めんどくせぇことばかり 『神坐す山の物語』 浅田次郎

『神坐す山の物語』 浅田次郎

学生の頃、三鷹に次兄と一緒に住んでいた。長兄は国立をでて就職していたが、次兄と末っ子の私は下宿して都内私立大学に通った。次兄と私の大学時代は、重なる年が3年も続いたんだから親は苦労したはずだ。・・・その後の自分を考えても、つくづく親不孝だ。

しかも、本当の学問というものに気づいたのは30歳前後の頃。それからは必死にやったけど、いくらなんでも遠回りが過ぎた。その間、親は、どんだけヤキモキしたことか。でも、自分自身もそれなりに苦しんでいた。

大学は外堀の内にあって、三鷹市内にあった下宿から最寄りの武蔵境の駅までいって、なぜかそこから下り電車に乗ってしまうことが、いったいどんだけあったろうか。向かったのは、大概が御嶽山だった。奥多摩の山域は、私の地元の秩父からしてみれば県都境をまたいで山の向こう側という感覚だからね。

最初は気付かなかった。それが、中央線の上り電車に乗るのがどうしてもつらくなって、・・・理由? ・・・まあ、いろいろあるじゃないですか。そん時に、ついつい下りに乗っちゃったんだ。かと言って、そのまま松本目ざす訳にもいかないしさ。・・・知らなかったんだよ。中央線に乗ってったら、行き先は八ヶ岳か北アルプスしか行ったことなかったから。でもそういう訳にもいかないから、立川でおりて青梅線に乗ったんだ。

それからちょっと考えた。そしたらここは、秩父から一山またいだ向こう側だった。山に入っちゃおうかとも考えたけど、なにしろ、大学に行くつもりで下宿をでたから勉強道具しか持ってない。だから御嶽山に行った。


双葉社  ¥ 1,620
奥多摩の御嶽山にある神官屋敷で物語られる、怪談めいた夜語り
神上がりましし伯父
兵隊宿
天狗の嫁

見知らぬ少年
宵宮の客
天井裏の春子

昭和35年の生まれだけど、秩父生まれのせいか、時代が外と10年位ずれてたんだ。今ならそんなことはないんだろうけどね。小学校4年の時に西武鉄道が秩父にまで乗り入れて池袋とつながったけど、それ以前は秩父鉄道で上野に出たんだ。秩父は東北と同じだったんだね。

なぜかなあ。この本を読んで、・・・懐かしくて、懐かしくてたまらなかった。今では絶対お目にかかれない、それでいてかつては嫌ってほど当たり前だったものが、この本の中にあふれているようだった。

私の実家は変なうちで、この家に嫁いできた女は、〈ろくさんさま〉という、“神のようなもの”の巫女になる。在の女たちが、なんかことがあると、〈ろくさんさま〉にすがってうちを訪ねてくるんだ。そうすると、このうちの女が、なんかの方法で〈ろくさんさま〉にお伺いを立てる。

その方法は、このうちに嫁いできた女だけが受け継いできたらしい。私の母は、どうもそれを、兄貴の嫁さんに教えなかったらしいけど・・・。

そんな家だったから、ほんの少し、この本に書いてあることが、ほんの少し、・・・分かる。学生の頃までは、いろいろなものを見たから。

母が兄の嫁さんにその方法を教えなかったのと、おそらく似通った理由で、私は秩父を離れたかった。だから、外での生活がちょっと思い通りにいかなくったって戻るわけにも行かない。御嶽山から北に向かって県都境を越え、有馬山をから鳥首峠、大持山と越えれば武甲山に出る。山頂に登って北の山麓を見れば、山頂からなら私の家が見えるはず。

何度、夢想したろうか。・・・一度も辿ることはなかったけれでも・・・。

なんにも本の紹介にならずに終わってしまいそうだ。ただ、こういう本を読むと、いい年になってから勝手なことを言うようだけど、もう少し早く生まれたかったって思ってしまう。勝手だよねぇ。自分から、引きちぎるようにして、置き去りにしてきたものなのにね。・・・それでも、その真髄みたいなものだけを、こういうふうに目の前に再現されてしまうとね。著者、浅田次郎さんの手品みたいなものなのかな。




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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