『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 池内恵
YOMIURI ONLINE 2016/07/19 「死刑導入ならEU加盟不可」…トルコに独首相 http://www.yomiuri.co.jp/world/20160719-OYT1T50040.html?from=tw (抜粋) メルケル独首相は18日、トルコが死刑制度を導入するなら、欧州連合(EU)に加盟することはできないとの見解を、トルコのエルドアン大統領に電話で伝えた。 |
ヨーロッパがそんなに輝いていると、まだメルケルは思ってるわけだね。多少ハードルを上げても、ドイツはヨーロッパの魅力に抗しきれず、しっぽを振ってくる。確かにエルドアンが強権を震えるのは経済が好調だからで、それを盤石にするためにEU加盟をめざしている。だけど、どんなもんかな、トルコはイスラムだし、トルコ人はどこから見たってアジア。〈死刑制度導入〉云々は、逆に加盟の可能性を匂わせているけど、白人がアジア人につく嘘は、嘘のうちに入ってないからね。気をつけようね。・・・エルドアン。
新潮社 ¥ 1,080 この止めどない混乱は、一世紀前の秘密協定に運命づけられたのか? |

赤がトルコ。緑がアラブ。水色がギリシャ。黄色がアルメニア。焦げ茶がクルド。・・・完全にモザイク国家なんだな、トルコって国は・・・。
いやいや、まだまだ、トルコに民族問題が本格化してるってわけでもないんだけど、確かに一連の、イスラム国に関する動きの中で、アメリカの意向に沿った役割を与えられたことで、クルド人の存在感はかなり大きくなってきている。トルコにとっての主敵は、いまやイスラム国なんかではなくって、クルド。まあ、端から、トルコはイスラム国を問題視しているようにも感じられなかったけどさ。
この領域に関して言えば、オスマン帝国の崩壊によってギリシャ、アルメニア、クルドが内から放棄し、同時に近隣諸国、または大国に支援を求めた。この段階で、サイクス・ピコ協定は、その役割を果たすことができなかった。近隣諸国や大国は、大小の影響力伸長を見込んで介入、または関与した。その結果として、極端に細分化された諸民族の領土・自治領域が提案された。これがセーブル条約であった。
自分たちの居住区が分割されることを目前に、ナショナリズムを高めたトルコ人が、これに異を唱えた。彼らは実力によって、近隣諸国の侵入を阻止し、支配下の諸民族の放棄を自力で鎮圧した。そのようにして、トルコ人が自らの支配を大国に認めさせたのがローザンヌ条約である。
イラク、シリアの混乱から、イスラム国の登場を経て、クルドがその存在感を高めている。前述2カ国にトルコを合わせれば、その数3000万人といわれるクルド。民族的高揚感は、すでにトルコ国内のクルドをも飲み込んだ。
かつて、オスマン帝国の衰弱でもたらされた混乱は、オスマン帝国のエリート層がトルコ共和国という地域大国として登場し、分離独立を望む少数民族の希望を押し流した。少数民族は、トルコ国民として同化するか、流出した。
これが解決のための一つの形である。多くのものが命を落とし、土地を奪われ、流浪した。ある種の民族浄化が行われたわけである。
この本における、その辺のまとめ方は、結構かっこいい。
手を汚していない勢力はどこにもなく、欺瞞を含まない立場はない。どの根拠と枠組みにによる解決策も、それによってすむ土地を追われ、命を落とす人々を多く生み出した。しかし、これら以外に、解決策を考えて実行できる主体はなかった。これらの失敗した解決案が含む愚かさは、当時の人類の英知を注ぎ込んだ結果、なおも曝け出さざるを得なかった失敗なのである。 本書p46 |


YOMIURI ONLINE 2016/07/19
「死刑導入ならEU加盟不可」…トルコに独首相
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160719-OYT1T50040.html?from=tw
(全文)
【ベルリン=井口馨、ブリュッセル=横堀裕也】ロイター通信によると、メルケル独首相は18日、トルコが死刑制度を導入するなら、欧州連合(EU)に加盟することはできないとの見解を、トルコのエルドアン大統領に電話で伝えた。
「死刑導入ならEU加盟不可」…トルコに独首相
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160719-OYT1T50040.html?from=tw
(全文)
【ベルリン=井口馨、ブリュッセル=横堀裕也】ロイター通信によると、メルケル独首相は18日、トルコが死刑制度を導入するなら、欧州連合(EU)に加盟することはできないとの見解を、トルコのエルドアン大統領に電話で伝えた。
同国のユルドゥルム首相は18日、死刑制度の復活について「国民の要望を無視はできない」と語り、検討する方針を示した。エルドアン氏も同日放映の米CNNのインタビューで「国会が(憲法改正の)法案を可決すれば、大統領として署名する」と述べた。クーデター未遂事件を起こした反乱勢力の粛清が念頭にあるとみられる。
これに対しメルケル氏は、死刑制度の復活とEU加盟は「両立しない」との考えを伝えた。ケリー米国務長官も18日、EU28か国の外相らとブリュッセルで会談後、記者会見し、「(クーデター未遂事件の)犯人を裁くことは支持するが、行き過ぎた手法は慎むべきだ」と強調した。
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