『和えるおかず』 坂田阿希子
へぇ~、“和える”ことに特化した料理の本だってさ。最初は、「“和える料理”だけで、本になるのかな」って思って手にしてみたんだけど、ペラペラめくってみただけで、上記の不安は払拭され、すぐに購入。“和える”って、けっこう奥深いもんなんだね。
和える料理といえば、すぐに浮かぶのは“白和え”かな。子供の頃から好きだったな。“白和え”であれば、たとえにんじんであっても食ったからな。もともと、豆腐が好きなんだ。
豆腐は、毎日来る御用聞きのおじさんから買っていた。母は、何にしろ、御用聞きからはなにがしかを買っていた。うちも決して豊かじゃなかった。生活はけっこう苦しかったはず。それでも、私が小学生の頃は、高度経済成長真っ只中で、会社員の父の収入は確実に伸びていたんだろう。
秩父の田舎で、高度経済成長期とはいえ、みんながすぐにその恩恵に預かれるわけじゃなかった。父は中学を卒業すると、定時制に通いながら昭和電工の使い走りとなった。戦争中のことだ。戦後、そのまま正社員になり、いわば、叩き上げて地元採用のノンキャリアといったところ。つまり高度経済成長の恩恵を、そのまま体感できる立場ではあった。
母にも、おそらくそういう意識があったんじゃないかと思うんだ。贅沢品にはまったく目もくれなかった母だが、御用聞きのような小さな商いには、大抵注文を出していたように記憶している。
豆腐屋の御用聞きのおじさんは、いつも「トーフー」と聞こえるラッパを吹きながら、荷台に木箱を積んだ自転車で回っていて、うちに来ると必ずお勝手に声をかけていった。毎日、だいたい豆腐を二丁頼んでいたように思う。おじさんはお勝手の戸口にかけてあった帳面にそれを書いて、月末に集金していた。その帳面なんだけど、たまに開いてみても、ミミズののたくったような字で、なにが書いてあるのがさっぱりわからなかった。
・・・ほうれん草と人参とこんにゃくの白和えね。大好きだった。


“ごまよごし”って呼んでたな。あれは“和え物”だよね。そう考えれば、けっこうあるな。ポテトサラダとかだって、見方変えりゃあ和え物だしね。んんん、そう考えると、たしかに“和え物”も広がりがあるね。
3章の“野菜の和え物ってのは、抵抗ないですね。一番、すぐになじめそう。かつ、紹介されている和え物を見ると、何にも肩ひじ張る必要のない料理であることが分かった。ただ、“そこにあるもの”を使えばいい。問題は、なにで和えるのか。まあ、それはこの本で見て、いろいろと参考にしよう。
“肉の和え物”とか、“魚の和え物”ってのは、あんまりなじみがない。だけど、鯵の干物の和え物なんて、想像の範囲内。なじみがないようでも、たとえば“ささみ”なんて、なんでもなくても和えて食ってる。
そうだ。少しずつ見えてきた。考えてみると、けっこう和えて食ってる。私のソウルフードの一つ、“ねぎみそ”も和え物には違いない。さらに、その“ねぎみそ”で豆腐を和えるとうまいんだ。
・・・なにもとらわれる必要はないな。変な言い方だけど、なにを和えてもいいんだ。和え衣も、やってるうちに見えてくるものもあるだろう。 帰ったら、冷蔵庫にあるものを和えてやる。よし❢ 待ってろよ。冷蔵庫の中の具材たち。冷凍室のかまぼこよ。お前が、ずいぶん前からそこにいることを、私は知っているぞ。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
和える料理といえば、すぐに浮かぶのは“白和え”かな。子供の頃から好きだったな。“白和え”であれば、たとえにんじんであっても食ったからな。もともと、豆腐が好きなんだ。
豆腐は、毎日来る御用聞きのおじさんから買っていた。母は、何にしろ、御用聞きからはなにがしかを買っていた。うちも決して豊かじゃなかった。生活はけっこう苦しかったはず。それでも、私が小学生の頃は、高度経済成長真っ只中で、会社員の父の収入は確実に伸びていたんだろう。
秩父の田舎で、高度経済成長期とはいえ、みんながすぐにその恩恵に預かれるわけじゃなかった。父は中学を卒業すると、定時制に通いながら昭和電工の使い走りとなった。戦争中のことだ。戦後、そのまま正社員になり、いわば、叩き上げて地元採用のノンキャリアといったところ。つまり高度経済成長の恩恵を、そのまま体感できる立場ではあった。
母にも、おそらくそういう意識があったんじゃないかと思うんだ。贅沢品にはまったく目もくれなかった母だが、御用聞きのような小さな商いには、大抵注文を出していたように記憶している。
豆腐屋の御用聞きのおじさんは、いつも「トーフー」と聞こえるラッパを吹きながら、荷台に木箱を積んだ自転車で回っていて、うちに来ると必ずお勝手に声をかけていった。毎日、だいたい豆腐を二丁頼んでいたように思う。おじさんはお勝手の戸口にかけてあった帳面にそれを書いて、月末に集金していた。その帳面なんだけど、たまに開いてみても、ミミズののたくったような字で、なにが書いてあるのがさっぱりわからなかった。
・・・ほうれん草と人参とこんにゃくの白和えね。大好きだった。
『和えるおかず』 坂田阿希子 世界文化社 ¥ 1,404 食材の持ち味が重なり合う美味しさ 食感や温度の違いの楽しさを一口で味わえる |
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“ごまよごし”って呼んでたな。あれは“和え物”だよね。そう考えれば、けっこうあるな。ポテトサラダとかだって、見方変えりゃあ和え物だしね。んんん、そう考えると、たしかに“和え物”も広がりがあるね。
3章の“野菜の和え物ってのは、抵抗ないですね。一番、すぐになじめそう。かつ、紹介されている和え物を見ると、何にも肩ひじ張る必要のない料理であることが分かった。ただ、“そこにあるもの”を使えばいい。問題は、なにで和えるのか。まあ、それはこの本で見て、いろいろと参考にしよう。
“肉の和え物”とか、“魚の和え物”ってのは、あんまりなじみがない。だけど、鯵の干物の和え物なんて、想像の範囲内。なじみがないようでも、たとえば“ささみ”なんて、なんでもなくても和えて食ってる。
そうだ。少しずつ見えてきた。考えてみると、けっこう和えて食ってる。私のソウルフードの一つ、“ねぎみそ”も和え物には違いない。さらに、その“ねぎみそ”で豆腐を和えるとうまいんだ。
・・・なにもとらわれる必要はないな。変な言い方だけど、なにを和えてもいいんだ。和え衣も、やってるうちに見えてくるものもあるだろう。 帰ったら、冷蔵庫にあるものを和えてやる。よし❢ 待ってろよ。冷蔵庫の中の具材たち。冷凍室のかまぼこよ。お前が、ずいぶん前からそこにいることを、私は知っているぞ。


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