米メディア(覚書)『アメリカと中国が世界をぶっ壊す』高山正之 福島香織
第7代、アンドリュー・ジャクソン大統領の時代のことが書かれている。ジャクソニアン・デモクラシーで知られる大統領だな。土地所有者に限られていた選挙権を、白人男性全体に広げて大衆政治を実現する一方で、マニフェスト・デスティニーと言い飾って、インディアンを砂漠に追い立てた嫌なやつだ。
その在任期間に当たる1830年代に、アメリカに渡ってきたフランス人に、アレクシ・ド・トクヴィルという政治思想家がいるんだそうだ。彼は、アメリカの共和制民主政治を高く評価した。大統領選でも、選挙中にどんなに対立しても、一度大統領が決すれば、後腐れなく民意がまとまっていく様子に感心していたという。
そんなトクヴィルが、アメリカの政治体制に唯一危惧を抱いたのが、メディアによる多数派工作だった。
まさに、ジャクソンは、それをやった。スポイルズ・システムで新聞を抱き込み、多数意見を誘導して《多数による専制》を実現した。
“世論は強い”ことが証明された。“世論を誘導できるメディア”が最強の権力であることを、メディア自体が自覚した。依頼、メディアは、常にアメリカ大統領とともにあった。
米西戦争では、過酷な植民地支配の下で喘いでいるキューバ人をスペインの圧政から救おうと、新聞がキャンペーンを組んだ。日本に対しては、メディアは嫌悪をむき出しにして、内外で反日をあおった。“日本を戦争に引きずり込んだのも、ホワイトハウスと米世論を握る新聞の合作だった”という高山さんの発言は、正味のものとして受け取っていい。


メディアは、第4の権力と言われるが、それを世界で最初に出現させたのは、やはりアメリカだった。そして、戦後もそれは続いた。ただし、高山さんによれば、そのパートナーはウォール街であったり、グローヴァリストであったりと変わることはあったが、基本的に権力に密着して世論を操作するしくみは変わらなかったという。
しかし、現実の事態は変わっていった。流入した有色人種の投票が、選挙の行方を左右するようになり、彼らが能力以上に優遇され、社会保障が充実し、反対に、この国の発展を支えてきたと自負する白人の多くが、アメリカの将来に何の夢も持てなくなった。
そんななかで行われた今回の大統領選挙だった。世論はメディアに背を向けた。アメリカ人は、ドナルド・トランプを選択した。期間中はひどく罵り合っても、結果が出れば、後腐れなくまとまっていった“民意”が、大統領に低い支持率を叩きつける。メディアは、反トランプの風潮をしきりに伝える。しかし、投票直線に至るまで、メディアは同じことを繰り返していた。
もはや、メディアは、米世論を操作できないし、代表もできない。岸信介首相が《声なき声》と呼んだものを聞き取ったのは、トランプ大統領の方だ。この事態にいたり、高山さんは、米メディアの現状を、きわめて的確な言葉で言い当てている。《「ニューヨーク・タイムズ」は、「人民日報」のような機関紙である》と。1%の上澄みの人々のみが読む新聞であり、彼らの機関紙であると・・・。

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その在任期間に当たる1830年代に、アメリカに渡ってきたフランス人に、アレクシ・ド・トクヴィルという政治思想家がいるんだそうだ。彼は、アメリカの共和制民主政治を高く評価した。大統領選でも、選挙中にどんなに対立しても、一度大統領が決すれば、後腐れなく民意がまとまっていく様子に感心していたという。
そんなトクヴィルが、アメリカの政治体制に唯一危惧を抱いたのが、メディアによる多数派工作だった。
まさに、ジャクソンは、それをやった。スポイルズ・システムで新聞を抱き込み、多数意見を誘導して《多数による専制》を実現した。
“世論は強い”ことが証明された。“世論を誘導できるメディア”が最強の権力であることを、メディア自体が自覚した。依頼、メディアは、常にアメリカ大統領とともにあった。
米西戦争では、過酷な植民地支配の下で喘いでいるキューバ人をスペインの圧政から救おうと、新聞がキャンペーンを組んだ。日本に対しては、メディアは嫌悪をむき出しにして、内外で反日をあおった。“日本を戦争に引きずり込んだのも、ホワイトハウスと米世論を握る新聞の合作だった”という高山さんの発言は、正味のものとして受け取っていい。
『アメリカと中国が世界をぶっ壊す』 高山正之 福島香織 徳間書店 ¥ 1,404 掟破りのルールなき世界で、いい子ぶりっ子はやめ、日本は米中の腹黒さを見習ったほうがいい |
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メディアは、第4の権力と言われるが、それを世界で最初に出現させたのは、やはりアメリカだった。そして、戦後もそれは続いた。ただし、高山さんによれば、そのパートナーはウォール街であったり、グローヴァリストであったりと変わることはあったが、基本的に権力に密着して世論を操作するしくみは変わらなかったという。
しかし、現実の事態は変わっていった。流入した有色人種の投票が、選挙の行方を左右するようになり、彼らが能力以上に優遇され、社会保障が充実し、反対に、この国の発展を支えてきたと自負する白人の多くが、アメリカの将来に何の夢も持てなくなった。
そんななかで行われた今回の大統領選挙だった。世論はメディアに背を向けた。アメリカ人は、ドナルド・トランプを選択した。期間中はひどく罵り合っても、結果が出れば、後腐れなくまとまっていった“民意”が、大統領に低い支持率を叩きつける。メディアは、反トランプの風潮をしきりに伝える。しかし、投票直線に至るまで、メディアは同じことを繰り返していた。
もはや、メディアは、米世論を操作できないし、代表もできない。岸信介首相が《声なき声》と呼んだものを聞き取ったのは、トランプ大統領の方だ。この事態にいたり、高山さんは、米メディアの現状を、きわめて的確な言葉で言い当てている。《「ニューヨーク・タイムズ」は、「人民日報」のような機関紙である》と。1%の上澄みの人々のみが読む新聞であり、彼らの機関紙であると・・・。


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