いを目の当たりにさせられているかのようだ。とかく、世間の評論というのは無責任な“推理”に走りやすい。田原さんがそうをだとは言わないが、・・・そうでないとも言わないけどね。長谷川さんのように多くの事実を分析し、人類の経験知にあてはめて結論を導き出すという方法は、世間にあまり多くない。
長谷川さんのように、結論を導き出せるほどの、十分な、そして良質な情報を入手することは、そうそうできることじゃない。そう言うことかな。
この本を読んでいて、一番頭をひねったのは、アメリカについて長谷川さんが述べている部分だった。事実、アメリカ大統領選については、長谷川さんの予測を超えた方向へ事態は進んでいる。ある意味で、もっとも読みにくくなっているのがアメリカということなのかもしれない。もし、長谷川さんがアメリカを読み間違えることがあれば、すべてを間違えることになる。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
長谷川慶太郎さんも、戦後の貧乏の中で、共産党に籍をおいたこともあるとか。驚いた。しかも、実際に、モスクワでロシア人に接して、共産主義のなんたるかを肌身に感じて離れて言ったとか。本当に、いちいち足を踏ん張った地面からの感触が長谷川さんの思想の背景にあることに納得してしまう。
この本は、田原総一郎さんとの対談もの。テーマは《日本を取り巻く国際情勢の変貌》だったという。対談ものといっても、その筋の専門家としての長谷川さんの格の前に、田原さんは聞き役に徹している。でも、さすが経験豊富なジャーナリストであることは間違いなく、話の引き出し方がうまい。その点においては、田原さんもまた一級品だな。
おかげで、長谷川さんの分かりやすい話が、さらに飲み込みやすく、消化吸収も早められたかのように感じる。
SB Creative ¥ 1,620 田原総一朗と長谷川慶太郎が、東京オリンピックを迎える2020年の世界情勢を予測する! |
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この本が対談ものであることの効果を、もう一か所感じる部分があった。かねてから、長谷川さんの世界情勢に対する把握力には舌をまくばかりであった。決してその秘密をつかんだわけではない。・・・おそらく、情報収集の面において、とても常人にまねのできないような、しかも長谷川さんらしく“地に足のついた”方法をお持ちなのだろう。
そしてその上で、私はこの本の中で、長谷川さんと田原さんでは情報に対する向き合い方にも違いがあると、田原さんと対照することによって、長谷川さんの情報への向き合い方の一端を感じさせてもらった。
そう思わされた“場所”は、あえてここではあげないが、同じ一つの事柄に対して、田原さんはその背景に隠されたものまで感じ取ろうとして、与えられた情報をもとにして推理力を駆使して仮説を構築する。それに対して長谷川さんは、あくまで王道を貫いて、人類社会の経験知をもとに情報を正面から分析し、仮説を実証していく。
そこにはまるで、フランシス・ベーコンのイギリス経験論と、ルネ・デカルトの大陸合理論の違いを目の当たりにさせられているかのようだ。とかく、世間の評論というのは無責任な“推理”に走りやすい。田原さんがそうをだとは言わないが、・・・そうでないとも言わないけどね。長谷川さんのように多くの事実を分析し、人類の経験知にあてはめて結論を導き出すという方法は、世間にあまり多くない。
長谷川さんのように、結論を導き出せるほどの、十分な、そして良質な情報を入手することは、そうそうできることじゃない。そう言うことかな。
この本を読んでいて、一番頭をひねったのは、アメリカについて長谷川さんが述べている部分だった。事実、アメリカ大統領選については、長谷川さんの予測を超えた方向へ事態は進んでいる。ある意味で、もっとも読みにくくなっているのがアメリカということなのかもしれない。もし、長谷川さんがアメリカを読み間違えることがあれば、すべてを間違えることになる。


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