鈴木さん(覚書)『名字でわかる日本人の履歴書』 森岡浩
うちのお隣は鈴木さんで、この間、孫が来たときにも、奥さんから苺をたくさんいただいた。鈴木さんの奥さんの仕事でできた畑の生り物はとてもいいって評判で、苺も本当においしかった。孫も、私がヘタをとるのが間に合わないくらいの勢いで、パクパク口に放り込んでた。
仕事で一緒になった鈴木君は、とてもおおらかな人だった。有無を言わさず野球の監督を押しつけられて、目の前を硬球の飛び交うベンチで、スヤスヤと寝息を立てていた。いつ死んでもおかしくない状況だった。

私の人生には、なぜかいつも、どこかしらに鈴木さんの影があった。・・・それもそのはず。鈴木さんは佐藤さんについで多く、つまり1位が佐藤さんで2位が鈴木さん。その数はおよそ41万8463世帯って言うんだからね。しかもそれが、東に片寄ってるってなれば、私の人生が鈴木さんとともにあったのもうなずける。
その点、我が名字は順位ならば1075番、4136世帯。象の前の蟻に同じ。

鈴木さんの分布は三河から遠江に非常に多く、ついで関東に集中している。ルーツは紀伊半島の熊野にあり、熊野を総本山とする修験道の一族が名乗った名字だそうだ。姓は“穂積”。穂積とは刈り取った稲の穂を積んだことに由来する。熊野ではこれを四角いかたちに積み上げ、積み上げた稲穂を「すずき」と言い、鈴木の漢字を当てたんということだ。
熊野信仰を支えた鈴木一族の総本家は和歌山県海南市の藤白神社にあったという。鈴木一族は熊野に参詣に来る人々を導く一方、全国各地に広がって熊野信仰を伝えた。中でも繁栄したのが三河の鈴木一族で、厳しい時代からの松平家に仕えて、家臣団の中で重きをなした。
松平元康が徳川家康となって江戸幕府を開くと、三河以来の譜代家臣団の多くが幕政を支えるために関東に移った。その流れの中で鈴木一族にも旗本や御家人として関東に広がる者が多かった。・・・そういうことのようだ。
そう言えば、この間読んだ浅田次郎さんの『神坐す山の物語』で出たきた話だね。古くから信仰の山として開かれた御嶽山。その信仰を任されたのが三河から移り住んだ鈴木一族だって話が書かれていたような気がする。
家康が東三河の国人から三河を平定し、さらに遠江を支配して浜松に移り、後に江戸に幕府を開いた。鈴木姓分布は家康の出世街道をそのままなぞっている。
著者はこれを、歴史をたどることで名字の分布の理由を知ることつながり、逆に現在の分布から歴史を類推することができる好例として、鈴木氏を取り上げている。

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仕事で一緒になった鈴木君は、とてもおおらかな人だった。有無を言わさず野球の監督を押しつけられて、目の前を硬球の飛び交うベンチで、スヤスヤと寝息を立てていた。いつ死んでもおかしくない状況だった。
小学校、中学校と同窓だった鈴木さんって言う女子は、ボインボインだった。真っ白な体育着になった鈴木さんの胸のふくらみが、とてもまぶしかった。 |
私の人生には、なぜかいつも、どこかしらに鈴木さんの影があった。・・・それもそのはず。鈴木さんは佐藤さんについで多く、つまり1位が佐藤さんで2位が鈴木さん。その数はおよそ41万8463世帯って言うんだからね。しかもそれが、東に片寄ってるってなれば、私の人生が鈴木さんとともにあったのもうなずける。
その点、我が名字は順位ならば1075番、4136世帯。象の前の蟻に同じ。
『名字でわかる日本人の履歴書』 森岡浩 講談社+α新書 ¥ 905なぜ東日本は「佐藤」「鈴木」が、西日本は「田中」「山本」が席巻したのか |
鈴木さんの分布は三河から遠江に非常に多く、ついで関東に集中している。ルーツは紀伊半島の熊野にあり、熊野を総本山とする修験道の一族が名乗った名字だそうだ。姓は“穂積”。穂積とは刈り取った稲の穂を積んだことに由来する。熊野ではこれを四角いかたちに積み上げ、積み上げた稲穂を「すずき」と言い、鈴木の漢字を当てたんということだ。
熊野信仰を支えた鈴木一族の総本家は和歌山県海南市の藤白神社にあったという。鈴木一族は熊野に参詣に来る人々を導く一方、全国各地に広がって熊野信仰を伝えた。中でも繁栄したのが三河の鈴木一族で、厳しい時代からの松平家に仕えて、家臣団の中で重きをなした。
松平元康が徳川家康となって江戸幕府を開くと、三河以来の譜代家臣団の多くが幕政を支えるために関東に移った。その流れの中で鈴木一族にも旗本や御家人として関東に広がる者が多かった。・・・そういうことのようだ。
そう言えば、この間読んだ浅田次郎さんの『神坐す山の物語』で出たきた話だね。古くから信仰の山として開かれた御嶽山。その信仰を任されたのが三河から移り住んだ鈴木一族だって話が書かれていたような気がする。
家康が東三河の国人から三河を平定し、さらに遠江を支配して浜松に移り、後に江戸に幕府を開いた。鈴木姓分布は家康の出世街道をそのままなぞっている。
著者はこれを、歴史をたどることで名字の分布の理由を知ることつながり、逆に現在の分布から歴史を類推することができる好例として、鈴木氏を取り上げている。


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