『曲がり角に立つ中国』 豊田正和・小原凡司
秋に行われるという中国共産党第19回全国代表大会。“秋に行われる”っていうのを、私は勝手に10月だと思い込んでいたんだけど、実際にいつ行われるのか、ネットで調べてみても出てこない。
今年に入ってからのシナにおける政治絡みの日程は、おそらくすべて、この“党大会”に向けて設定されているんだろう。国家主席の地位は人気が5年で、習近平はこれで任期を終えるのだ。ただ、通常、国家主席は2期10年っていうのが前例で、5年目の1期の終わりに、第2期を始まるにあたり、後継者を指名、もしくは“匂わせる”ことになる。
しかし、習近平の場合、わけが違う。順調に2期目に突入したとして、10年で国家主席の地位を下りれば、権力を失った瞬間に習近平は報復を受けることになりかねない。それだけの恨みは、十分に買っている。
ついこの間、重慶市党委員会書記を務めていた孫政才(53歳)が“重大な規律違反”を問われて失脚した。次世代のリーダー候補と目されてきた人物だそうだ。後からその地位に抜擢されたのは、習近平の側近だそうだ。
この本によれば、王岐山の去就が注目どころらしい。69歳の王岐山。《七上八下》という党のルールがあるんだそうだ。68歳以上は公職を退くというもので、王岐山は政界を去ることになる。習近平が“汚職撲滅”の先陣を任せてきた人物であるだけに事は簡単ではない。
しかも、《七上八下》は明文化されたルールではない。その点は、任期は2期までというルールも同様である。王岐山を留任させることは、任期は2期までという暗黙のルールを破る前例ともなるわけだ。


高級幹部の汚職摘発は、中国共産党の民衆操作の新たな手法である。経済の停滞が明らかになりつつある中、貧しい大衆は、自分が経済発展のおこぼれにあずかれそうもないことに気付き始めている。そこから生まれた彼らの怒りは、幹部たちが並外れた豪勢な暮らしを営む共産党に向けられる。
習近平は、こうした大衆の不満を緩和するためにも、汚職にまみれた高級幹部たちを摘発し、大衆の目の前で厳しく処罰するのである。
谷俊山の摘発は、うってつけのものであった。彼は人民解放軍の中将で、基地や隊員宿舎、集合住宅の建設管理を任される立場にあった。そこで不正に得た金銭を江沢民派の高官たちに上納していたのである。
谷俊山は、巨額の不正を摘発されて失脚し、2014年1月、彼の実家が家宅捜索される様子がインターネットで公開された。巨大な金製品、トラック4台分にもなる財宝、広大な敷地をもつ豪勢な住宅に、大衆は度肝を抜かれた。
さらにその後に流れた醜聞によれば、収賄は63億人民元に上り、79の家やマンションを持ち、23人の情婦を抱え、家族はみなドイツに移住している。
「中国の女優らはみな、飽きるまで弄んだ。金を使って彼女たちを手に入れたのだ。中央は、我々が取っているのが小銭に過ぎないことを知っている。大部分は指導者のものだ。中国には清廉な官僚などいない。誰があえて《反腐敗》などするだろうか。わかってもだれが手を出すだろうか。汚職をせず、女色におぼれないならば、お前は大馬鹿だ」・・・摘発前にこう語ったとされる谷俊山が処分されることに、中国の大衆は喝采を送ったということだ。
シナにとって、秋の党大会は大きな曲がり角になることは間違いないだろう。だけど、曲がり角を曲がったとき、“大部分を手に入れている指導者”は、そこにいるのだろうか。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
今年に入ってからのシナにおける政治絡みの日程は、おそらくすべて、この“党大会”に向けて設定されているんだろう。国家主席の地位は人気が5年で、習近平はこれで任期を終えるのだ。ただ、通常、国家主席は2期10年っていうのが前例で、5年目の1期の終わりに、第2期を始まるにあたり、後継者を指名、もしくは“匂わせる”ことになる。
しかし、習近平の場合、わけが違う。順調に2期目に突入したとして、10年で国家主席の地位を下りれば、権力を失った瞬間に習近平は報復を受けることになりかねない。それだけの恨みは、十分に買っている。
ついこの間、重慶市党委員会書記を務めていた孫政才(53歳)が“重大な規律違反”を問われて失脚した。次世代のリーダー候補と目されてきた人物だそうだ。後からその地位に抜擢されたのは、習近平の側近だそうだ。
この本によれば、王岐山の去就が注目どころらしい。69歳の王岐山。《七上八下》という党のルールがあるんだそうだ。68歳以上は公職を退くというもので、王岐山は政界を去ることになる。習近平が“汚職撲滅”の先陣を任せてきた人物であるだけに事は簡単ではない。
しかも、《七上八下》は明文化されたルールではない。その点は、任期は2期までというルールも同様である。王岐山を留任させることは、任期は2期までという暗黙のルールを破る前例ともなるわけだ。
『曲がり角に立つ中国』 豊田正和・小原凡司 NTT出版 ¥ 2,700 シナって国は、好きと嫌いに関わらず、未来永劫の永遠の隣国 |
高級幹部の汚職摘発は、中国共産党の民衆操作の新たな手法である。経済の停滞が明らかになりつつある中、貧しい大衆は、自分が経済発展のおこぼれにあずかれそうもないことに気付き始めている。そこから生まれた彼らの怒りは、幹部たちが並外れた豪勢な暮らしを営む共産党に向けられる。
習近平は、こうした大衆の不満を緩和するためにも、汚職にまみれた高級幹部たちを摘発し、大衆の目の前で厳しく処罰するのである。
谷俊山の摘発は、うってつけのものであった。彼は人民解放軍の中将で、基地や隊員宿舎、集合住宅の建設管理を任される立場にあった。そこで不正に得た金銭を江沢民派の高官たちに上納していたのである。
谷俊山は、巨額の不正を摘発されて失脚し、2014年1月、彼の実家が家宅捜索される様子がインターネットで公開された。巨大な金製品、トラック4台分にもなる財宝、広大な敷地をもつ豪勢な住宅に、大衆は度肝を抜かれた。
さらにその後に流れた醜聞によれば、収賄は63億人民元に上り、79の家やマンションを持ち、23人の情婦を抱え、家族はみなドイツに移住している。
「中国の女優らはみな、飽きるまで弄んだ。金を使って彼女たちを手に入れたのだ。中央は、我々が取っているのが小銭に過ぎないことを知っている。大部分は指導者のものだ。中国には清廉な官僚などいない。誰があえて《反腐敗》などするだろうか。わかってもだれが手を出すだろうか。汚職をせず、女色におぼれないならば、お前は大馬鹿だ」・・・摘発前にこう語ったとされる谷俊山が処分されることに、中国の大衆は喝采を送ったということだ。
シナにとって、秋の党大会は大きな曲がり角になることは間違いないだろう。だけど、曲がり角を曲がったとき、“大部分を手に入れている指導者”は、そこにいるのだろうか。


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