ロシア・ヨーロッパ(覚書)『大転換:長谷川慶太郎の大局を読む 緊急版』
あの、年末の、日露首脳会談の話。北方領土に関して、レベルの差こそあれ、何らかの言及がなされると、多くの日本人が期待していた。「・・・4島」、「いや、2島」。多くの日本人が、期待を裏切られた。日本側からの3000億円規模の経済協力プランが提示されただけで、北方領土返還に関する言及は引き出せなかった。
本書にもあるが、プーチン訪日の3か月前、9月にウラジオストクで行われた首脳会談では、北方領土問題について「解決しなければならないことでは一致している」というプーチンの言質もあり、期待が高まっていただけに、正直残念な結果だった。
《長谷川慶太郎さんが、このことに関してどう考えているか》、それがこの本に対する期待の一つだった。なんか自慢たらしいけど、私の考えは間違っていなかったようだ。と言うのは、《次期大統領に決まったトランプへの期待》ということ。つまり、トランプに働きかけることで、対ロ制裁を緩和できるということね。でも、そんな単純に考えてもいいのかどうか、疑問に感じていた。
トランプは、プーチンを評価している発言をしている。プーチンにしてみれば、そのトランプが米大統領に決まったことで、現状打開の期待を掛けているのだろう。長谷川さんが言うには、トランプはシリア・ISの問題を解決する目的で、プーチンに期待しているのだという。そして、その問題を解決した後で、ウクライナ問題に取り掛かろうと。つまり、シリア・ISの情勢の沈静化が成し遂げられれば、トランプはプーチンを切り捨てるだろうというのが、長谷川さんの予測である。
だけど、なら、プーチンは、それを全部見込んで、すでに打つ手を考えて、トランプに関係改善を持ちかけているのか。そんな手があるのか。これも、この本で解決した。この問題は深刻だ。ロシアの知的水準が落ち込んでいるという。一般的知的レベルの落ち込みに比例して情報分析能力も落ち込み、プーチンの政策判断に異常をきたしているという。
トランプの登場で、日本に対し、プーチンは手のひらを返すような真似をした。なら、次の機会が来るまで、待てばいい。それは、そう先のことでもなさそうだ。
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イタリア首相のレンツィが、憲法改正案の国民投票に際し、その成立に自分の進退をかけた。憲法改正案は、立法に関する権限を乗員から奪って下院に限定し、経済政策の権限を中央政府に集約して地方政府の権限を制御するものだった。これで中央政府の力を安定させ、必要な政策を速やかに実行できるようにするためのものだった。レンツィは、憲法改正案の可決を信じ、これに自分自身への信任を重ねることで権力基盤を強化することを狙ったのだそうだ。
私はこのニュースの保つ意味を理解することができないでいたのだが、この時、憲法改正案の否決に向けて反対運動を繰り広げたのが、右翼のグループや、反EUを掲げる政党だったんだそうだ。つまり、国民は右翼や反EUに票を投じたのである。
2017年に予定されているヨーロッパの主要な国政選挙は、ブレグジット、トランプの勝利、レンツィの敗北の流れを断ち切れるかどうかが焦点となる。
3月にはオランダの議会選挙。4~5月にはフランスの大統領選挙。6月にはフランスの国民議会選挙。秋にはドイツ連邦議会選挙。
ロイター 2017/03/10 焦点:オランダのパラドックス、豊かな国で極右政党優勢の理由 http://jp.reuters.com/article/dutch-election-analysis-idJPKBN16G0VO (全文) [フォーレンダム(オランダ) 3日 ロイター] - オランダのフォーレンダムは、こぎれいで豊かな港町だ。犯罪や失業もほとんどなく、とうてい対立の温床には見えない。だが3月15日の同国総選挙では、3分の1の有権者が、反移民を掲げる極右政党「自由党」のヘルト・ウィルダース党首を支持するとみられている。 ウィルダース党首の高い人気は、西側の民主主義諸国が抱える現状に挑み、欧州連合(EU)を揺るがす「パラドックス」を浮き彫りにしている。経済が順調にもかかわらず、有権者は主流派に背を向け、反主流派的なポピュリズムに賛同しているのだ。 (続きを読む)にかなり長い全文 |


ロイター 2017/03/10 焦点:オランダのパラドックス、豊かな国で極右政党優勢の理由 http://jp.reuters.com/article/dutch-election-analysis-idJPKBN16G0VO (全文) [フォーレンダム(オランダ) 3日 ロイター] - オランダのフォーレンダムは、こぎれいで豊かな港町だ。犯罪や失業もほとんどなく、とうてい対立の温床には見えない。だが3月15日の同国総選挙では、3分の1の有権者が、反移民を掲げる極右政党「自由党」のヘルト・ウィルダース党首を支持するとみられている。 ウィルダース党首の高い人気は、西側の民主主義諸国が抱える現状に挑み、欧州連合(EU)を揺るがす「パラドックス」を浮き彫りにしている。経済が順調にもかかわらず、有権者は主流派に背を向け、反主流派的なポピュリズムに賛同しているのだ。 この傾向が特に顕著なのがオランダだ。オランダ経済は今年、ユーロ圏で最も好調になる見込みで、幸福度や物質的な満足を示すグローバル指標によれば、オランダ国民は常に最上位近くにランクされている。 オランダにおける反主流派感情は、「何よりもまず文化やアイデンティティに由来するもので、経済とはあまり関係がない」。そう語るのは、アムステルダム大学の政治学者としてEUにおける極右政党の台頭を研究するサラ・デランゲ氏だ。 こうした感情は、EU離脱を決めた英国民投票や、ドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選に見られた人々の不満と呼応するものだ。仮にウィルダース氏が権力獲得に至るほどの勝利を収めないとしても、オランダ総選挙は、ポピュリストによる政治的反動の次なる幕開けとなるだろう。 ──オランダ総選挙:各政党の支持率推移 世論調査では、ウィルダース氏率いる自由党は改選前の2倍以上となる26議席にまで勢力が拡大すると予想されている。41議席から27議席への転落が見込まれるマルク・ルッテ首相の保守党に肩を並べる勢いだ。連立与党の労働党は、現在の38議席から14議席に転落するとみられている。 長年にわたるリベラルな移民政策を巡る、都市部の親EU派政治エリートに対する怒りが、ウィルダーズ人気の源泉となっている。 オランダ統計局(CBS)によれば、同国人口に占める西側諸国以外からの移民の比率は、1996年の7.5%に対して、2015年は12.1%へと上昇した。現在、総人口1700万人のうち、約5%がムスリムである。 「動物園の檻が全部開けられていたら、どれほどの混乱が起きるか想像してほしい」。フォーレンダムで暮らす年金生活者のウィレム・ビアマンさんは、ウィルダース氏の反イスラム、反EUの主張を支持する理由についてそう語った。 「それが今の欧州で起きていることだ」 オランダ国民は昔から、その歴史に根ざした寛容な多文化主義で知られている。しかし、それぞれの選挙区の所得水準や、外国人住民の割合に関係なく、移民問題がオランダ総選挙の重要な争点となっている。 <犯罪増加への懸念> フォーレンダムは白人の中産階級を主体とする地域だ。小さいが美しく塗装された家々が、ゴミ1つ落ちていない街路に軒を連ねている。 約8000人の人口のうち、西側諸国以外からの移民は2%にすぎず、ほとんど目立たない、失業率は3%で、犯罪発生率は人口1000人当たり3件だ。 デランゲ氏によれば、フォーレンダムのような地域における反移民感情は、犯罪増加などの「大都市問題」が、自分たちが暮らす静穏な地域に波及するのではないかという懸念に端を発していることが多いという。 フォーレンダムは、移民の多いオランダ最大の国際都市アムステルダムから車で30分の距離にある。 国内第2位の都市ロッテルダムでは、以前から、白人有権者がウィルダース氏の自由党やその他の極右政党に引き寄せられてきた。総人口63万1000人の38%が移民であり、失業率は12%を超える。いずれも全国的にみて高い数値だ。 <移民と緊縮財政のダブルパンチ> ルッテ政権下で進められた財政緊縮も、主流派指導陣に対する人々の敬意を損なう結果となった。この政策はオランダ国内の富裕層よりも低中位の所得層にはるかに大きな打撃を与えたため、ウィルダース氏が強調する不公正感や不平等感が増幅してしまったからである。 現在、オランダ経済は好調で、ユーロ圏諸国の成長を牽引しているが、2008年から2014年まではゼロ成長と停滞した。2008─09年の金融危機の余波のなか、EUの財政規律を遵守するために政府が歳出を削ったためだ。 財政緊縮は多くの人々の怒りを買った。特に医療サービスと高齢者介護が削減されたことが大きかった。移民受入れの継続と、これらの歳出削減が相まって、多くの人々が、国内状況が悪化しているのに政治家は無関心だという印象を強めたのである。 「『自分は大丈夫だが、国の状況は悪化している』と人々はよく口にする」とアムステルダムのプロテスタント教会のジュリア・バン・リジン牧師は語る。「これまでは、どの世代もその親世代より豊かになってきた。だが今では人々は停滞感を抱いており、子どもたちの将来を危ぶんでいる」 最近の世論調査によれば、オランダ国民の大半は自分自身の状況については楽観的だが、10人中7人は、国全体の将来について悲観的になっており、その理由として社会の分断と国民性の喪失を挙げている。 ウィルダース氏の選挙運動のスローガンは、「オランダをわれわれの手に取り戻す(The Netherlands ours Again)」であり、伝統的なオランダ人の愛国心と懐古主義に訴えるものだ。 「オランダのアイデンティティ、オランダの価値観、オランダの生活様式が脅かされている。移民とムスリム住民によって侵食されてしまう、という感覚がある」とデランゲ氏は言う。 今年、EU創設時の加盟国のうち3カ国が国政選挙を迎えるが、その最初がオランダだ。フランスとドイツにおいても、ポピュリズム政党が移民とアイデンティティに関する不安に訴えて支持を広げており、欧州大陸の政治状況が変化する可能性がある。 オランダにおけるポピュリストの反乱の根は、実は約20年前にさかのぼる。 この国の最初の右派ポピュリストはピム・フォルタイン氏で、反移民の綱領を掲げて急速に人気を高めたが、2002年に左派の活動家によって射殺された。 ウィルダース氏自身の人気が上昇し始めたのは、2004年に反ムスリムを主張する映画監督テオ・ファン・ゴッホ氏がイスラム主義を奉じる戦闘員によって殺害された後である。 <移民流入減少でも高まる不安> 2016年の難民申請者数は、実のところ半減している。EUとトルコの協定により、トルコを経由して大量に欧州に流入していたムスリムを中心とする移民が減少した。 だが、自由党支持者の中心的な主張は、オランダ福祉制度にはこれ以上の新規移民を受け入れる余裕がない、というものだ。 2016年6月時点で、西側諸国以外からの移民の15.2%は失業している。これに対し、オランダ生まれの住民の失業率は約6%だ。 自由党の有力な地盤であるロッテルダム郊外に住む有権者、カーラ・デッカーさんは、合法的な難民には何の問題もないが、福祉給付を要求する経済的移民には反対だという。 「一種の寄生虫のようなものだ」と彼女は語った。 |
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