めんどくせぇことばかり 『恐怖の地政学』 T・マーシャル

『恐怖の地政学』 T・マーシャル

そうだよあ~。たしかにここのところ、世の中の流れをつかむのが難しくなってるよね。冷戦時代の”ニ超大国の力の均衡”にすべてが傾斜していく時代が終わり、世界の警察官を称したアメリカの力が低下して世界は相対的にしか理解できなくなった。チャイナの台頭は問題を世界中に拡散し、イスラム教徒はグルーバル化という液体の中では浮かび上がるしかなかった。

地政学や、世界史が注目されるのは、それが原因だろう。分かりにくくなってしまった世界をなんとか理解するために、地政学やら世界史やらの手助けを借りようと。

それも変な話で、地政学も世界史も、これまでだって、何も特別な学問じゃない。手を伸ばせばそこにあった。でも、今までは、手を伸ばすまでもなかった。ところが、今は、そうはいかなくなった。無関係にすら思えたイスラム原理主義は、日本にとっても直接の脅威になりつつある。アフリカに進出しようとした日本企業は、あちこちでチャイナの壁にぶつかる。グローバル化に乗り遅れるなと小学校から英語教育が始まるかと思えば、世界中で反グローバル化の声が高まっている。

日本では、ようやくにして第二次世界大戦に関する、歴史の再確認の動きが加速している。これは、地政学や世界史の手を借りてしっかりと今の世界をとらえていこうとする流れと無関係ではない。当たり前のことで、今の世界を理解しようとすれば、当然、“嘘の壁”にぶつかるのだから。だけど、その“嘘の壁”も結構分厚くて、しかも、それを必要としている国々に、日本は包囲されている。


『恐怖の地政学』    T・マーシャル

さくら舎 ¥ 1,944

地図と地形でわかる戦争・紛争の構図 物理的環境に突き動かされる世界 
第一章 中国 自然の巨大要塞と十四億の巨大不安
第二章 ロシア 果てしない大地と凍り続ける港
第三章 日本と朝鮮半島 侵略されたことのない国と虚勢を張る弱虫
第四章 アメリカ 地形によって運命づけられた史上最強の国
第五章 西ヨーロッパ 位置と地形に恵まれた楽園を脅かすほころび
第六章 アフリカ 天然資源と人為的国境線に苦しめられてきた人類の生誕地
第七章 中東 引かれたばかりの脆い国境線と血にまみれた道のり
第八章 インドとパキスタン 三千キロに及ぶ国境線と永遠に続く敵意
第九章 ラテンアメリカ 北アメリカと対照的な地形の不運
第十章 北極圏 新たな戦場となるか、強欲に打ち勝てるのか

《地形が定めるルール》というものがあり、それに逆らって人は生きてはいけない。気候も、その一部である。いくら敵地でも、雨季を迎える場所を越えて攻め込もうとするバカはいない。いくら敵よりも兵を鍛え上げても、冬将軍に立ち向かえば撃退される。

地形は人にも影響を与える。シナ人と、朝鮮人と、日本人の性質は、大陸的気質、半島的気質、島国的気質に、それぞれ別れる。

本書では、第一章で《中国》、第三章で《日本と朝鮮半島》に触れている。著者はイギリス人ジャーナリスト。私たちがヨーロッパを正確に理解するのが結構難しいように、ヨーロッパ人が東アジアを理解するのは難しいことだろう。

まず、著者は、シナと朝鮮の間の冊封関係を理解していない。かつての朝鮮王朝のいわゆる“鎖国”を、「そういう事情で朝鮮はしばらくのあいだ外界との関わりを断ち、多くの交易関係も切り捨てて、放っておかれることを願った」と言っているが、その間にも、清の属国として女まで貢物としていた、・・・というか、女くらいしか貢物にするものがないような状況になっていた。

さらに、日本との関わりにおいては、「日本は一九一〇年に朝鮮を併合すると、文化の破壊に取り掛かった。朝鮮語も歴史教育も禁じ、神道崇拝を強制した。弾圧の歳月は遺恨となり、現在の日本と南北朝鮮との関係にも影響を与えている」と書いている。

イギリス人というのは、ひどい健忘症なんだろうか。自分のしたことを忘れたか。

日本が行ったのが“文化の破壊”なら、イギリスが世界で行ったのは、まさしく“悪魔の所業”にほかならず、その罪悪感に、イギリス人は呼吸をするのもはばかられるような状況になるんじゃないのか。

そうだった。現在は日本を包囲する状況に名はないとは言え、イギリスも分厚い“嘘の壁”を必要とする国の一つだった。

アフリカや、北極海までを、地政学的見地から把握しようという視点はなかったので、その点は勉強になった。その他の地域においても、参考にさせてもらいたいことが多々あった。だけど、東アジアにおける特有の歴史的視点っていうのが“ない”ので、著者の地政学の知見は、歴史を抜きにしたものになっている。雰囲気的に、ウィンストン・チャーチルのアジア蔑視というか、アジア無視の立場に近いものを感じる。

最後にこんな文句を書かなければならないのは残念だけど、読みがいのある内容であるのは本当です。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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