めんどくせぇことばかり 『山の怪談』 岡本綺堂
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『山の怪談』 岡本綺堂

この間、たまたま、岡本綺堂の『飛騨の怪談』っていう本を読んでいて、この本が目に留まった。いい巡り合わせだ。とてもいい本に出合えた。

なんで読んだのか忘れたけど、読んだその時、心底納得した話がある。「山を一人で歩いていても、何の恐怖も感じない。だけど、妙な人の気配が入り混じると、突然抑えようのない恐怖心が沸き上がる」というのだが、本当に、私もそう思う。

私の登山経験には長い中断期間がある。そのため、いい歳をしているわりに、山に登っていた期間はそう長いわけでもない。長いわけではないが、けっこう濃く山に浸ってた時期があるので、なんどか不思議な体験をしたことがある。ただ、抑えがたい恐怖心にわれを失ったってのは、あの時と、あの時くらいかな。

夜が多い。当たり前か。山の夜道でザックを引っ張るのはやめてほしい。いつまでもしつこく、遠くから声をかけて来るのはやめてほしい。だけど本当に怖かったのは、昼間の薄暗い森の中だった。不思議なものは、なにも見えなかった。不思議な音も、なにも聞こえなかった。でも、歩いてる私のすぐ後ろにいる。なにかいる。そう、私が感じてしまったときが、一番怖かった。われを失って走ったようで、気がついたらあちこち擦りむいて、林道に出たところでへたり込んでいた。


『山の怪談』    岡本綺堂

河出書房新社  ¥ 1,296

山の怪談アンソロジー。山人の怪異民俗、文人の心霊譚、岳人の遭難・神秘体験。
Ⅰ 山の怪異の民俗
入らず山                                柳田国男 
山の怪異                              高橋文太郎  
含満考ーーバケモノの話                        高須 茂
天狗は山人也                             西岡一雄
貉の怪異                                    小池直太郎
Ⅱ 文人・林人の心霊の話
幽霊滝の伝説                       小泉八雲(田部隆次・訳)
兄妹の魂                                       岡本綺堂
焚火                                            志賀直哉
天井の怪                                        平山蘆江
天狗笑い                                      豊島与志雄
山女                                            加藤博二
丹沢の七不思議                           ハンス・シュトルテ
行ってはいけない土地                          工藤美代子
Ⅲ 岳人の怪奇・神秘体験
山の怪談                                      深田久弥
岳妖ーー本当にあった話である                   上田哲農
岩塔ヶ原                                       西丸震哉
死者ーー霊魂の歩み                            古川純一
山小屋の秋                                      青柳 健
神さんや物の怪や芝ヤンの霊がすんでいる山の中   高田直樹
縦走路の女                                    沢野ひとし

この本の話は、どれもいいよ。

『含満考ーバケモノの話』が1976年。『丹沢の七不思議』が1983年。『行ってはいけない土地』が1997年。『岩塔の原』1990年。『山小屋の秋』が1971年。『神さんや芝ヤンがすんでいる山の中』が1983年。『縦走路の女』が1994年。

今、あげたのは、比較的新しく書かれた話。これで新しいんだから、古いのは古い。新しいからってどうのという気はないんだけど、それ以前の“山の怪談”って、あえて怖がらせようとしてないよね。なんか、ごく淡々と、誰でもが経験するように、私の経験したことが書かれているように思う。“怪談”と身構えることもなく、淡々と日常の一コマが切り取られているだけのような。それだけに、新しい話にはない“味”がある。

ちょっと前まで、それらはそばにいたんだな。まもなく還暦を迎える私だけど、私が子供の頃、生まれ故郷の秩父の夜は、本当に真っ暗だった。私には、夜、外の物置に出ていく母が、まったく理解できなかった。どうして怖くないのか。

父に怒られて、真っ暗な外に連れ出されそうになった時は、あまりの恐ろしさにつかめるものはなんでもつかんで抵抗した。体全体で家の中に潜り込もうと、太い父の腕につかまれながら、もがきにもがいた。だって、外には何かいたもん。祖母や母は、何かを感じる人だった。私は、自分がその力を受け継いでしまったと感じていたから、とにかく怖かった。
中に、工藤美代子さんの名前を見つけてびっくりした。この人も、感じる人なのか。『関東大震災 朝鮮人虐殺の真実』を書いた人だ。ずいぶん前の本だけど、非常に価値の高い本だ。

工藤さんが“感じる人”とはびっくりだな。

そんな思いがけない出会いがあったこの本だが、この本が読めて、とてもよかった。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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