『1493 入門世界史』チャールズ・C・マン
今年、25歳になる息子がアメリカのテレビドラマ『刑事コロンボ』が好きで、DVDをセットで買って全部見た。コロンボはイタリア系の移民だよね。そのコロンボをスペイン語するとコロン、ラテン語でコロンブス、英語ではコロンバスになるんだそうだ。
イタリア系の移民は生活が苦しくて、中には結束を固めてマフィアを構成する者もあり、ボクシングで一旗揚げたロッキー・バルボアもいる。コロンボは、“かみさん”のでかい尻に敷かれて、ポンコツな車に乗って現場に駆けつける凶悪犯罪専門のデカさん。しかも、着古しの、ヨレヨレのコートがトレードマークって、どうにもうだつが上がらない。
そんなコロンボ刑事が、アメリカでも上流の生活を送る者たちの犯した殺人を、しかも、いずれも巧妙に仕立て上げられた犯罪を暴き立てていく。上流の紳士淑女が、日頃は見下しているイタリア系移民の刑事コロンボに、巧妙な仕掛けを一つ一つ解き明かされて追い詰められて、最後はその軍門にくだらざるを得なくなる。・・・「これは人種問題なのだ」なんていい始めると、全く面白くなくなるので、気をつけよう。
彼をコロンブスと呼ぶからには、その存在と業績は、ローマ教会も公式に認定したものということになるのだろう。だけど、ここのところ、コロンブス個人に対する評価は芳しくない。この本の著者もそう言っているが、コロンブスによって引き起こされた“アメリカ人”の悲劇が、あまりにも大きすぎることにもよるのだろう。虐げられた人々に光を当てるのは悪いことじゃない。ただ、それに便乗する勢力があることも・・・。今はそれはやめよう。
そして、コロンブスに対する個人的評価も、ここでは置いておく。しかし、否定的側面が強かろうがどうだろうが、彼の業績が世界史に決定的な影響を与えたことは間違いのないことであるし、それは現在も進行中である。
《コロンブス交換》と作者が呼ぶのは、人や植物や動物、時には病原菌までが、新大陸と旧大陸間で混ざりあっていくこと。長年隔絶されてきた生態系と生態系が突然出会い、混ざり合って、想像もできなかった事態を引き起こした。そして、今も引き起こしつつある。
これなんか、《コロンブス交換》の本の一コマでしかない。西洋タンポポが蔓延って、日本タンポポは急激に数を減らしているとか、ブラックバスに固有種が食い荒らされているとか、日本ミツバチはもはや稀少価値とか、日本人は、日本の固有種が外来種に駆逐される話ばかりを聞かされて、「どうも日本の固有種は、総じて生命力が弱い。まるで、遠慮がちで、諸外国から付け込まれることの多い日本人と同じ」とかって思ったりする。
外来種の侵入によって固有の種が影響を受け、生態系が変わってしまうのは、日本だけじゃない。日本のわかめが、外国では外来種としてあちこちの国を困らせている。雑草のクズは、駆除することがほとんど不可能な、侵略的外来種ワースト100に入る力強さ。
実は日本人も、歴史の中でけっこうあちこちに根を下ろしていたりする。しかし、比較的淡泊なのは確かなようで、こだわらないからそれとは分からないだけのこと。
人にしようが、動物にしようが、植物にしようが、病原菌にしようが、新たな出会いは混乱を生む。白人がまき散らかしたような、不必要な混乱は勘弁してもらいたいが、混乱そのものは必然的なものであろう。
個々のケースを考えれば、“悲劇”ではある。そういった側面もあった。だけど、そういった一面的な評価を下しても、これまでに起こったことをもとに戻すことはできないし、同様のことはこれからもあり得る。かつてあった白人の行為による有色人の悲劇は今後起こってはならないが、それは違うところで十分反省してもらいたい問題だ。
要は、その先に少しでもマイナスを小さくし、プラスを大きくする努力だろう。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
イタリア系の移民は生活が苦しくて、中には結束を固めてマフィアを構成する者もあり、ボクシングで一旗揚げたロッキー・バルボアもいる。コロンボは、“かみさん”のでかい尻に敷かれて、ポンコツな車に乗って現場に駆けつける凶悪犯罪専門のデカさん。しかも、着古しの、ヨレヨレのコートがトレードマークって、どうにもうだつが上がらない。
そんなコロンボ刑事が、アメリカでも上流の生活を送る者たちの犯した殺人を、しかも、いずれも巧妙に仕立て上げられた犯罪を暴き立てていく。上流の紳士淑女が、日頃は見下しているイタリア系移民の刑事コロンボに、巧妙な仕掛けを一つ一つ解き明かされて追い詰められて、最後はその軍門にくだらざるを得なくなる。・・・「これは人種問題なのだ」なんていい始めると、全く面白くなくなるので、気をつけよう。
彼をコロンブスと呼ぶからには、その存在と業績は、ローマ教会も公式に認定したものということになるのだろう。だけど、ここのところ、コロンブス個人に対する評価は芳しくない。この本の著者もそう言っているが、コロンブスによって引き起こされた“アメリカ人”の悲劇が、あまりにも大きすぎることにもよるのだろう。虐げられた人々に光を当てるのは悪いことじゃない。ただ、それに便乗する勢力があることも・・・。今はそれはやめよう。
そして、コロンブスに対する個人的評価も、ここでは置いておく。しかし、否定的側面が強かろうがどうだろうが、彼の業績が世界史に決定的な影響を与えたことは間違いのないことであるし、それは現在も進行中である。
『1493 入門世界史』 チャールズ・C・マン あすなろ書房 ¥ 1,728 コロンブルから始まるグローバル社会 《1493》は“コロンブス後”ということか |
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《コロンブス交換》と作者が呼ぶのは、人や植物や動物、時には病原菌までが、新大陸と旧大陸間で混ざりあっていくこと。長年隔絶されてきた生態系と生態系が突然出会い、混ざり合って、想像もできなかった事態を引き起こした。そして、今も引き起こしつつある。
NHK WEB NEWS 2017/8/2 ヒアリの調査 対象の港を68か所に拡大 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170802/k10011084581000.html?utm_int=word_contents_list-items_002&word_result=ヒアリ (抜粋) 強い毒を持つ南米原産のヒアリが全国の港などで相次いで見つかっていることを受けて、環境省などはヒアリがいないか確認する調査を2日から横浜港など全国の68か所に増やして始めました。 (続きを読む)に全文 |
外来種の侵入によって固有の種が影響を受け、生態系が変わってしまうのは、日本だけじゃない。日本のわかめが、外国では外来種としてあちこちの国を困らせている。雑草のクズは、駆除することがほとんど不可能な、侵略的外来種ワースト100に入る力強さ。
実は日本人も、歴史の中でけっこうあちこちに根を下ろしていたりする。しかし、比較的淡泊なのは確かなようで、こだわらないからそれとは分からないだけのこと。
人にしようが、動物にしようが、植物にしようが、病原菌にしようが、新たな出会いは混乱を生む。白人がまき散らかしたような、不必要な混乱は勘弁してもらいたいが、混乱そのものは必然的なものであろう。
個々のケースを考えれば、“悲劇”ではある。そういった側面もあった。だけど、そういった一面的な評価を下しても、これまでに起こったことをもとに戻すことはできないし、同様のことはこれからもあり得る。かつてあった白人の行為による有色人の悲劇は今後起こってはならないが、それは違うところで十分反省してもらいたい問題だ。
要は、その先に少しでもマイナスを小さくし、プラスを大きくする努力だろう。


NHK WEB NEWS 2017/8/2 ヒアリの調査 対象の港を68か所に拡大 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170802/k10011084581000.html?utm_int=word_contents_list-items_002&word_result=ヒアリ (全文) 強い毒を持つ南米原産のヒアリが全国の港などで相次いで見つかっていることを受けて、環境省などはヒアリがいないか確認する調査を2日から横浜港など全国の68か所に増やして始めました。 このうち横浜港の本牧ふ頭では先月14日、地面のアスファルトの割れ目から幼虫やさなぎを含む700匹余りのヒアリが見つかっています。2日は周辺の緑地で専門の業者が駐車場の側溝にたまった砂の中やアスファルトの継ぎ目にヒアリがいないか確認しながら見回ったり、ヒアリを捕獲するための粘着性のあるトラップを仕掛けたりしていました。 環境省などは、ヒアリが各地の港などで相次いで見つかったことを受け、ヒアリがいないか調査する港をこれまでの全国7か所から、ヒアリが生息している中国や台湾などとの定期航路がある68か所に増やしました。 調査は2日の横浜港から始まり、ことし10月にかけて行われることになっています。環境省の担当者は「ヒアリは地面が露出しているところに定着する可能性が高いので、そうした箇所から調査をスタートし、状況を早期に確認するべく取り組んでいきたい」と話していました。 |
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