めんどくせぇことばかり 『鬼神』 矢野隆

『鬼神』 矢野隆

いつごろからだろう。私も鬼の側に立っている。

子供の頃のお話で一番好きなのは、「赤鬼と青鬼」の話だった。人間と仲良く暮らしたいと思っているがきっかけを見いだせずに悩んでいる赤鬼のために、青鬼は残虐非道を装って大暴れし、赤鬼に人間を助けさせて、人間と交わるきっかけを与えてやる。ボロボロに傷ついたはずの青鬼は、手紙を残して、いづくともなく旅に出る。でも、私は子供の頃から知っていた。青鬼は、死んだのだ。

“死”を概念として受け止めていたわけじゃない。でも、“旅に出た”とあれば、“帰る”ことが前提になるが、青鬼が帰ってくるということは、思いもよらない事だった。もう、誰の前にも現れず、読んでも声も聞こえず、やがて、ただ忘れられていく。それって、死んだってことだよね。人間と交わった赤鬼は、もはや人間となった。そして、鬼は、死んだのだ。

桃太郎は、まだいい。やっつけられた鬼たちは、その後も鬼が島に暮らし、状況を睨んで都に出没するだろう。なにせ、鬼を懲らしめにやってきたのは、桃から生まれた桃太郎と、犬と猿と雉だ。やられたけど、しょせん同類みたいなもんだ。桃から生まれた怪力無双が人間連中から受け入れられるのは、鬼から奪った金の続くうちのこと。

金の切れ目が縁の切れ目で、そのうち化け物扱いされて、・・・なんだったら、鬼ヶ島の親分として迎え入れるってのはどうだろう。あんな強い親分なら、鬼ヶ島でも願ったり叶ったりだ。

でも、いずれは都の軍勢が向けられて、鬼の時代にも終止符が打たれる。まあ、それまでは、存分に暴れることもできるだろう。


『鬼神』    矢野隆

中央公論社  ¥ 1,836

これは、この国にまだ、神と鬼がいた頃の話
壱  人のみやこ
弐  鬼の山
参  酒呑みし童
肆  人と鬼の戦
伍  慚愧の鉞

タバコを辞めて3年になる。まあ、ちょっと、息苦しさがひどくて、「こりゃ本当にまずいかも」って、足治す前に命が終わっちゃ、シャレにもならないので、医者に行って禁煙した。今は、片隅に追いやられてるけど、昔は職場のデスクでタバコ吸ってた。会議室でも吸ったし、食堂はもちろん、歩きタバコも当然で、電車の中でも吸っていた。考えてみると、乱暴な時代だった。

一つ、タバコだけの話じゃない。酒だってそうだし、車もそうだよね。女の扱いもそうだった。・・・私がってわけじゃないよ。そうそう、山の登り方も乱暴だった。いろいろとていねいな世の中になって、そりゃけっこうなことだけど、残念ながら、私は前の時代の住人だなぁ。・・・そう、追われていく方ね。

面白かったよ。焦点は、坂田金時と酒呑童子。いずれも、本来は、“まつろわぬ民”。しかし、源頼光に拾われることで、金時は“人の世”に出る。酒呑童子は元の世界で踏ん張る。“人の世”に出ても、金時が共感を寄せられるのは、“まつろわぬ民”の世界、山の領域なのだ。“まつろわぬ民”の世界に共感を寄せつつ、それを追いやる側に回った金時。迎え撃つ酒天童子。

・・・そういう話だ。

前の時代を思いながら、追われていこう。そうと決めたら、新しい時代に、自分からおもねることもない。だけど、パソコンとかは便利だからね。便利なものは、便利な範囲で使わせてもらうが、それに見合った義務まで期待されるのは嫌だ。そのへんは、なんとかごまかしつつ、逃げ切る。

時代は、新しく移り変わることで、いつも“鬼”を生み出していくんだな。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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