めんどくせぇことばかり 『日本人が教えたい新しい世界史』 宮脇淳子

『日本人が教えたい新しい世界史』 宮脇淳子

ギリシャ語の「ヒストール」は「知っている」という形容詞。動詞にすると「ヒストレオー」で「調べて知る」。名詞は「ヒストリア」で「調べて分かったこと・調査研究」。その複数形が「ヒストリアイ」。これが英語の「ヒストリー」、仏語の「イストワール」の語源。

そうかあ。ヘロドトスが、「ヒストリアイ」を書くことで、歴史という概念が始まる。歴史の記述の始まりが、ヘロドトスが前5世紀に書いた『ヒストリアイ』にあるとするならば、それは、ヨーロッパがアジアから仕掛けられた戦争に勝利し、アジアを撃退したという“ものがたり”から始まっているということになるのか。

・・・なんか、・・・癪に触る。

だいたい、ヘロドトスの頃は、ボスフォラス・ダーダネルス海峡を挟んでギリシャがヨーロッパで、ペルシャがアジアって程度の認識でしょ。この本によれば、ルネサンス以降、自分たちをギリシャの後継者たるヨーロッパに属することを認識していったとか。もうすでに、古代ギリシャは遠い昔で、文化レベルでそれを引き継ぐものの存在は、すでにありえない。

後に、世界を刈り取り場とした西欧文明の中から、“世界史”というのが生まれてくるが、民主制のギリシャが専制のペルシャを制するという物語は、そんままヨーロッパがアジアを制する近代の物語に置き換えられていく。

かたや、日本の周辺では、シナが歴史を残した。司馬遷は、武帝の支配の正当性を訴えるという強烈な意思を持って、それを書いた。宮脇さんの言葉を借りれば、《すべては天が決める》という物語を作り出したわけだ。皇帝の徳が衰えてくると世のかなが混乱し、天はそれまでの王朝に見切りをつけて、天下を治めるにふさわしい次の王朝を選び出す。《天命が革まる》ということですね。

もとが、そんな後付の理由だから、それこそ“後”の連中も利用しやすい。まさにそれが、シナの歴史として定着した。こんな“歴史観”を持つ連中と関わり合うと、碌なことがない。日本は今、それを身をもって実感している。


徳間書店  ¥ 1,080

歴史に「善悪二元論」を持ち込んではならない
第1章 「歴史と何か」という大問題
第2章 歴史のある文明と歴史のない文明
第3章 世界で初めて歴史をつくったヘロドトス
第4章 キリスト教文明が地中海文明に加わった
第5章 中国は日本人が作った
第6章 『史記』に呪縛された中華圏の歴史観
第7章 日本文明はいかにして成立したか
第8章 『日本書紀』の歴史とは何か
第9章 国民国家が世界史を変えた
第10章 マルクスに騙され続けている世界史
第11章 日本の歴史教育の大問題
第12章 日本人がつくる世界史

宮脇さんが、「持ち込んではならない」という《善悪二元論》。でも、まさに意思を持って歴史が書かれる時、その意志とは、自らの“善”を主張するほどに強く働く。かつて、西洋は、日本がいかに努力してなにがしかを成し遂げようとも、けっしてそれを正当に評価しようとはしなかった。白人のキリスト教徒が、無知蒙昧な有色人種を強化するという強力な意志が、そこには厳然としてあった。

そういうことを考えると、シナの華夷思想もおんなじですね。『史記』を書いた司馬遷以来、歴史は時の権力者の、支配の正統性を主張するために書かれてきた。

日本は、西洋と関わっても、シナと関わっても、そういうことだから、碌なことはない。
さて、この本の説明をする前に、触れておかなければならないことがある。著者の宮脇さんのご主人、岡田英弘さんの書いた論説を集めた『岡田英弘著作集』。いや~、それぞれがけっこうお金のかかる本だったんだけど、ようやく今年の6月に第8巻が出て終わりました。

その第1巻のタイトルが『歴史とは何か』。非常に読みでのある本で、1ページ1ページ、大事に読みました。それは第1巻に限ったことじゃあ、ありません。岡田さんの本を仕入れる時は、それに合わせて他の本はしばらく積んでおくことになるから、読み終わったら、今度は、あとが大変。

そこで、・・・ということなんですね、この本は。宮脇さんが、岡田史学の提唱するところの、「歴史とは何か」ということをわかりやすく解説する本を、・・・ということで、う・で・ま・く・り、という本です。

さらにそこから一歩進んで、“日本人が教えたい”ってのは、いくらなんでもちょっと面映いけど、「国民国家の枠を超えることができる日本人だけが新しい世界を作れる」というお考えのようです。

キリスト教世界にもイスラム教世界にも、歴史的には利害関係を持たず、それでいて理解が深い。相手の善意を信じ、物事を公平に見ることができる。《だから日本人には、自らが関与していない世界中のできごとに関して、因果関係をはっきりさせて物語る資格がある》と、言っておられる。

《世界の心ある人々がそれを受け入れてくれることになる》というのは、少し人が良すぎる気もするけど、志はよしといたしましょう。



にほんブログ村 政治ブログへ 一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
関連記事

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

ありがとうございました



「《めんどくせぇことばかり》は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」
よくお越し下さいました

イーグルス16

Author:イーグルス16

息も絶え絶えです、ぜひ応援してください
人気ブログランキングへ にほんブログ村 政治ブログへ

「歴史修正主義」とは、戦前の日独をことさら評価する史観ではない。
米英両国の外交に過ちはなかったのか。
あったとすればそれは何だったのか。
それを真摯に探ろうとする歴史観だ。
英米独露の外交と内政を徹底検証し、二つの世界大戦が、実は「必要」も「理由」もない戦争だったことを明かす。
これから出る本




































当ブログ内人気図書 
















































カウンター
カテゴリ
ブロとも一覧
アジシオ次郎の時事原論
はりこのはやしや 
ハシビロコウ
素足のアイドル達
うさぎ屋の四方山話
わくわく株式投資
プロモデラー林哲平のジャンクロボット創作ブログ『ケルバーダイン』
大好き!グラビアアイドル!
伊織のブログ
Re:BAD TASTE♥
QWERT 5w1h
「伝わる技術」オトデザイナーズ・坂本真一
歌と知恵でハッピーライフ^^
こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
最新記事
応援して下さい