『諭吉に訊け❢』 奥野宣之
すごい人物だよね。
適塾で苦労して蘭学を治め、オランダ語もペラペラになったわけでしょう。それがある日、横浜に出向いてみると、居留地にあふれる外国語を一切理解することができない。なにしろそこでは、共通の言語として英語が使われいるわけですから。当時、最初から蘭学を学ぶ人間なんていないわけで、諭吉も当然論語から入っているわけ。それが漢学も蘭学も通じない世界が、目の前に広がっている。
ショックだな。普通ならね。もちろん、福沢諭吉だってショックだったはず。でも、福沢諭吉はショックを受けたってへこまない。なすべきことが見えているから、漢学ではどうにもならないから蘭学、蘭学がどうにもならないなら、英語ができるようになればいい。それだけ。どうすればできるようになるかは、ただの方法の問題。大したもんだよね。さすがは一万円だよね。
福沢諭吉に訊ねたいこと? そりゃいっぱいあるよ。適塾でのこと。あの頃の幕府のこと。会津のこと。明治政府における薩長の連中のこと。朝鮮のこと。金玉均のこと。・・・
じつは、そういう本だと思ったんですよ。そういう本だと思って、買ったの。そしたら、違いました。


『学問のすゝめ』は明治5年から9年にかけて、シリーズ全17編が刊行され、初編20万部、シリーズ累計70万部を超える大ベストセラー。その『学問のすゝめ』を、著者の奥野宣之さんは、現代の若者たちにも読んで欲しいと、ちょっと前に『現代語訳・学問のすゝめ』という本を出したのだそうです。だけど、読んでくれた人の多くは40代以上の人たちで、若者への浸透度に疑問があった。そこで、20代、30代の人にも読んでもらうために、“とっつきやすさ”最優先で書いたのがこの本ということです。
『学問のすゝめ』は、冒頭の「天は人の上に人を作らず人の下に人を作らずといえり」をしっかり覚えて、国語のテストで点数取って、「はい、おしまい」という人が結構多い。私の周りの若い連中は、そこまでが精いっぱいで、『学問のすゝめ』を読んだという奴は、この10年で一人もいない。
「天は・・・」だけを読んだ奴は、この本を“平等”を訴えた本であるかと誤解したまま一生を終える。「生まれたときは平等なのに、世の中に貧富や地位の差がある。それは学問をしたか、しなかったかの差だ」と続き、学ぶことの意義を訴える。そしてさらに、前半の「国家論」から、・・・
この本は、後半の「生き方論」が重視されている。若い人向けの“とっつきやすさ”最優先ということならやむを得ない。でも、欧米列強の包囲された中で“独立”を維持していくという、当時の“日本人の気概”は残念ながら希薄になっている。次は、そこを狙った本を出してほしいな。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
適塾で苦労して蘭学を治め、オランダ語もペラペラになったわけでしょう。それがある日、横浜に出向いてみると、居留地にあふれる外国語を一切理解することができない。なにしろそこでは、共通の言語として英語が使われいるわけですから。当時、最初から蘭学を学ぶ人間なんていないわけで、諭吉も当然論語から入っているわけ。それが漢学も蘭学も通じない世界が、目の前に広がっている。
ショックだな。普通ならね。もちろん、福沢諭吉だってショックだったはず。でも、福沢諭吉はショックを受けたってへこまない。なすべきことが見えているから、漢学ではどうにもならないから蘭学、蘭学がどうにもならないなら、英語ができるようになればいい。それだけ。どうすればできるようになるかは、ただの方法の問題。大したもんだよね。さすがは一万円だよね。
福沢諭吉に訊ねたいこと? そりゃいっぱいあるよ。適塾でのこと。あの頃の幕府のこと。会津のこと。明治政府における薩長の連中のこと。朝鮮のこと。金玉均のこと。・・・
じつは、そういう本だと思ったんですよ。そういう本だと思って、買ったの。そしたら、違いました。
『諭吉に訊け❢』 奥野宣之 光文社 ¥ 1,404 現代人のモヤモヤした悩みを晴らす『学問のすゝめ』 |
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『学問のすゝめ』は明治5年から9年にかけて、シリーズ全17編が刊行され、初編20万部、シリーズ累計70万部を超える大ベストセラー。その『学問のすゝめ』を、著者の奥野宣之さんは、現代の若者たちにも読んで欲しいと、ちょっと前に『現代語訳・学問のすゝめ』という本を出したのだそうです。だけど、読んでくれた人の多くは40代以上の人たちで、若者への浸透度に疑問があった。そこで、20代、30代の人にも読んでもらうために、“とっつきやすさ”最優先で書いたのがこの本ということです。
『学問のすゝめ』は、冒頭の「天は人の上に人を作らず人の下に人を作らずといえり」をしっかり覚えて、国語のテストで点数取って、「はい、おしまい」という人が結構多い。私の周りの若い連中は、そこまでが精いっぱいで、『学問のすゝめ』を読んだという奴は、この10年で一人もいない。
「天は・・・」だけを読んだ奴は、この本を“平等”を訴えた本であるかと誤解したまま一生を終える。「生まれたときは平等なのに、世の中に貧富や地位の差がある。それは学問をしたか、しなかったかの差だ」と続き、学ぶことの意義を訴える。そしてさらに、前半の「国家論」から、・・・
- 職業人としての成長のヒント
- いつか大きな仕事をするために必要な準備
- 組織で人望を集めるために大切なこと
- 腐らず毎日を楽しく生きるための心得
この本は、後半の「生き方論」が重視されている。若い人向けの“とっつきやすさ”最優先ということならやむを得ない。でも、欧米列強の包囲された中で“独立”を維持していくという、当時の“日本人の気概”は残念ながら希薄になっている。次は、そこを狙った本を出してほしいな。


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