国柄(覚書)『太平記の時代』 倉山満
1991年、NHKの大河ドラマで『太平記』をやっていた。面白かったのでよく覚えている。主役の足利尊氏を真田広之がやっててね。その『太平記』を倉山少年も見ていたんだそうだ。18歳の時に・・・。 |
執権といえば事実上の総理大臣のはずなんだけど、それとは別に本家惣領の得宗ってのがいて執権も頭が上がらない。まるで竹下派の会長みたい。政府とは違うところで竹下派が政治を牛耳るのは得宗専制政治そのものか。さらに得宗家の執事を務める内管領と呼ばれる仕事があって、これを長崎氏が世襲していた。時の内管領が長崎高資でその父親が長崎円喜。それぞれ、西岡徳間とフランキー堺が演じていた。時の政治にたとえれば、高資は小沢一郎で、円喜は金丸信。内管領って言うのは竹下派事務総長と理解すればいい。 |
『太平記』をやってた1991年当時、私は31歳。『太平記』は興味深く見たけど、それを説きの政治に置き換えて・・・なんて、とても出来やしなかった。《歴史は歴史、政治は政治》。それじゃ、歴史も政治も、なんにも見えてこないのは当たり前だけどね。すでにいい歳してたのに、恥ずかしい。
『太平記の時代』 倉山満 青林堂 ¥ 1,296最強の日本人論 たくましい室町の人々 |
国柄とか人柄とか、そう言うものへの理解があって、はじめて“今”が見えてくる。日本を知ろうと思えば、日本の国柄、日本人の人柄への理解は当然必要。ロシアならロシア、フランスならフランス、それはやっぱり同じ。いろんな本を読んだり、資料にあたったりしても、国柄や人柄への理解があって、はじめてそれが生きてくる。
支配者の暴力なんて絶対許せないけど、長く支配されてきたもののそれなら、やむを得ず許される。しょうがないから許される。まあ、いいだろう。絶対いい。いや、暴力を使わなければいけない。・・・ということでマルクス先生は暴力革命をご推奨。土台が、〈清く正しく〉と自らを信じ込んでいる共産主義の系列に連なるご一統様方。先生の言うことにはなにしろ忠実に“反動勢力”はぶっ殺す。
優等生のレーニン君は、まさにそれを地で行ってロマノフ王朝の皇帝とその一族を皆殺しにして、大きな銅像をいっぱい作られて褒めそやされた。SEALDsのみなさんを見てるとさ。「ああ、世が世なら、私はこいつらにぶっ殺される」って、心の底から思うもの、共産主義者とその眷族の人柄ってやつですね。しっかり理解しときましょうね。世が世なら、殺されてますよ。
公称2600年、最短の説をとっても1300年の歴史を持つ日本。2位のデンマークが公称1000年、3位のイギリスが公称900年と、断トツのトップ。・・・んん?中国?・・・1949年建国だから67年の歴史ですね。・・・あんな国がよく67年も持ってるね。
大化の改新とかで滅ぼされた蘇我氏はどうやら改革派のリーダーで、蘇我氏を倒した中大兄皇子や中臣鎌足の方が反動勢力だった。摂関政治を牛耳って藤原氏が富と権力を独占した。源頼朝の始めた武家による公家政権への革命は、秀吉までの400年をかけて達成された。日本の歴史は変化に富んで面白い。人物もいろいろなやつが登場して本当に面白い。その面白く、長い歴史の中で、一貫して決して変わらないもの。それが、《天皇を中心とした国家である》という事実。それが日本の国柄。
レーニンは皇帝を殺して、帝政そのものを完全に潰してしまったけど、頼朝は天皇を殺していないし、天皇を中心とした公家政権を潰してもいない。潰されないから残る。前の支配者や支配機構が残ったまま、政権が移り変わる。だから、天皇がいて、上皇がいて、関白がいて、治天の君がいて、将軍がいて、執権がいて、得宗がいて、内管領がいる。
ペリー以降のアメリカや諸外国が、「日本は誰と交渉すればいいのかわからない」と悩んだそうだけど、鎌倉時代や室町時代じゃなくて、まだよかったですね。
亀山天皇は南北朝分裂の始まりだし、後醍醐天皇は観応の擾乱の一方の立役者。そんなお騒がせな天皇だけど、そんなおふた方も、「わが身はどうなっても民をお守りください」と神に祈る。二人に限らず天皇ならば、間違いなくそう祈る。亀山天皇は元寇の際、敵国降伏の宸筆を筥崎宮に納めている。
そんな天皇をいただく国家であるという国柄を受け入れる人柄の日本人が住んでいるのが、この日本という国。


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