めんどくせぇことばかり 『辞世 108選』 長生馬齢

『辞世 108選』 長生馬齢

どうするかな~。この歳まで来ると、いつ来ても文句をいう筋合いはさらさらないし、昨日今日じゃあないとしても、そんなに遠い先のはずもない。一日、一日、丸儲けと思って生きられりゃ、それに越したことはないけど、ちょっと山も行きたいしなあ。中途半端だけど、あと十三年、丸儲けが続くといいなあ。

《ついに行く 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思わざりしを》って在原業平は言うけど、どんなもんだろうか。おそらくその次に、「とは言っても仕方がない。それじゃあ、行くか」って気持ちが続いていったんじゃないかな。

《風さそう はなよりもなお われはまた 春の名残を いかにとやせん》って読んで腹を切ったのは浅野内匠頭長矩。・・・ちょっといただけないよね。だいたいが、原因は自分の軽はずみな行動。突飛な行動をとりがちな血筋でもあったようだけど、いずれにせよ、人に責任のある話じゃあない。ならいっそ、《煙とともに はいさようなら》って十返舎一九みたいにあっさり行ってくれりゃあいいものを、よりにもよって、《春の名残をいかにとやせん》っていうんだからね。「恨みを晴らしてね」って、そりゃあないだろう。

《あら楽し 思いははるる 身は捨つる 浮世の月に かかる雲なし》って大石内蔵助が詠んだのも、主君の馬鹿さ加減を補ってやらなきゃならない必要を、強く感じていたからじゃあないだろうか。

《いまはただ 恨みもあらず 諸人の 命に代わる わが身と思えば》って詠んだ別所長治の姿が本当だよね。《うきよをば 今こそ渡れ 武士の 名を高松の 苔に残して》っ詠んで家臣を救った清水宗治も同様。

『辞世 108選』    長生馬齢
愛育社  ¥ 1,404

この世をばどりゃお暇と線香の煙とともにはいさようなら
人の一生は重荷をおうて遠き道を行くが如し
急ぐべからず 不自由を常とおもえば 不足なし
心に望みおこらば困窮したる時を思い出すべし
堪忍は無事長久の基 怒りは敵と思え
勝つことばかり知り負くる事を知らざれば 害その身に至る
己を責めて人を責むるな
及ばざるは過ぎたるに優れり

言わずと知れた、徳川家康の言葉。これは辞世の句っていうんじゃなくて、いわゆる“遺訓”。それにしても、とことん深いね。家康のことは嫌いな人も多い。まあ、好きか嫌いかってことなら、私も嫌い。でも、すごいことは間違いない。

日本は本当の意味で、世の中の転覆というものを経験してはいない。“国”という体制を整えていこうは、常に《天皇の治める国》という体制に変化はない。その体制のもとで、権力の地位が平家から源家に移り変わっても、それは平家と源家の間でのこと。鎌倉幕府が滅ぼされても、状況を見極めた奴は生き残ってる。徳川家康の江戸開幕にしても、明治維新にしても、世の安定のために新たな支配者は過酷ではあったが、チャイナあたりの族滅というのとわけが違う。

明治維新?薩長のどこに大義があるか。なかでも大久保利通は、世の回天をともにした者たちも、新時代の構想を別にすれば容赦なく葬り去った。竹馬の友、維新最大の立役者、西郷隆盛さえ・・・。とは言え、いずれも族滅されたわけではない。会津戦争も大きな悲劇ではあったが、ちっとも滅びてない。薩長閥とは言うものの、どっちかって言えば、大久保なきあとは長州に奪われている。かつては賊軍に属した者も、結局は同じ“日本人”になっちゃってる。

思い起こせば頼朝もそうだった。鎌倉の政権を安定させるためには、対抗勢力を次々と滅ぼし去った。にも関わらず、結局は脇が甘くて源家の支配を維持できなかった。よりによって平氏の血筋の北条に権力を奪われたりしている。

家康が天下を握るにあたっては豊家を容赦しなかった。関わったものも同様。時にはだまし討ちのような手まで使った。家康の嫌われるところだけど、政権を安定させようとおもえば当然のこと。だけど、江戸時代になっても、なんだか戦国や、信長の時代、秀吉の時代の、なにがしかが生きている。

しかも、その果てに残した“遺訓”のなかで、その人生の苦しさを吐露している。《及ばざるは、過ぎたるに優れリ》ってね。
なんか、《辞世》から離れちゃったみたいに思われちゃうかな。そうじゃなくて、あくまで《辞世》について語ってるんだ、私は・・・。ちょっといい方が下手くそなだけでね。

私の言いたいのは、自分の死んだあとも、「同じ言葉を話して、同じようなものを食って、同じようなことを考えている奴が、またここで同じような人生を送っていくだろう」って、そういう気持ちが前提にあって、《辞世》が読まれているように思うんだよね。それは、日本人のどっか詰めの甘い部分、曖昧な部分につながっていくようにも思う。死ねるのよ。この日本が残るのであれば・・・。

私? 《親もなし 妻なし 子なし 版木なし 金もなけれど 死にたくもなし》って詠んだ林子平に近いかな。子は巣立ったし、妻は、・・・ねえ。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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