めんどくせぇことばかり 『日本人の肖像』 葉室麟

『日本人の肖像』 葉室麟

色々な意味合いで、読んでおいてよかったと思ってます。第一部では、たとえ歴史上の人物を一人だけ取り上げたとしても、その人物への思いの寄せ方は、時代によってさまざまであるし、人によってもさまざまであるということ。第二部では、《大坂の陣》、《唐入り》等に関して、これまで知らなかった視点を教えてもらうこともあった。

《国家と宗教》という項目でも、日本のようなキリスト教徒が多数を占める国以外で憲法に基づく議会制が運営されたことの意義を強調しているが、たしかにそのとおりだと思う。しかも実際には、明治政府は、国レベルの宗教を国民に示していない。欧化政策が進められるなか、キリスト教化の流れとそれに反発する流れがあって、結局、明治政府はなにも決めなかった。

上記のような見方には、けっこう感銘を受けてしまった。ただ、葉室産というより、対談者の意見だけどね。私なんかの感覚では、明治維新から一気にキリスト教的国家宗教の構築としての国家神道ってところまで飛んでしまいがちだった。紆余曲折があって、大日本帝国憲法の制定や、打ち続く対外戦争と言った流れっていうのをしっかり踏まえるべきですね。
『日本人の肖像』    葉室麟
講談社  ¥ 1,296

毎日新聞連載 「ニッポンの肖像 葉室麟のロマン史談」

この本のことについて、もう一度ブログで紹介しておきたいって思ったのは、上記のような内容についてではないんです。最初から、端々に、最近の政治状況に関する葉室さんのお考えが滲むところが感じられたんだけど、最後の項目である《日本人と憲法》、さらには《日本人とは何か》と副題のつけられた“あとがき”に、それがはっきりと表明されている。気持ちの上で、素通りするわけにも行かず、やはりそのことに触れておきたいと思った。
忘れていけないのは、戦後七十年間、私たち日本人が現憲法を保持してきたという事実です。つまり、九条があるから戦争をしなかったのではなくて、九条を立てにして戦争をしなかったのです。根底にあるのは、戦争をしたくないという切なる思いです。閣僚の靖国神社参拝が問題として取り上げられるのも、日本人にとって戦争の記憶がいまだに生々しいことの現れの一つではないかと思う。
本書P203
「七十年間戦争をしなかった」云々というのは、朝鮮戦争間近に来日し、再軍備を説いた米国務省のダレスに対し、吉田首相が九条を盾に拒否したことが念頭にあってのことかな。でも、ダレスは「そんな憲法変えちまえ」って言ってたわけで、吉田首相は当時の日本と、日本人の置かれた状況を諄々と説いて、ダレスを納得させたんじゃなかったっけ。

それに、「戦争をしなかった」っていうのは、“日本から攻めて行かなかった”っていうことだけを意味するわけじゃないのに、問題にされているのはそれだけ。

なかには、ベトナム戦争に参戦した韓国みたいになるとかって人を脅す人がいるけど、韓国と日本じゃ全然状況が違うし、あのときの韓国はアメリカのお金が喉から手が出るほどに欲しかったのであって、無理やり参戦させられたわけじゃない。

これが語られるのは、二部第六章の《日本人と憲法》と題された葉室さんの対談で、相手は東大出の憲法学者の南野森さんという方。

『九条は敗戦の状況のなかで一~八条を守るために差し出された証文みたいなもの。天皇制が存続できるなら、我々は武器を持たない』と、葉室さんは書いている。だから、日本が再軍備するってことは天皇制を危機に晒す。つまり、革命が起こる。・・・これって、羽仁五郎が書いてなかったっけ。高校の頃に読んだ記憶がある。

あの戦争の本質が、短絡的なアメリカが、あとから書いた筋書きのとおりだと、・・・かりにそう仮定した場合、その場合に限定して、もしかしたらその可能性も生まれるかもね。・・・さらに続く。

九条ってだけじゃなくて、憲法全体が天皇を人質にしたようなところがあったわけだ。実際、葉室さんも、その対談者もそれを認めている。南野さんは以下のような言い方をする。『私も、憲法は押し付けられたものかもしれないが、それがどうしたの、今頃なにを言ってるの、という立場です』・・・言葉を失います。

葉室さんは良心的で真面目な方なんだと思います。若い頃に左翼活動に染まる人って、そういう人が多いですよね。東大での憲法学の先生。私、この人、質が悪いと思う。良心的で真面目な人を、刺激的な言葉で、変に焚き付けてる。良くないと思うな。

そういう話に触れられたのも、良かった。この本は、読んでおいてよかったと思ってる。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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