ドナルド・トランプ『安全保障は感情で動く』 潮匡人
2016年7月23日、共和党大統領候補指名受諾演説
でも、NHKがどんな意図でそれをやったか知らないけど、私はトランプがそこに現れた意味を、かなり早い段階で直感的にとらえましたよ。・・・へへへ、偉い?
偉ぶってる場合じゃなくて、リーマンショックのちょっとあと、「ウォール街を占拠せよ」を合言葉に、貧乏人たち、とくに若い連中が集まって、大騒ぎを始めたよね。当初、私は、「どうせアメリカ人のやることだから、いくらかの分け前をあてがわれて終わるんだろう」ぐらいに思ってた。
でも、その時彼らが叫んでいたスローガン、《We are the 99%》は、まさに「反エスタブリッシュメント」そのもの。オバマも、クリントンも無視を決め込んできたけど、トランプ登場の舞台は、ずいぶん前から整えられていた。


どうも、「ポピュリズム」という言葉はあいまいだよね。本来は大衆迎合主義という脈絡で使われているから、トランプの言う、「声もなくし、忘れさられた大衆」に光を当てるということに、それを使うのはおかしい。おかしいにもかかわらず、どうも世界中のマスコミは、トランプの手法を大衆迎合主義という大きな網で身動きできないようにとらまえてしまいたいみたいだ。
でも、それは卑怯だ。著者が、いい解釈を準備してくれた。「既得権益を持つリベラルなインテリのエリート層に対する反感」・・・これで良いんじゃないかな。“リベラル”、“インテリ”、“エリート”と、99%が誰と戦っているのかもはっきり見えてくるしね。
さて、上の者にしてみりゃあ、庶民なんてのは、馬鹿ほど扱いやすい。政治だの、経済だのと、あんまり関心を示さない奴ならなお結構。芸能だの、スポーツだのに一喜一憂してもらった方がありがたい。
庶民にしてみれば、上のやつらなんてのは、その程度に思ってる奴ほど扱いやすい。・・・まあいいや、甘く見てると、痛い目の合わすぞ! ・・・なんて雄たけびを上げてみたものの、著者が取り上げたこの話には、そんな思いも飲み込んでしまった。
「既得権益を持つリベラルなインテリのエリート層に対する反感」は、現実社会では、エスタブリッシュメントの利益のために迎えられた移民たちへの反発になったりする。言いかえれば“異種なるものへの嫌悪感”。それを「ゼノフォビア」と言うそうです。ディクショナリー・ドットコムは、2016年の言葉に、この「ゼノフォビア」を選んだそうです。これはどうも、“神ってる”なんて言ってる場合じゃないぞ。どうだ、広島ファン。・・・巨人ファンだからって、こんなこと言うわけじゃ・・・な・・・い・・け
ともかく・・・、だ。「アメリカファースト」とトランプが言い続ける動きは、多少の分け前をあてがわれて終わるのか、それとも99%を標的としたより広範な動きに合流するのか、今はまだ、見切れない。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
私のメッセージは、物事は変わらなければならないというものです。そして、物事は今すぐ変わらなければなりません。私は毎日、この国のいたるところで出会った、ないがしろにされ、無視され、見捨てられた人々のために、変化をもたらそうとの決意で目を覚まします。 私は、一時解雇された工場労働者や、私たちのひどく不公平な貿易取引によって壊滅に至った地域社会を訪れています。こうした地域にいるのは、忘れ去られた、我が国の男性や女性たちです。懸命に働いているものの、もはや声を持たない人たちなのです。 しかし、このままずっと忘れられたままにはしておきません。わたしはあなた方の代弁者です。 |
冨永真奈美訳
最後の、太字にした部分、NHKは訳していないんだそうです。私なんかは、なにがしかの重大発表があるとすぐ飛びついて、もとから日本語のものであろうが、訳文であろうが、そのまま鵜呑みにしてしまうけど、・・・そうだよねえ。なにも改竄するまでもなく、「それを載せない」というだけで、イメージを変えたり、濃くしたり、薄くしたりすることは容易いね。でも、NHKがどんな意図でそれをやったか知らないけど、私はトランプがそこに現れた意味を、かなり早い段階で直感的にとらえましたよ。・・・へへへ、偉い?
偉ぶってる場合じゃなくて、リーマンショックのちょっとあと、「ウォール街を占拠せよ」を合言葉に、貧乏人たち、とくに若い連中が集まって、大騒ぎを始めたよね。当初、私は、「どうせアメリカ人のやることだから、いくらかの分け前をあてがわれて終わるんだろう」ぐらいに思ってた。
でも、その時彼らが叫んでいたスローガン、《We are the 99%》は、まさに「反エスタブリッシュメント」そのもの。オバマも、クリントンも無視を決め込んできたけど、トランプ登場の舞台は、ずいぶん前から整えられていた。
『安全保障は感情で動く』 潮匡人 文春新書 ¥ 880 たしかに重要である。しかし、地政学だけで安全保障を語るのは危険である |
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どうも、「ポピュリズム」という言葉はあいまいだよね。本来は大衆迎合主義という脈絡で使われているから、トランプの言う、「声もなくし、忘れさられた大衆」に光を当てるということに、それを使うのはおかしい。おかしいにもかかわらず、どうも世界中のマスコミは、トランプの手法を大衆迎合主義という大きな網で身動きできないようにとらまえてしまいたいみたいだ。
でも、それは卑怯だ。著者が、いい解釈を準備してくれた。「既得権益を持つリベラルなインテリのエリート層に対する反感」・・・これで良いんじゃないかな。“リベラル”、“インテリ”、“エリート”と、99%が誰と戦っているのかもはっきり見えてくるしね。
さて、上の者にしてみりゃあ、庶民なんてのは、馬鹿ほど扱いやすい。政治だの、経済だのと、あんまり関心を示さない奴ならなお結構。芸能だの、スポーツだのに一喜一憂してもらった方がありがたい。
庶民にしてみれば、上のやつらなんてのは、その程度に思ってる奴ほど扱いやすい。・・・まあいいや、甘く見てると、痛い目の合わすぞ! ・・・なんて雄たけびを上げてみたものの、著者が取り上げたこの話には、そんな思いも飲み込んでしまった。
「既得権益を持つリベラルなインテリのエリート層に対する反感」は、現実社会では、エスタブリッシュメントの利益のために迎えられた移民たちへの反発になったりする。言いかえれば“異種なるものへの嫌悪感”。それを「ゼノフォビア」と言うそうです。ディクショナリー・ドットコムは、2016年の言葉に、この「ゼノフォビア」を選んだそうです。これはどうも、“神ってる”なんて言ってる場合じゃないぞ。どうだ、広島ファン。・・・巨人ファンだからって、こんなこと言うわけじゃ・・・な・・・い・・け
ともかく・・・、だ。「アメリカファースト」とトランプが言い続ける動きは、多少の分け前をあてがわれて終わるのか、それとも99%を標的としたより広範な動きに合流するのか、今はまだ、見切れない。


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