めんどくせぇことばかり 『神々の山嶺 下』 夢枕獏

『神々の山嶺 下』 夢枕獏

27日、左股関節をチタン製の人工物に取り換える手術を受けた。午後の1時15分に手術室に入って麻酔、・・・。次の瞬間手術は終わってた。なぜか時計が目に入って、それが4時だった。大きな声をかけられて術着を着せられ、術後の処置を施されて集中治療室へ。口の中に食いしばったときに噛んでしまった傷がある。一瞬で終わった手術のはずなのに、食いしばった記憶だけがわずかにある。

頭を左右に動かしてみる。ようやく見えるべきものが見えてくる。苦しくて、つらい時間が続く。看護婦が声をかけてくれる。連れ合いが付き添ってくれている。左下半身に大きな痛みの塊みたいのが覆いかぶさっていて、重くて動かない。つらい。こんな手術受けるんじゃなかった。

9時になった。看護婦が身体を起こしてくれる。麻酔科の許可が出たとかで、水が飲める。・・・生還❢
オーバーな物言いでしたね。大変な思いをしている人はいくらでもいるだろうにね。手術に向かう直前までに上巻を読んで、手術が終わった翌日から、痛がりながら下巻を読んだ。

正直、上巻で終わっていても不思議はなかった。それでもいいんじゃないかと思ってた。でも、下巻を読み始めるなり、その思いは消し飛んだ。


集英社文庫  ¥ 864

 なぜ人は山に登るのか? 永遠の問に応える畢生の大作!

エベレスト南西壁単独無酸素登頂。

下巻、その後半の大半は、羽生と深町の、その挑戦に費やされる。とは言っても、読者が辿るのは、上記の羽生の挑戦を見届けようとする深町の困難な足跡である。

深町は、羽生に追いすがって7600mの高度に達する。そこで、ブリザードの中、岩壁に苦戦する深町をさらに落石が襲う。その岩壁で深町は、羽生とザイルを繋いで死んだ岸との間に起こった真実を知ることになる。深町は、そこで降りた。降りて南西壁を正面から捉えられる場所にカメラを構えた。そこで、ファインダーは捉えた。エベレスト南西壁でも最悪の危険地帯、誰も挑戦したことすらない、そこを避けたとしても誰からも攻められることなどありえない、そこまでの危険地帯、南西壁頂上直下ウォール。羽生はそこにいた。ありのような速度で上に向かい、それでもあと250mまで達した。その時、南西壁にガスが巻いた。羽生は、見えなくなった。

2年後、エベレスト山頂を単独無酸素で目指す深町の姿があった。深町はそこで、ヒマラヤのジャイアンツにかけた男たちの物語に終わりはないことを思い知ることになる。
著者は、「ど真ん中の話を書いてしまう」と、自分のことをいう。そのど真ん中が、まさに下巻にあった。どれだけの読者が、南西壁7600mの氷壁でブリザードに吹きさらされた極限状況の中、自らの死に直面しかけたことだろう。

自分が一流とみなされないことに我慢がならないという種類の人達が、この世の中にはいる。この物語は、そういったことのみにくさ、、むなしさを書いている。だけどそれ以上に訴えるのは、ただひたすらに、誰もたどり着いたことのない高みを目指すことの純粋さ。

もしもその人が、そこにしか魂の昇華を求め得ない人であるならば、そこへ至るすべての営みは、純粋な行いとしか言えないものとなる。それが、どれだけの人を犠牲にし、傷つけるものであろうが、それはまた別次元の問題である。
金さえ出せば、五大陸最高峰なんて楽に登れる時代になった。羨ましいぞ、このやろう。でも、そんなことしたって人の心は動かないし、おそらく自分の心も動かない。

人の心はともかく、自分の心が動いている。新しいウォーキングシューズを買って、私は無様に歩いている。リハビリです。もう一度、山に登る。




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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