めんどくせぇことばかり 『流』 東山彰良

『流』 東山彰良

小説を読むのはいいですね。無心になれます。

この本を読んだのは、たまたま。たまたまとは言っても、2015年の直木賞ですからね。たまたま目についたこと自体、名作だったからなんでしょう。

1895年から1945年までの間、台湾は日本でした。いろいろありましたが、日本はそこを、のちに台湾と呼ばれるにふさわしい場所にしたわけです。そして日本が戦争に負け、台湾を去らなければならくなる直前まで、そこは日本であり、そこに住む人々は日本国籍でした。そこに薄汚れた綿入れに草履履き、天秤棒に鍋釜下げたような国民党軍が入ってくることになります。

台湾の人々は、「犬が去って、豚が来た」と嘆いたそうです。

この間まで日本国籍だった台湾の本省人は、みすぼらしい姿で大陸から入ってきた外省人に組み敷かれる形で新しい時代に突入したわけですね。蒋介石は恐怖政治を行い、社会のあらゆる局面で国民党が台湾を支配しました。日本当地の中で育った知識階層は、目の敵にされ、二・二八事件では数万人が処刑され、沈黙を強いられています。台湾人に対する弾圧は、蒋介石の跡を継いだ蒋経国の時代になっても続き、彼の死の直前まで継続されたわけですね。

という流れの中で、“台湾の人が書いた戦争から現代までの話”と言われて、私はついつい台湾人の立場からの戦後史ってのが頭に先入しました。でも全く違いましたね。東山彰良さんという台湾国籍の作者さんは、いわば外省人三世なわけですね。一世のおじいさんは、台湾人から「犬が去って、豚が来た」と嘆かれた“豚”の方。つまり抗日の戦士だったわけです。

だから、“台湾の人が書いた戦争から現代までの話”も、〈外省人から見た〉“話”になるわけですね。


『流』    東山彰良

講談社文庫  ¥ 950

内戦で敗れ、台湾に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で?
第一章 偉大なる総統と祖父の死
第二章 高校を退学になる
第三章 お狐様のこと
第四章 火の鳥に乗って幽霊と遭遇する
第五章 彼女なりのメッセージ
第六章 美しい歌
第七章 受験の失敗と初恋について
第八章 十九歳的厄災
第九章 ダンスはうまく踊れない
第十章 軍魂部隊での二年間
第十一章 激しい失意
第十二章 恋も二度目なら
第十三章 風に乗っても入れるけど、牛が引っ張っても出られない場所
第十四章 大陸の土の下から


この『流』というお話は、支那事変の最中から1980年代後半までという時間の流れの中で、台湾の外省人の少年が、国民党軍兵士として台湾の渡ってきた祖父の行状と不可解な死に振り回されながら、やがてそれらと向き合うことで、大人になっていく青春小説です。

そうだね。私は1960年の生まれで、戦争が終わって15年目の生まれなんだけど、台湾はそのあとひと悶着しているから、・・・というか、いまだにひと悶着に決着がついているわけじゃないですからね。終戦から15年、物心がついたころには20年たってるわけだけど、それでもいろいろな気配が残ってたわけですよ。直接の体験者が、まだまだゴロゴロ生きてたし。

なにがなんだか分からないような混乱の中で、生きぬくことを最優先にしてきた人たちが周りにいましたからね。根掘り葉掘り聞いちゃいけないことは感じ取らなければいけなかったし、知っていても知らないふりをすることは、とても大事なことだった。耳には入って来ても、聞いてないふりを通すとかね。

台湾は、今でもそういう状況にあるんでしょうね。人の“存在”そのものに関わる部分じゃないですか、そういうことって。アイデンティティっていうんですか。自分は何者かってことね。それを考えることって、そのまま物語ですよね。

二・二八事件なんて、数万人が処刑されたって言っても、きっとなにがなんだかさっぱりわからない状況にあるんでしょう。そのあとも本省人への弾圧は続いたそうだしね。本来、死者は、思いのほか雄弁ですからね。

じつは私にも、昨年、今まで知らなかった新しい事実に触れる機会がありました。父と母のことです。父も母も、なにも言わずに死んだけど、記憶の端々にそれを匂わせる父の言葉や母の言葉があるんですよね。私の両親も、最近、とみに雄弁です。




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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