名前(覚書)『火山列島の思想』『なるほど世界地理』『世界の名前』
ちなみに、大穴持と呼ばれる神の本性は“穴”。そこに沸々と煮えたぎるマグマの神。このあと、結局、ヤマトは出雲の神々を受け入れるじゃあないですか。つまり、祭られる神は変わらず、祭る存在だけが入れ替わったんですね。建御雷が大国主に国譲りを要求したとき、大国主はなぜか、その是非を子どもたちに託すんだよね。まず、事代主はすんなり国譲りを受け入れて、自分は十水してしまう。もう一人の建御名方は、受け入れを拒否して建御雷と戦い、敗れて諏訪まで逃げて、諏訪大社に収まるんだよね。
それから、建御名方って言うのも変な名前で、「建き御名の方」だって。「すごい名前の人」って意味。これはすごい。匿名希望の人なんですね。なぜかって、名前言ったら、みんな分かっちゃうからでしょ。誰だろ、『古事記』のお話が作られた頃の、「名前言ったら分かっちゃうくらい有名人で匿名にしとかないとちょっとまずい人」って。

国の名前も面白い。アーリア人をインド・ヨーロッパ語族と同意にとらえれば、その影響はとてつもなく広がるけど、中でも、「アーリア人の国」を表立って表明している国がある。アーリアはサンスクリット語で「高貴」を意味するアリアナから生まれたものらしいんだけどね。そこから、《aryana→ariana→Irani→Iran》と変わって、イランなんだって。イランは「アーリア人の国」って意味なんだって。
ギリシャの月の女神セレネが前世代で、アルテミスが新世代だよね。ラテン語圏に入ってルナ、ディアナ。ディアナはダイアナって名で、今でも使われている。水泳でオリンピックに出た日本人選手にも、“月”と書いて、“ルナ”ちゃんがいたよね。そう言えば、昔どっかの校長で、“攻”と書いて“まもる”と読むという人がいたとか、いないとか。・・・いないな、そんな奴。
月は、まだある。英語の“ムーン”そのものじゃ難しいかも知れないけど、北欧なら“モーネ”に変わる。そんな不確かなものじゃなくても、確実に歴史に名を残しているのが、インド。「月に守られし者」で、“チャンドラグプタ”となる。ペルシャ帝国を打ち倒しパンジャーブ地方に侵入したアレクサンドロスに刺激されて統一王朝を築き上げたわけだから、もしかしたら、アレクサンドロスを太陽に見立てでもしたのかな。
そして、三代アショーカ王の時、インド亜大陸をほぼ統一する。そんな比類稀な軍事的成功を治めたアショーカ王だが、王になる時点ですべての兄弟を殺しており、その後も反乱の鎮圧や粛清に多くの血を流した。ようやく体制を固めたのちに行われたのがカリンガ戦争で、その死者は10万とも、その数倍ともいわれる。
アショーカ王は、その軍事的成功にともなう悲劇に恐れを抱き、仏教に救いを求める。アショーカ王が仏教を深く信仰したことは数多くの証拠から明らかであり、実際カリンガ戦争以後拡張政策は終焉を迎えた。
《ショーカ》とは“苦しみ”を意味し、《アショーカ》は“苦しみのない者”を言う。つまり、アショーカ王って、とても宗教的な名前なんだな。彼が王位につくために兄弟たちを死に至らしめていた頃、またカリンガ征服戦争に駆り立てられていた頃、彼は、アショーカ王とは呼ばれてなかったんだろう。なにしろ、そこ頃の彼は餓鬼道をさまよっていたんだろうからね。

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名前っていうのは、やはりこだわるべきだな。しっかりと意味が示されている。たとえば、事代主。事代は神事の代行者。あるいは、“シロ”を依り代の“シロ”として、神事の依り代。それを神格化したのが事代主。つまり、神格化されているものの、事代主は祭られる側ではなく、祭る側のトップ。大国主や、その尊称で呼ばれる大穴持ではなく、その神を祭る人間集団のリーダーが“国譲り”を受け入れたんだね。 |
国の名前も面白い。アーリア人をインド・ヨーロッパ語族と同意にとらえれば、その影響はとてつもなく広がるけど、中でも、「アーリア人の国」を表立って表明している国がある。アーリアはサンスクリット語で「高貴」を意味するアリアナから生まれたものらしいんだけどね。そこから、《aryana→ariana→Irani→Iran》と変わって、イランなんだって。イランは「アーリア人の国」って意味なんだって。
『世界の名前』 岩波書店 辞典編集部 岩波新書 ¥ 864世界の地域、言語、神話、物語について、名前の仕組みや込められた意味を・・・ |
ギリシャの月の女神セレネが前世代で、アルテミスが新世代だよね。ラテン語圏に入ってルナ、ディアナ。ディアナはダイアナって名で、今でも使われている。水泳でオリンピックに出た日本人選手にも、“月”と書いて、“ルナ”ちゃんがいたよね。そう言えば、昔どっかの校長で、“攻”と書いて“まもる”と読むという人がいたとか、いないとか。・・・いないな、そんな奴。
月は、まだある。英語の“ムーン”そのものじゃ難しいかも知れないけど、北欧なら“モーネ”に変わる。そんな不確かなものじゃなくても、確実に歴史に名を残しているのが、インド。「月に守られし者」で、“チャンドラグプタ”となる。ペルシャ帝国を打ち倒しパンジャーブ地方に侵入したアレクサンドロスに刺激されて統一王朝を築き上げたわけだから、もしかしたら、アレクサンドロスを太陽に見立てでもしたのかな。
そして、三代アショーカ王の時、インド亜大陸をほぼ統一する。そんな比類稀な軍事的成功を治めたアショーカ王だが、王になる時点ですべての兄弟を殺しており、その後も反乱の鎮圧や粛清に多くの血を流した。ようやく体制を固めたのちに行われたのがカリンガ戦争で、その死者は10万とも、その数倍ともいわれる。
アショーカ王は、その軍事的成功にともなう悲劇に恐れを抱き、仏教に救いを求める。アショーカ王が仏教を深く信仰したことは数多くの証拠から明らかであり、実際カリンガ戦争以後拡張政策は終焉を迎えた。
《ショーカ》とは“苦しみ”を意味し、《アショーカ》は“苦しみのない者”を言う。つまり、アショーカ王って、とても宗教的な名前なんだな。彼が王位につくために兄弟たちを死に至らしめていた頃、またカリンガ征服戦争に駆り立てられていた頃、彼は、アショーカ王とは呼ばれてなかったんだろう。なにしろ、そこ頃の彼は餓鬼道をさまよっていたんだろうからね。


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