『日米衝突の根源 1858-1908』 渡辺惣樹
この本をブログで紹介するのは3度目だな。もとは、2011年に出された本。だけどこの視点は、まだまだ断然、新鮮。今年はちょうど、アメリカ大統領選挙の年でもあるしね。日米関係に関しては、この間、倉山満さんの本を紹介した。アメリカ史って大事ね。アメリカ史のなかにこそ、あの戦争の原因を探る糸口がある。・・・とりあえず、ちょっと読んでみてくださいな。


一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
ホーマー・リーという人物が、『無知の勇気』という本を書いているという。その中で彼は、ポーツマス条約の締結時点で日米の衝突を予言していたという。 この本の中では、すでに衝突を既定の事実として時代の状況を分析している。 彼が衝突を既定の事実と結論づけた背景をあげてみる。 一つは、極東にアメリカ自身が目覚めさせた日本という国が、相応の力を持って立ち上がったということ。 特に日露戦の後は、日本が非支配民族の期待を集めたという事実も重なる。 もう一つは、アメリカは必ずそこへ行くと、著者のホーマー・リーが確信しているということだ。 これはホーマー・リーが、セオドア・ルーズベルトと同じ目で世界を見ていた、あるいはルーズベルトと同じ目がアメリカを動かしていることを彼が理解していたことを示している。 そしてそこに立ちはだかるものがいれば、衝突となる。 難しい分析ではない。しかしそれは、アメリカから見れば“難しくない”のであって、日本から見てそれを予測するのは、そう簡単なことではない。やってくる主体は、あくまでアメリカであるのだから。
だからこそ、この『日米衝突の根源 1858-1908』という本には意味がある。 もともとアメリカを見なければ、日米戦争を理解することなどできるはずはないのだから。 しかも、単なるアメリカ史ではない。 ここには、アメリカが、どう日本との戦争に向かっていったかが書かれている。 国内産業を保護して国力の増強を目ざすアメリカン・システムとその綻び。独立後も続くイギリスとの確執。成長と共に必然的にもたらされる国内の人種問題。南北戦争。ハワイ併合。米西戦争とフィリピン領有。日経移民排斥。 高校の世界史では、そうは教えないけど、南北戦争の前と後では、アメリカ合衆国というのは違う国家になっている。もともと独立した時は、そこには十三の独立国家ができると認識していた人も多い。特に自立できる力を持った植民地はそうだった。自立できない植民地が連邦を望んだんだ。南北戦争というのは北部が勝ったからそういうのであって、南部にしてみればこれは国際戦争。アメリカ連合国は敗戦国として、・・・何だかこのあたり、日本が重なる・・・北の奴らに蹂躙された。 ついつい熱くなってしまった。・・・なにはともあれ、統一国家としてのアメリカ合衆国が登場したわけだね。統一されたアメリカは、アメリカ連合国のからの利益に励まされて工業化を進める。資源にも恵まれて、早くも一八九〇年代にはイギリスの工業力を上回る。折から太平洋の反対側には、もうひとつの統一国家が生まれていた。それが日本。欧米列強の圧力に危機感を持って近代化を進めた日本は清朝を敗り、さらにはロシアをも退ける。いずれも自存自衛のための戦いだった。 しかし、太平洋をフロンティアの草刈り場と定め、支那への進出を目したアメリカには、・・・。日本はアメリカの国家戦略にとって最大の障害と映った。 この視点から日米戦争に迫る本書の登場は、それ自体大きな価値がある。 それだけでなく、面白い。 読んで面白い。私自身は、日米戦理解の歴史を変える一冊になると思っている。 |


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