めんどくせぇことばかり 『呼ぶ山 夢枕獏 山岳短編集』

『呼ぶ山 夢枕獏 山岳短編集』

 紅葉しただけダケカンバの森を、湿った落ち葉を踏みしめながら登る。踏みしめる登山靴の下で、ダケカンバの落ち葉が潰れ、その下の腐食土から、歳へた山の土の匂いが空気に溶ける。
 そういう匂いや、樹肌の匂いや、草の匂い、時折道端に落ちている山牛の糞の匂いー様々な匂いまでが、登るにつれて変化してゆく。
 時折は、後方から小夜子の汗の匂いや、髪の匂いまでが漂って来たりした。
 森を抜け、ぼくらは、谷の道を歩いた。ダケカンバの谷だ。
 黄金色に染まったダケカンバの葉が、風に舞いあげられ、幾千、幾万もの群れとなって、蒼い虚空に吸い込まれるように、谷の上空の光の中を天に向かって登ってゆくのを見た。
 その遥か向こうに、ヒマラヤの白い峰が見えている。
 ぼくらは、無言で足を止め、その光景をいつまでも眺めていたりした。
 ぼくらがキャンプを設営したのは、正面にアンナプルナの岩峰が見える、紅葉したダケカンバに囲まれた谷であった。
 谷の中心に、氷河から溶け出した川が流れていた。
 冷たい水であった。
 手を、二十秒と差し込んでいられない。
 風もまた冷たくなっていた。
 ぼくらはザックの中からセーターを出してそれを着た。高い崖の下にある大きなダケカンバの根元にテントを張り終えたときには、眼の前のアンナプルナの白い岩峰が、赤く染まっていた。
 もう、とっくにこの谷には差し込まなくなった陽光が、まだ、成層圏に近い山の頂には、差しているのである。
 黄金の色を含んだ、深い色をした赤だ。
 ヒンズーの神々にささげられた、なにかの灯りのように、谷がすっかり暗くなってからも、天の一角には白い岩峰にだけは、いつまでもその赤い色が消えずに点っていた。
 ぼくらのかわす言葉は、さらに少なくなっていた。
 「歓喜月の孔雀舞」より
パールの山麓を、主人公が、その想うひとと歩く場面。ネパールに行ったことがあるわけじゃありません。だけど、この本の中で、この場面が一番私の心にしっくりきたんです。かつて、木々、岩、土、枯れ葉、沢とその音、青空、風、自分を包むありとあらゆるものから祝福されている感覚とともに歩いた山が、・・・幾度かあった。

読んでいて、それに近い感覚を思い出した。

・・・山の本を、もっと読みたい。

角川文庫  ¥ 720

ただの山の話、プラス“ひと味” それはファンタジィ、あるいは幻想

手術を受けることになりました。11月25日に入院します。ちょっと前なら考えられないんですが、今は2週間くらいの入院で済むそうです。ですから、少なくても、その間、ブログはお休みすることになります。

本来は、3年周期の仕事の区切りになる来年2月の手術を考えていたんだけど、医者から早い手術を勧められてました。なんとかなると思ってたんだけど、もうどうにもならないって、思い知らされました。気持ちが下向いちゃって、ミスの連発だし、「これじゃだめだ」って、活を入れようとすると痛みが走る。午後になって疲れてくると、それだけでジンジン痛くなって座薬に頼ってしまう。

“歩き”さえしていないから、ものすごい体力が落ちてて、1時間の立ち仕事くらいでどっと疲れる。・・・ときどき、びっこを引いて職場の廊下を歩いている自分の姿が頭をよぎる。

山に登りたい。・・・山に逃げられちゃ、山も迷惑か。

ってなことでね。足を直して出直します。そのときは、またよろしくお願いします。・・・あれ、・・・まだお休みじゃないからね。24日までは、このまま続けるから、お立ち寄りくださいね。




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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