ダッカテロ(覚書)『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 池内恵
昨日、4月に滋賀県の企業に就職した息子からメールが届いた。・・・私にではなく、母親に。まだまだ研修機関だけど、7月から工場配属になって、会社の主力商品の製造に携わることになったんだそうだ。製造ラインについているのは、ものづくりの現場を骨身にしみこませるという会社の方針だろう。文脈からも、張り切っている様子が感じ取れて、・・・嬉しかった。
息子は技術職で、会社は結構大手だから、時期に東南アジアに行くこともあるんじゃないかと思っている。そのとき、もしも、息子が、こんな事件に巻き込まれるようなことがあったら・・・。
この事件はバングラデシュで起きたものだけど、やっぱり、もとはパレスチナだよね。“刃物で・・・”という情報を聞いて以来、もうニュースは極力避けている。NHKも天気予報が終わったら、チャンネルを回す。
でも、今日は、車の運転中だったので、避けることができなかった。被害者の死因は失血死。やっぱりあいつら、喉を切り裂いたんだ。難を逃れたバングラデシュ人の女性の証言も報じられた。奴らは、レストラン襲撃後30分で、外国人をあらかた殺したらしい。「助けてくれ」と叫ぶ者もいたとか・・・。
ーぴこきょう
・・・殺意を、・・・この抑えがたい殺意を、いったいどうしたらいいんだろう。・・・それにしても、それは誰に対する?私は誰に対して殺意をふつふつとたぎらせているんだろう。バングラデシュ人? イスラム教徒? ・・・違う。
・・・肉親は、近親者たちは、いったいどんな思いで・・・。

本の紹介なのに、実はまだほとんど読んでない。ただ、《サイクス=ピコ協定》なら、多少の知識はある。それにこのニュース。そして、本書冒頭、“はじめに”に出てくる文章。
私は、商売柄、サイクス=ピコ協定を知っていた。でも、もともとが縁遠い中東に関すること。しかも、100年前。それも、第一次世界大戦のどさくさとなると、知らなくて当たり前。
中東と呼ばれる地域は、かつてはオスマン帝国の領土だった。そういう言い方よりも、こっちの方がいいか。オスマン帝国が、この地域全体を仕切っていた。
サイクス=ピコ協定は、第一次世界大戦時に、イギリスが仕掛けた秘密外交の一つ。バルフォア書簡でユダヤ世界をてなづけ、フサイン・マクマホン協定でアラブ世界に夢を見させ、サイクス=ピコ協定で滅びゆくオスマン帝国をむしゃぶりつくした。おいしい思いをしたのはイギリスとフランス、おこぼれに預かったのがロシアとユダヤ人。
オスマン帝国をむさぼったくせに、彼らは誰一人、オスマン帝国が果たしてきた役割の責任をとろうとはしなかった。すぐに民族の問題が噴出した。宗教対立は、あえてユダヤを炊きつけたんだから、どうにもならない。すぐに火の手があがった。
国家の崩壊、武装集団の角逐、少数派の迫害、虐殺と奴隷化・・・、これっていつの問題?
じつは、“サイクス=ピコ協定を礎とした国際秩序の中で、サイクス=ピコ協定を基礎とした中東諸国の国境線の中で”、世界は100年間、上記の問題であえぎ続けてきた。
それでも、ついこの間まで、多くの日本人にとって、これは遠い世界の問題だった。後藤さんと湯川さんは、あっちに行って殺されたけど、今度はバングラデシュだ。バングラデシュは、遠い彼方じゃない。
被害者の家族を思えば堪らない。・・・まだ殺意がおさまらない。・・・とりあえずこの本を読んでみよう。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
息子は技術職で、会社は結構大手だから、時期に東南アジアに行くこともあるんじゃないかと思っている。そのとき、もしも、息子が、こんな事件に巻き込まれるようなことがあったら・・・。
時事ドットコムニュース 2017/07/05 「何に憤りぶつければ」=遺族ら無念の帰国-ダッカテロ事件 http://www.jiji.com/jc/article?k=2016070500338&g=soc (抜粋) バングラデシュの首都ダッカで起きた飲食店襲撃テロ事件で犠牲となった7人が日本に到着した5日午前、遺体とともに無念の帰国をした遺族らは、一様に沈痛な表情で自宅に戻った。途上国の発展に情熱を注いでいた7人。遺族は「なぜ事件に。何に憤りをぶつけていいのか」と、やりきれぬ思いをあらわにした。 |
でも、今日は、車の運転中だったので、避けることができなかった。被害者の死因は失血死。やっぱりあいつら、喉を切り裂いたんだ。難を逃れたバングラデシュ人の女性の証言も報じられた。奴らは、レストラン襲撃後30分で、外国人をあらかた殺したらしい。「助けてくれ」と叫ぶ者もいたとか・・・。
ーぴこきょう
・・・殺意を、・・・この抑えがたい殺意を、いったいどうしたらいいんだろう。・・・それにしても、それは誰に対する?私は誰に対して殺意をふつふつとたぎらせているんだろう。バングラデシュ人? イスラム教徒? ・・・違う。
・・・肉親は、近親者たちは、いったいどんな思いで・・・。
新潮社 ¥ 1,080 この止めどない混乱は、一世紀前の秘密協定に運命づけられたのか? |
本の紹介なのに、実はまだほとんど読んでない。ただ、《サイクス=ピコ協定》なら、多少の知識はある。それにこのニュース。そして、本書冒頭、“はじめに”に出てくる文章。
サイクス=ピコ協定は、第一次世界大戦(一九一四-一九一八)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治がおこなわれ、国民社会が形成され、国際関係がとり結ばれた。 本書p14 |
私は、商売柄、サイクス=ピコ協定を知っていた。でも、もともとが縁遠い中東に関すること。しかも、100年前。それも、第一次世界大戦のどさくさとなると、知らなくて当たり前。
中東と呼ばれる地域は、かつてはオスマン帝国の領土だった。そういう言い方よりも、こっちの方がいいか。オスマン帝国が、この地域全体を仕切っていた。
サイクス=ピコ協定は、第一次世界大戦時に、イギリスが仕掛けた秘密外交の一つ。バルフォア書簡でユダヤ世界をてなづけ、フサイン・マクマホン協定でアラブ世界に夢を見させ、サイクス=ピコ協定で滅びゆくオスマン帝国をむしゃぶりつくした。おいしい思いをしたのはイギリスとフランス、おこぼれに預かったのがロシアとユダヤ人。
オスマン帝国をむさぼったくせに、彼らは誰一人、オスマン帝国が果たしてきた役割の責任をとろうとはしなかった。すぐに民族の問題が噴出した。宗教対立は、あえてユダヤを炊きつけたんだから、どうにもならない。すぐに火の手があがった。
国家の崩壊、武装集団の角逐、少数派の迫害、虐殺と奴隷化・・・、これっていつの問題?
じつは、“サイクス=ピコ協定を礎とした国際秩序の中で、サイクス=ピコ協定を基礎とした中東諸国の国境線の中で”、世界は100年間、上記の問題であえぎ続けてきた。
それでも、ついこの間まで、多くの日本人にとって、これは遠い世界の問題だった。後藤さんと湯川さんは、あっちに行って殺されたけど、今度はバングラデシュだ。バングラデシュは、遠い彼方じゃない。
被害者の家族を思えば堪らない。・・・まだ殺意がおさまらない。・・・とりあえずこの本を読んでみよう。


時事ドットコムニュース 2017/07/05
「何に憤りぶつければ」=遺族ら無念の帰国-ダッカテロ事件
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016070500338&g=soc
(全文)
バングラデシュの首都ダッカで起きた飲食店襲撃テロ事件で犠牲となった7人が日本に到着した5日午前、遺体とともに無念の帰国をした遺族らは、一様に沈痛な表情で自宅に戻った。途上国の発展に情熱を注いでいた7人。遺族は「なぜ事件に。何に憤りをぶつけていいのか」と、やりきれぬ思いをあらわにした。
「アルメックVPI」社員の下平瑠衣さん(27)の両親らは午前11時ごろ、埼玉県富士見市の自宅に到着。サングラスやマスク姿で表情はうかがえなかったが、足取りは重く、付き添いの警察官とともに家に入った。
両親はその後「大切な娘との突然の別れがまだ信じられない」などとしたコメントを発表。「志を持って尽力してきた娘に誇りを持っている。娘も無念でならないと思う」「なぜこのような事件に巻き込まれたのか、何に対して憤りをぶつけていいのか分からない」と悲痛な思いをつづり、「今は娘を静かに送り出すことに専念したい」と結んだ。 (2016/07/05-12:17)
「何に憤りぶつければ」=遺族ら無念の帰国-ダッカテロ事件
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016070500338&g=soc
(全文)
バングラデシュの首都ダッカで起きた飲食店襲撃テロ事件で犠牲となった7人が日本に到着した5日午前、遺体とともに無念の帰国をした遺族らは、一様に沈痛な表情で自宅に戻った。途上国の発展に情熱を注いでいた7人。遺族は「なぜ事件に。何に憤りをぶつけていいのか」と、やりきれぬ思いをあらわにした。
「アルメックVPI」社員の下平瑠衣さん(27)の両親らは午前11時ごろ、埼玉県富士見市の自宅に到着。サングラスやマスク姿で表情はうかがえなかったが、足取りは重く、付き添いの警察官とともに家に入った。
両親はその後「大切な娘との突然の別れがまだ信じられない」などとしたコメントを発表。「志を持って尽力してきた娘に誇りを持っている。娘も無念でならないと思う」「なぜこのような事件に巻き込まれたのか、何に対して憤りをぶつけていいのか分からない」と悲痛な思いをつづり、「今は娘を静かに送り出すことに専念したい」と結んだ。 (2016/07/05-12:17)
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