めんどくせぇことばかり 『また、桜の国で』 須賀しのぶ

『また、桜の国で』 須賀しのぶ

昨年、中国共産党の元幹部で、2008年に日本に帰化した“李真実”さんの書いた『残虐の大地』という本を読んだ。そのあとがきに、1941年に1人のポーランド人青年が強制収容所から逃げ出して、収容所内で行われていることを訴えたという話が出てくる。この本の中では、ヤン・フリードマンがアウシュビッツから脱出しているが、本当にあった話がもとになってるみたいだな。

主人公棚倉慎が、外務書記生として勤務することになる在ポーランド日本大使館に着任するところから物語が始まる。折からヨーロッパは、ミュンヘン会談によって、チェコスロバキアの頭越しにズデーテン問題が解決され、欧州大戦の暗雲が吹き飛ばされたところだった。その半年後、ドイツはダンツィヒの割譲をポーランドに要求し、結局これが引き金となって、1939年9月1日に第2次世界大戦が始まる。まさに「前門の虎、後門の狼」と言った状態でドイツとソ連に蹂躙され、ワルシャワにおけるゲットーの暴発。さらにはレジスタンスによるワルシャワ蜂起と続いていくが、この物語は、概ねそこまでを語っていく。

主人公の棚倉慎は、白系ロシア人の父と日本人の母の間に生まれる。彼が子供の頃、在シベリア ポーランド人孤児の悲劇があった。欧州諸国が目を背ける状況に、日本が援助の手を差し伸べた。700名を超えるポーランド人孤児が、日本で保護を受け、健康を取り戻して祖国へ帰国していった。そのうちの1人と、棚倉慎は奇妙な関係を結んだ。彼の名はカミル・ヴォジニャック。孤児を乗せた船がポーランドへ向かう途上、アメリカに寄港した際に、アメリカ人に養子として引き取られ、レイモンド・パーカーとなった。

もう一人、ユダヤ人として生きるためにポーランド人としてドイツと戦うことを決めたヤン・フリートマン。3人は、自ら帰属意識と他人からの決めつけの間で自我を形成した点において共通している。物語は、そんな3人を極言の状況に追い込む。そんななかで、3人は、ある約束をする。その約束こそ、・・・『また、桜の国で・・・』

『また、桜の国で』    須賀しのぶ
祥伝社  ¥ 1,998

ショパンの名曲『革命のエチュード』が日本とポーランドをつなぐ! それは遠き国の友との約束
第一章  平原の国へ
第二章  柳と桜
第三章  開戦
第四章  抵抗者
第五章  灰の壁
第六章  バルカン・ルート
第七章  革命のエチュード

《20世紀の初め、孤児が日本政府によって救われました。シベリアにいたポーランドの子供は、さまざまな劣悪な条件にありました。その恐ろしいところから日本に連れて行き、その後、祖国に送り届けてくれました。親切にしてくれたことを忘れません。……(合唱団は)私たちの感謝に満ちた思いを運んでくれるでしょう。日本のみなさん、ありがとう》

平成11年8月に、ポーランドから「ジェチ・プオツク少年少女舞踊合唱団」が来日した。上記は、合唱団が携えてきたヘンリク・サドスキさん(88)からのメッセージで、ヘンリクさんは、日本に救われた孤児の一人だった。・・・本当にそんなことがあったんだな。

物語の中でも、同じ境遇のポーランド人が作った極東青年会が取り上げられ、イエジ・ストシャウコフスキという会長が登場する。リーダーシップに優れた人物として描かれるが、ちょうどその印象が、若き日のワレサに重なった。

何万という人々が、ソ連によって非道に殺され、カチンの森に埋められていく。ゲットーの高い壁のなかで、骨と皮だけになった人々が蜂起し、ゲットーの暴発では、いったいどれだけの人々が、まんまと殺されることに成功したことか。ワルシャワ蜂起では、レジスタンスと市民を合わせて22万人が殺されたという。収容所のおぞましさも語られている。

盛りだくさんの物語だった。歴史観の再構築というのはない。だから、今まで通りの、変な言い方だけど、“予定調和”のなかで物語が進行していく。私にとっては、読むほどに沈鬱に向かっていく道程である。でも、前から言ってるけど、この時代の日本人が語られる事自体が大歓迎なのだ。

ポーランドにとっては、さらにおぞましい日々への入り口の物語でもあるわけだ。そんな中、物語は、“枢軸対連合”という二極対立で書かれているわけではない。自国の利益のために弱小国を切り捨てることに躊躇しない大国のえげつなさも描かれている。それにしては日本に対して容赦ない。少しは、極東の小国家の事情も斟酌してもらいたいもんなんだけどね。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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