めんどくせぇことばかり 湯川さん・後藤さん『ブラック・フラッグス』 ジョビー・ウォリック
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湯川さん・後藤さん『ブラック・フラッグス』 ジョビー・ウォリック

2015年初頭でしたね。「イスラム国」に拉致された治安・警備コンサルタントの湯川遥菜さんと救出に向かい囚われの身となったジャーナリストの後藤健二さんが、あの濃いオレンジ色の囚人服みたいのを着せられて、身代金を要求するビデオのためにカメラの前でポーズを取らされていた。

繰り返し繰り返し、二人を引き出してなぶった上に、ジハーディ・ジョンがカメラに向けていたあのナイフは、最後には二人ののどを切り裂いた。

二人は日本人。他の犠牲者たちと違い、まったく異なる世界の出身。ムスリムの数も少なく、その少ないムスリムも差別のない国と称賛する日本人だった。中東の罪もない人々を救うための支援をしたことはあっても、植民地主義的介入をしたことはない。中東の軍事作戦に武器や軍隊を提供したこともない。そんな国から来た二人の日本人ののどを、「イスラム国」のナイフは切り裂いた。

・・・この本の冒頭、《日本語版への序文》で、著者がそのことに触れているのだ。

自衛隊のイラク復興支援が始まった2003年11月、復興支援開始を翌月に控えて現地入りしていた二人の日本人外交官が殺された。奥克彦駐英参事官と井ノ上正盛駐イラク三等書記官である。さらに、イラク復興支援から1年が経とうとしていた2004年10月、日本から来たバックパッカーの青年香田証生さんが殺された。

いずれも、アブー・ムサブ・ア-ザカルウィをリーダーとするテロリスト集団の犯行らしい。その組織は、その後の成り行きで指導者も編成もかわり、名称も「イスラム国」と名のるようになった。「イスラム国」が湯川さんと後藤さんを人質にして要求したのは、イラクの難民救済のための日本の財政支援をやめさせることだった。基本姿勢は同じで、アメリカの孤立を狙うものだ。2004年、香田証生さんの事件の時、総理の小泉さんからは及び腰なところが感じられたが、2015年の安倍さんの態度には多少の変化が感じられた。国民の意識を背景にしたものだろう。

著者は、「イスラム国」を“ザカルウィの常軌を逸した子孫”と呼ぶ。


『ブラック・フラッグス』    ジョビー・ウォリック

白水社  ¥ 2,484

「イラクのアル・カイーダ」の創設者ザカルウィから、イスラム国の指導者バグダディまで
プロローグ─ヨルダンの首都アンマン 二〇一五年二月三日
第1部 ザルカウィの台頭
 1 「目だけで人を動かすことができる男」
 2 「これぞリーダーという姿だった」
 3 「厄介者は必ず戻ってくる」
 4 「訓練のときは終わった」
 5 「アル=カーイダとザルカウィのために」
 6 「必ず戦争になるぞ」
 7 「名声はアラブ中に轟くことになる」
第2部 イラク
 8 「もはや勝利ではない」
 9 「武装反乱が起きていると言いたいんだな?」
 10 「胸くそ悪い戦い、それがわれらのねらいだ」
 11 「アル=カーイダのどんな仕業も及ばない」
 12 虐殺者たちの長老

まだ、上巻の読みはじめなんだけど、冒頭の《日本語版への序文》で湯川さん、後藤さんの名前を見て、あの時の思いがよみがえった。さらに、香田証生さんや奥克彦駐英参事官と井ノ上正盛駐イラク三等書記官の名前に触れて、いたたまれない思いで書き始めてしまった。

2003年、2004年の、香田証生さんや奥克彦駐英参事官と井ノ上正盛駐イラク三等書記官殺害の背景には、間違いなくザカルウィを指導者とするテロリスト集団が存在するようだ。

2001年のアメリカ同時多発テロに端を発して、アメリカはアフガニスタンへ、イラクへと積極介入していった。それだけ考えても、失策に失策を上塗りしてきたアメリカの対イスラム策であったが、同時多発テロをまねいたこと自体が失策によるものであり、さらに失策はその後も続き、オバマ政権で頂点に達した感がある。

そのたびに、アメリカは新たな敵対者を生み出してきた。ウサマ・ビンラディン、ザカルウィ、バグダディと続く系譜。以前、『倒壊する巨塔』と言う長編のルポルタージュで、ウサマ・ビンラディンの登場の背景を知ることができた。この『ブラック・フラッグス』では、さらにザカルウィ、バグダディ登場の背景を知ることができそうだ。

《日本語版への序文》だけで興奮している場合じゃないね。

あっ、そうそう。ジハーディ・ジョンに殺された後藤さんは、「なぜ取材のために尋常ではない、極端に危ういことまでするのか」と問われて、次のように答えたそうだ。

「面と向かって話をしなければならないからです。そうする必要があると私は思っています」




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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