めんどくせぇことばかり ウクライナから北方領土『民族問題』 佐藤優

ウクライナから北方領土『民族問題』 佐藤優

ソ連の崩壊で東ヨーロッパという外堀が埋められちゃったからね。独立したとはいえ、いや独立したからこそ、“ロシア”にとってウクライナの重要性は、いよいよ高まったわけだな。東欧諸国が西向きになって、バルト三国は基本的にロシア嫌いってことになれば、何が何でも手放すわけにいかないのがベラルーシとウクライナということになる。

ベラルーシって言う国は、昔は“白ロシア”と習った。モンゴル人に支配された時代でも、モンゴル人の乗る馬は湿地帯の広がる、後の“白ロシア”には入っていけなかった。ロシアがモンゴル人の血でけがされていっても、それらの地域では白人の純血が守られた。俺たちは黄色人種後に汚されたロシアの連中とは違うってことで“白ロシア”を名乗るって、嫌な連中だな。

それに対してウクライナの語源はというと、「クライ」は囲い。「ウ」は傍。ウクライナで囲いの傍。なんとなく「向こうの方」ってような意味なんだな。つまりは、“田舎”、あるいは“辺境”ってこと。

人口5300万の内、ロシア人が1100万人もいる。もちろんロシア国境のウクライナ東部に多い。その地域では、住民のほとんどはロシア語を喋っていて、自分がウクライナ人であるかロシア人であるか意識する必要もない状況だったという。

ただ、ウクライナ人には、ロシア人とは違う歴史観がある。

ソ連時代、ロシアに組み込まれたウクライナ東部は農業集団化でのうちを取り上げられ、その抵抗に対するスターリンの嫌がらせで飢餓が400万人を超える状態となった。1930年代のウクライナの肉屋の店先には人間の肉がぶら下げられていたという。そこにヒトラーのドイツ軍が入ってきて、ウクライナ人部隊が結成される。その数30万。だけどソ連軍には200万人のウクライナ人がいて、ウクライナ人同士の戦いもあったらしい。戦後は西ウクライナにもソ連軍が入ってくる。最後までソ連に下ることを良しとしない人々は、カナダに移民したという。

2014年、ソチ五輪のさなか、ウクライナ民族派が武力クーデターに出て権力を握る。五輪期間中なら、ロシアと言えども介入はできないだろうと踏んでのことだった。権力を握った民族派はロシア語を公用語から外すと宣言した。翌日には撤回されるのだが、この宣言がウクライナ内戦の引き金になった。ロシア語が公用語から外されれば、東ウクライナでロシア語しかしゃべれない公務員はみんな解雇されることになるからだ。

東ウクライナの反発に、民族派のトゥルチノフ大統領代行は「行政機関を占拠しているのはテロリスト」と決めつけて、事もあろうに空爆をかけた。東ウクライナの人々は、これを持って武装を始めた。手を貸したのはロシアである。ロシア軍も協力した。しかし、全員が義勇兵という形を取らせていた。


『民族問題』    佐藤優

文春新書  ¥ 896

佐藤優の集中講座 「民族と国家は現代日本人の必修科目だ」
第一講 なぜ日本人は民族問題がわからないのか
応用問題 スコットランド独立運動を沖縄の目で見る
第二講 民族問題の専門家スターリン
第三講 「民族」は作られるか
補講 シュライエルマッハー ナショナリズムと目に見えない世界
第四講 ゲルナー『民族とナショナリズム』の核心
応用問題 ヘイト本の構造
第五講 民族理論でウクライナ問題を読み解く
応用問題 エスノクレンジング
第六講 民族理論で沖縄問題を読み解く

そうか。ロシアは国境線が長いのか。北側は北極海に面しているとは言っても、アジアからヨーロッパまで、ほぼ、ユーラシア大陸を縦断する国境線を持ってるんだから、長すぎるよね。まったく、遠慮ってものがない。

そういう遠慮のない国だから、国境線の向こう側の国と、当たり前に行けば仲良くなれるはずがない。遠慮のない国だから、それを自分のせいとは思わない。だから、国境の向こうの国とは永遠に仲良くなれない。ロシアにとって外国とは、敵か、支配下国かのいずれかということになる。

ロシアとしても、のべつ幕なし国境争いをしているわけにもいかないから、出来得る限り、国境線の向こう側には支配下国を衛星化しておきたい。ウクライナ問題ってのも、本質的にはその辺に原因がある。

北方領土問題を考える時、この認識は極めて重要だと、著者の佐藤さんはいう。

歯舞・色丹・国後の三島返還論はそういう意味があったのか。面積で分けるっていうのは日本人なら受け入れやすいけど、そうすると択捉島に国境線が引かれることになるわけで、国境線の向こうに敵を抱えることを嫌がるロシア相手にはより困難な解決法ということになる。陸上の国境をロシアと共有しないことは、日本の安全保障から言っても重要かもね。




にほんブログ村 政治ブログへ 一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
関連記事

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

ありがとうございました



「《めんどくせぇことばかり》は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」

リンク

よくお越し下さいました

イーグルス16

Author:イーグルス16

息も絶え絶えです、ぜひ応援してください
人気ブログランキングへ にほんブログ村 政治ブログへ


冗談とフンドシはまたにしろ
芋頭でも頭は頭
茨も花持つ

日本語は、もっともっと深かった
これから出る本




















































































直近3ヶ月当ブログ内人気図書 




























































カウンター
カテゴリ
ブロとも一覧
アジシオ次郎の時事原論
はりこのはやしや 
ハシビロコウ
素足のアイドル達
うさぎ屋の四方山話
わくわく株式投資
プロモデラー林哲平のジャンクロボット創作ブログ『ケルバーダイン』
大好き!グラビアアイドル!
伊織のブログ
Re:BAD TASTE♥
QWERT 5w1h
「伝わる技術」オトデザイナーズ・坂本真一
歌と知恵でハッピーライフ^^
こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
















































検索フォーム
RSSリンクの表示
最新記事
応援して下さい