めんどくせぇことばかり 蘇我氏滅亡(覚書)『敗者列伝』 伊東潤

蘇我氏滅亡(覚書)『敗者列伝』 伊東潤

『敗者列伝』のトップを飾るのが蘇我入鹿。・・・たしかに、蘇我入鹿の敗北は大きい。おそらく世の中が変わった。しかし、何がどう変わったのか。じつは、そのへんがよくわからない。一様、分かったことになっているので、「分かった」気になれば、それでなんにも問題はないんだけれど、どうもそんな気になれない。

たとえば、入鹿は東アジア激動の中で、バランス感覚のいい外交を展開している。バランスを崩して国を失いかけたのは、入鹿を倒した勢力の方で、入鹿ではない。

わずかにさかのぼれば、聖徳太子という巨大な存在があり、これまたあまりにも不思議にあふれている。聖徳太子は推古天皇の摂政として実力者馬子の力を背景に政治を遂行している。冠位十二階、遣隋使、十七条憲法などがあげられる。いずれもその方向性は“改革”である。蘇我氏は改革に対する抵抗勢力として抹殺されていく。聖徳太子、推古、馬子の三位一体みたいな存在感は、いったい何を意味するのか。

入鹿による山背大兄王暗殺。そして聖徳太子とその血筋は、斑鳩という閉鎖的な空間で、綺麗さっぱり族滅。あとにはなんにも残らないなんて、一体なに?もとから厩戸なんて怪しい名前は“聖徳”という名前が先に想像されたんじゃないかと、取ってつけた感がいっぱい。

蘇我入鹿は、たしかに『敗者列伝』の端を切るのにふさわしい。敗者としての存在感が、あまりにも大きすぎる。それを著者はどう料理しているかと言うと、・・・。
天賦の才に恵まれ、馬子の時代の権力を取り戻そうとした入鹿は、馬子に倣いすぎたのだ。現代でも創業社長や躍進の担い手となった社長の方針を唯々諾々と受け継ぐことで、時代の変化についていけなくなってしまう企業は多々あるが、まさに入鹿は、この病に取り憑かれていたといえる。天皇制が確立することで組織が肥大化し、利害関係者が増えれば、独裁が極めて難しくなるのは当然である。特に武力というものが確立されていないこの時代に、独裁は極めて難しい。

結果論ではなく、入鹿は馬子ではなく蝦夷に習うべきだった。反対派の官位を上げたり、婚姻によって姻戚関係を結んだりして、懐柔しておく必要があったのだ。

どのような成功を収めようとも、政治家たるもの、常に念頭に置かねばならないのは用心深さである。その点では、父蝦夷の方が政治家に向いていたのかもしれない。

本来であれば、鎌足の子孫の藤原氏のように、その血脈を末永く伝えることともできたはずの蘇我氏だが、入鹿の強硬路線が裏目に出て、歴史の闇に消えていった。今日では、蘇我氏の栄華の象徴として、馬子の墓と伝えられる石舞台古墳が飛鳥の地に残るだけである。
本書p22
歴史から何かを学び取ろうという姿勢は、とても大切なものである。だけど、歴史っていうのは、意図も簡単に捻じ曲げられる。状況次第では、「尖閣は固有の領土」というチャイナの卑怯な言い分がまかり通りかねないくらいなんだからさ。歴史から学び取るという姿勢は、真摯に歴史に向かい合う姿勢があってこそ尊いものになりうる。

この時代、大陸に兄弟な統一政権が生まれた。周辺諸勢力は、新たな外交政策を必要とし、模索された。そのためには国家体制を根本から変革することも必要となった。東アジアは、すでに大きな動乱の渦に巻き込まれつつあった。
そんな中で起こった大和朝廷における政治の主催者が暗殺されるという事件である。そういう捉え方が足りない気がするな。
『敗者列伝』    伊東潤
実業之日本社  ¥ 1,728

歴史の闇に葬られた男たちの棺を、今こじ開ける❢
その辺りに関して、少し前に書いたものね。全部じゃないんだけど・・・。

 斉明(皇極)天皇が古代史の鍵を握る一人。・・・そうなんだ。・・・ダメだな。そう言われてもピンとこなかった。
斉明(皇極)天皇は舒明天皇に嫁ぐ前、蘇我系の高向王と結ばれ、漢王を生んでいた。皇位継承権のない「蘇我の漢王」を「蘇我系の天皇候補・漢皇子」に化けさせるために、天皇に担ぎあげられた。

その斉明(皇極)天皇の目の前で、中大兄皇子は蘇我入鹿を殺している。蘇我系の漢皇子が天皇になれば、もはや自分に出番はない。そんな立場の中大兄皇子に中臣鎌足がクーデタを囁いたのではないか。中臣鎌足は蘇我氏の進める律令制導入に対する反改革勢力の情報を持って中大兄皇子に近づいたことだろう。

著者は以前から、この中臣鎌足こそ百済王子豊璋だろうという意見を表明している。大陸に強大な力を備えた統一王朝が誕生し、それにともなって挑戦の状況が流動化している以上、蘇我氏の採用した全方位型の外交はまったく正解である。鎌足の正体が、もしも著者の言うとおり百済王子豊璋であるとすれば、中大兄皇子・中臣鎌足の共闘と、白村江の戦いで日本を滅亡の淵に立たせる無謀な政策にも理屈が通る。

もう一つ、興奮させられたのは、クーデタ後、歴史から姿を消した漢王子こそが大海人皇子ではないかというのだ。白村江の敗戦で政権の維持さえ危うくなった中大兄は、蘇我系の大海人を皇太弟に指名することで政権を持続させた。その後、危険を予知して吉野に隠棲した大海人は、中大兄の死後、大友を壬申の乱で倒し、いよいよ皇親体制を確立して親蘇我派悲願の改革に邁進していく。

新潮文庫  ¥ 529

気鋭の歴史作家が埋もれた歴史の真相を鮮やかに解き明かす。文庫オリジナル
天武崩御ののち、天武の御子ではなく持統が即位する。ライバル大津を粛清して即位させようとした草壁が早逝してしまったとはいえ、六八六年に天武が崩御したのち、持統が即位するのは六九〇年。無難に即位したわけではない。

即位した持統は鎌足の子、不比等を大抜擢する。天智・鎌足の関係が、持統・不比等に置き換えられた。『天武の遺志を継承する』ことが即位の前提だったろうが、この時点で親蘇我派政権は反蘇我派政権に置き換えられた。

親蘇我派と天武天皇の進めてきた中央集権システムへの改革は、律令制の体裁を取りつつも、藤原氏に権力と富が集中されるだけのシステムに書き換えられた。


これからなにが学べるんだろうね。・・・なにが学べるかを考える以前に、日本の歴史って、強烈に面白いよね



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はじめまして。

殊、歴史に関しては日本の記録が貧弱過ぎ、、
史学者を悩ます要因になっていると思います。

中国古代の犬の研究をしているすずe-415ママと申します。

私は曹植の詩が好きなのですが、
中大兄と大海の額田を巡って・・とされる歌も
深読みができるような気がしてきました。

「尖閣が中国の領土」であるのならば、
ヨーロッパの大半はトルコの領土になるんでしょうねe-450


すず❤ママ さま

曹植って文才があったんですね。「曹丕との後継争いに敗れた才能豊かな弟」って言う認識止まりでした。
そう言えば「あかねさす・・・」の歌。家持だからこそ、この歌が後世に伝えられたんでしょうね。敗れ去ったものへの鎮魂歌として・・・
どうぞ、今後とも宜しく

ありがとうございました



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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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