めんどくせぇことばかり 貧乏神『生活のなかの神道』 ひろさちや

貧乏神『生活のなかの神道』 ひろさちや

ある男のもとに、絶世の美女が訪ねて来て言うんだそうです。「私は吉祥天です。あなたに福徳を授けに来ました。」男は喜んで、彼女を家に招き入れたそうです。ところがもう一人、彼女と一緒に家に入ろうとする女がいるんですね。こちらは醜く、見るからに貧乏神らしい。男が問いただすと「私の名は黒闇天、私の行くところ必ず災厄が訪れる。」やはり、貧乏神。男が追い払おうとすると、「さっきの吉祥天は私の姉。私たちはいつも一緒。」男は結局、二人とも出て行ってもらうことにしたそうです。

これはこの本の冒頭に出てくる話です。なんでも、“涅槃経”に出てくる話だそうです。

《良い事と悪い事》って、一体何なんでしょうね。どうやら、この涅槃経の寓話からも、良い事と悪い事って同居しているみたいですね。吉祥天のいる処には黒闇天がいて、黒闇天のいる処には吉祥天がいる。つまり、おんなじことが起こっても、吉祥天の目が出ることもあれば、黒闇天の目が出る場合もあるということ。

面白い考え方ですね。
浅田次郎の本に『憑神』ってのがありましたね。
時は幕末、処は江戸。貧乏御家人の別所彦四郎は、文武に秀でながら出世の道をしくじり、夜鳴き蕎麦一杯の小遣いもままならない。ある夜、酔いにまかせて小さな祠に神頼みをしてみると、霊験あらたかにも神様があらわれた。だが、この神様は、神は神でも、なんと貧乏神だった! とことん運に見放されながらも懸命に生きる男の姿は、抱腹絶倒にして、やがては感涙必至。


最初に取り憑かれた貧乏神が、そのうち疫病神にグレードアップして、最後は死神に取り憑かれるっていうんだから、まったくこんな不運な男もいないでしょうね。

このへんの話にしてもそうだけど、日本人はそれを涅槃経のような高尚な人生訓に仕立て上げようという気はないんですね。涅槃経の吉祥天と黒闇天の話は、どこか「人間万事塞翁が馬」を連想させますね。

日本では善い事と悪いことは同居しているわけではなくて、そこから何らかの人生訓をひねり出そうとはしていないようです。ただ、朝田次郎の『憑神』のような話が生まれるには、やはり、貧乏神や疫病神と、何だか変に面白いかかわり方を作り上げてきた日本人の姿があったからこそでしょうね。


『生活のなかの神道』    ひろさちや

春秋社  ¥ 1,863

福の神から妖怪、ご先祖様まで、日本にはたくさんの神さまがいる
1 生活の神道v.s.人生の仏教
2 「空気」のようなカミ
3 名前がついた神
4 神話の中の神々
5 ご先祖様と言う神
6 悲しき妖怪たち
7 福の神と貧乏神
8 神さまとの付き合い方
9 神社のいろいろ
10 神道は「やまと教」だ!


貧乏神とのおかしな関わり方が書かれていたので紹介しておきますね。江戸後期の南町奉行まで務めた幕臣の根岸鎮衛(やすもり)という方の随筆に『耳袋』というのがあるんだそうです。その中に書かれている話だそうです。
江戸の小石川に住む旗本が、ある年の暮れに貧乏神を画像に描いて、お神酒や洗米などをささげて祈ります。
「私はこの数年貧乏なので、思うことが叶わないのも仕方がありませんが、一年中貧しい代わりに不幸ってこともありません。ひたすら尊神がお守りくださるのでありましょう。数代の間、私たちをお守りくださる神様ですので、どうかひとつの社を建立して尊神を崇敬いたしますゆえ、少しは貧乏をのがれて福分に変わりますようにお守りください」

その結果、その旗本がご利益を得て、少しは余裕も生まれたっていう話なんですね。貧乏を貧乏神のせいにしていやがったりせず、貧乏神としてそのまま拝んで、貧乏神の方を逆に福徳の神に変えちゃうわけですね。これはすごいです。人間の方が、神さまを変えちゃうわけですからね。

『憑神』でもそうでしたよね。貧乏神でも疫病神でも、それこそ死神とも、それに抗おうとするのではなくて、そういうものとして拝んじゃうわけですね。そういうところが面白かったですね。





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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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