めんどくせぇことばかり 文化論『戦争と平和』 百田尚樹
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文化論『戦争と平和』 百田尚樹

第一章の《ゼロ戦とグラマンF4Fワイルドキャットの比較は、さながら日米比較文化論。

「なぜ日本が負け、アメリカが勝ったのか」・・・これはちっとも難しい話じゃなかった。アメリカはあらゆる局面において日本に勝つことを最大の目標として戦い、日本はそうしなかったからだ。

この戦争は制海権をめぐる戦争である。制海権を握るには空を制す時代に入っていた。そのことにいち早く気が付いたのは日本だ。ゼロ戦を設計した堀越二郎は、海軍の求める理想的なスピード性能と旋回能力を求めて、美しいカーブからなる機体を持つ戦闘機を作り上げた。能力からは、完全にグラマンF4Fを上回った。にもかかわらず日本は負けた。

ゼロ戦に対してグラマンF4Fは直線ばかりで設計された機体だった。もちろん、ある一定のスピード性能と旋回能力はクリアしている。しかし、その点で理想を追い求めたものではなかった。

なぜか。それは、ゼロ戦と同じように理想を求めれば、グラマンF4Fは量産できなくなるからだった。ゼロ戦はグラマンF4Fに比べ、作り上げるのに時間がかかった。

作りやすさを重視したのだ。なぜ、アメリカはつくりやすさを重視したのか。その方が、戦争に勝つ確率が上がるからだ。たしかに制海権を握るためにはそれを制することが必要である。空を制するためには、戦闘機の能力向上は非常に重要である。しかし、日本との戦争に勝つために重要なことは、戦闘機の能力向上だけではないということだ。

百田さんは、元来、日本人は戦争に向かないと言う。たしかにその通りだと思う。しかし、戦闘には向かなくても、日本軍の戦闘能力は高い。アメリカも、それを分かっているからこそ、油断せず、日本との戦争に勝てる戦い方に徹した。・・・そういうことだな。


『戦争と平和』    百田尚樹

新潮社  ¥ 821

日本は絶対に戦争をしてはいけない。日本人ほど、戦争に向かない民族はいないのだから
第一章  ゼロ戦とグラマン
第二章  『永遠の0』は戦争賛美小説か
第三章  護憲派に告ぐ

米軍は兵士の命を大切にした。日本は逆っていうよなことを言われるが、そう単純なこととも思わない。幕末以降の亡国の脅威の中で、兵士の命を大切にする余裕さえ失われていたということだろうし、明治維新の過程もさまざまに影響していると思う。でも、米軍のように兵士の命を大切にできなかったのは事実。

グラマンは戦闘能力を犠牲にしても防御能力を上げた。ゼロ戦は、パイロットの命を守るための背中の鉄板がスカスカだった。それに対してグラマンの鉄板は7.7ミリ機銃を跳ね返したという。仮に期待が火を噴いても、脱出すれば米軍が全力で救出した。パイロットの限らず、死地から生還した兵士たちの経験は、全軍で共有して次の戦闘に生かされた。

米軍は、「日本に勝つ」という大目標を達成するために、そこに至る最良の方法を常に模索し続けた。仮に個々の戦闘で日本に譲ることがあったとしても、最終的に日本を敗北に追い込むために、例えば戦闘機の機銃を12.7ミリ機銃に統一して補給に余裕を持たせた。ゼロ戦は7.7ミリ、13.2ミリ、20ミリの3つの機銃を装備していたんだそうだ。どれか一つ滞れば、不完全な状態になるわけだ。

米軍は日本を追い込むために、例えば日本の油槽船を潜水艦で次々に沈めていった。インドネシアのオランダ軍をやっつけて石油を手に入れるところから始まった戦争なのに、日本は油槽船に護衛一つつけなかったって。内務省が海軍に護衛を依頼すると、海軍はこう言って断ったそうだ。

「我々の艦隊はアメリカの大艦隊と決戦して大勝利するためにあるのであって、油槽船のガードマンをやるためではない」

・・・これじゃ、勝てっこない。

アメリカは大局を踏まえて個々の対応を臨機応変に変えた。時間の経過とともに、日本を敗北させるためのより効果的な方法が洗練されていった。それに対し日本は、個々の領分にこだわって対局をおろそかにした。アメリカを敗北に追い込むことよりも、個々の領分を優先した。

「負けたいのか!」と叫びたくなる。

高い戦闘能力は、戦いに勝利するための有効な手段の一つに過ぎない。当時の日本には、戦いに勝つためには他のすべてを犠牲にすることも辞さないという意志に欠けていた。




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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