『武器としての経済学』 大前研一
経済の話は苦手だな。なにしろ学生時代に胸をときめかせながら勉強したのは、ソ連の崩壊とともにとどめを刺された“マル経”って言う年代物ですから。この間、30歳位のやつに話してみたけど、“マル経”なんて、なんのことだかわからなかったみたいよ。
大学はその手の学生の巣窟で、自治館の運営の中核は、それにふさわしい名称を持った団体の方々が取り仕切っていた。なにかとその自治館を間借りしている立場で、あの飛行場が気に食わないとか、あの港に気に入らない船がやってくるとかで、駆り出されることもあった。
学生に比べれば遥かに良識をお持ちの先生方も、ハウス“キン経”チキンカレーに対抗する立場で、世のくつがえる時を待ちわびる、どこか《魔太郎がくる!》を思わせる方々。最後の審判のあとは、あちら側で美味しい思いができると信じていたんでしょう。
そのお立場はソ連崩壊で砕け散り、哀れな余生を送るしかないという運命だったはず。ところがどっこい、多くの方々は、“進歩主義”であるとか、“リベラル”であるとか、なんだか昔よりもスマートな装いで、いぜんとして「先生」と呼ばれる毎日を送っている。
「そのしぶとさはゴキブリ以上」なんて言い方はちょっとひどいと思うけど、たしかにそのしぶとさは見事なほど。そういうのが目につくからこそ、日本人は“潔さ”を尊ぶんだろうな。


高校生や大学生にとって、就職に夢をかけられないというのは、大変な悲劇だ。その大変悲劇的な状況が、けっこう長い間続いた。“長く続いた”ってことがまた、日本の悲劇だった。それが目に見えて上向いたのは4年前だ。今年は今まで以上の売り手市場で、高校生も大学生も、これまで夢見た将来像をそのまま就職活動の上に乗せているだろう。
そのやり方は、いくらでも文句をつける余地があるだろうが、これがアベノミクスの成果であることは疑いない。
そのあたり、大前さんの問題提起は、「そこまで就職の状況が良いのに、景気が良くならないか」という点に向けられる。
若い頃に心酔したマルクス経済理論は、ソ連の崩壊で完全に葬り去られた。「マルクス経済理論にも見るべき点がある」という人もいるが、それが論理展開のことを言うのであれば他にいくらでもあるし、弱者の視点であるなら、残念ながらその出発点には“歪み”がある。だいたい、戦後の世界において、マルクス経済理論に出る幕はなかったのだ。
経済政策の基盤は、ケインズ経済学にあった。だけど、大前さんは、「もはや、ケインズ的な経済学はおわった」と言い放つのだ。当然のように、ケインズ経済理論を土台に組み立てられたアベノミクスは、大前さんの攻撃の対象となる。
だけど、安倍政権の高支持率は、「経済は上向いている」という庶民の感覚に支えられている。私もそうだが、息子の就職の時期にあたり、アベノミクスの実効性は実感している。ただし、言葉のとおりに進んでいない実情に、支持と同じくらいに大きな不安を感じながらではあるが
大前さんの話には、理屈の上で唸らされる部分が多いんだ。アベノミクスに感じる不安を、大前さんはしっかりとついている。ケインズ的政策を土台とするアベノミクスに対する強い警鐘となるだろう。
決して暗い話ばかりが書かれているんじゃない。経済のことは、アベノミクスにおまかせ、大前さんにおまかせじゃなくて、良質な報道をしっかり抑えていくことでしょうね。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
大学はその手の学生の巣窟で、自治館の運営の中核は、それにふさわしい名称を持った団体の方々が取り仕切っていた。なにかとその自治館を間借りしている立場で、あの飛行場が気に食わないとか、あの港に気に入らない船がやってくるとかで、駆り出されることもあった。
学生に比べれば遥かに良識をお持ちの先生方も、ハウス“キン経”チキンカレーに対抗する立場で、世のくつがえる時を待ちわびる、どこか《魔太郎がくる!》を思わせる方々。最後の審判のあとは、あちら側で美味しい思いができると信じていたんでしょう。
そのお立場はソ連崩壊で砕け散り、哀れな余生を送るしかないという運命だったはず。ところがどっこい、多くの方々は、“進歩主義”であるとか、“リベラル”であるとか、なんだか昔よりもスマートな装いで、いぜんとして「先生」と呼ばれる毎日を送っている。
「そのしぶとさはゴキブリ以上」なんて言い方はちょっとひどいと思うけど、たしかにそのしぶとさは見事なほど。そういうのが目につくからこそ、日本人は“潔さ”を尊ぶんだろうな。
『武器としての経済学』 大前研一 小学館 ¥ 1,512 経営コンサルタントの大前研一が、25の視点から「武器として使える経済学」を指南する |
高校生や大学生にとって、就職に夢をかけられないというのは、大変な悲劇だ。その大変悲劇的な状況が、けっこう長い間続いた。“長く続いた”ってことがまた、日本の悲劇だった。それが目に見えて上向いたのは4年前だ。今年は今まで以上の売り手市場で、高校生も大学生も、これまで夢見た将来像をそのまま就職活動の上に乗せているだろう。
そのやり方は、いくらでも文句をつける余地があるだろうが、これがアベノミクスの成果であることは疑いない。
そのあたり、大前さんの問題提起は、「そこまで就職の状況が良いのに、景気が良くならないか」という点に向けられる。
若い頃に心酔したマルクス経済理論は、ソ連の崩壊で完全に葬り去られた。「マルクス経済理論にも見るべき点がある」という人もいるが、それが論理展開のことを言うのであれば他にいくらでもあるし、弱者の視点であるなら、残念ながらその出発点には“歪み”がある。だいたい、戦後の世界において、マルクス経済理論に出る幕はなかったのだ。
経済政策の基盤は、ケインズ経済学にあった。だけど、大前さんは、「もはや、ケインズ的な経済学はおわった」と言い放つのだ。当然のように、ケインズ経済理論を土台に組み立てられたアベノミクスは、大前さんの攻撃の対象となる。
だけど、安倍政権の高支持率は、「経済は上向いている」という庶民の感覚に支えられている。私もそうだが、息子の就職の時期にあたり、アベノミクスの実効性は実感している。ただし、言葉のとおりに進んでいない実情に、支持と同じくらいに大きな不安を感じながらではあるが
大前さんの話には、理屈の上で唸らされる部分が多いんだ。アベノミクスに感じる不安を、大前さんはしっかりとついている。ケインズ的政策を土台とするアベノミクスに対する強い警鐘となるだろう。
決して暗い話ばかりが書かれているんじゃない。経済のことは、アベノミクスにおまかせ、大前さんにおまかせじゃなくて、良質な報道をしっかり抑えていくことでしょうね。


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