めんどくせぇことばかり 『大伴氏の正体』 関裕二
FC2ブログ

『大伴氏の正体』 関裕二

《海行かば水浸く屍山行かば草生す屍王の辺にこそ死なめ顧みはせじ》

奈良時代の、東北から日本初の黄金の発見を、聖武天皇は廬舎那仏から下賜されたものと感謝し宣命を上げさせた。その宣命に応えて、その一節を使って大伴氏と天皇家の関係をうたい上げたのが上記の歌だそうです。

大伴氏は天皇家を守り続けた一族なんですね。

氏姓制度っていうのは、のちの律令なんかと違って理屈に沿って作られたんじゃなくて、経験の積み重ねで成ったもののようで、深いところを知ると現代とのつながりを見つけられて、けっこうおもしろかったりします。

たとえば大伴氏。大伴氏は連姓で、連姓の多くは職掌とのかかわりのある名を持つらしいんですね。大伴の“伴”は、世襲的な職業で代々朝廷に奉仕する官人を指しているんですね。その“大”なるものですから、大伴氏は“伴”を束ねる存在、とくに軍事に関わる伴、戦う集団を率いたいたようです。

古代、山門を討ったヤマトのトヨは、ヤマトに裏切られて日向に逃れた。これが天孫降臨の真相というのが、あまりにもかいつまみ過ぎだけど、著者の考えるところ。その日向に落ち延びたトヨを支えたのが大伴氏だったと。

・・・、だとすると大伴氏は・・・?

『大伴氏の正体』    関裕二

河出書房新社  1,836

祭祀王の神武は祟る神の末裔であり、その鬼を支え続けた氏族こそ、大伴氏だった
第一章  誇り高き大伴氏
第二章  大伴氏と天皇家 強い絆の理由
第三章  大伴氏と雄略天皇
第四章  長屋王の変と大伴旅人
第五章  大伴家持と早良親王

大伴家持が編纂したとされる万葉集。一般的に万葉集は文学の分野で論評され、平安貴族たちの作った教養を見せつけるための和歌集である古今和歌集に集められた歌とは意味が違うし、重みが、・・・違いますよね。
大伴氏は悲劇的な一族だ。七世紀後半以降、藤原氏が一党独裁体制を固めていくが、ほとんどの旧豪族が追い落とされ、没落していく中、大伴氏は最後に残った名門一族となってしまった。仲間を失い孤立した大伴氏の戦いは壮絶で、結末は無残だった。藤原氏の攻撃は執拗で、容赦なく、手口は卑劣だった。
本書p1

《日本書紀》編纂時の権力者は中臣鎌足の息子である藤原不比等。大宝律令の制定、平城京遷都と並んで歴史書編纂事業は、藤原不比等の主導で進められたはずである。だから、完成した《日本書紀》は、「天皇の正当性を証明するための正史」の体を装った「藤原氏の正義を後世に伝える歴史書」と言っていいでしょう。

つまり、藤原氏の行った政治上“執拗で、容赦なく、卑劣な”行いを隠し、真実の歴史を捏造するために編纂されたものであると。

その藤原氏によって貶められ、葬り去られてきた者たちが、魂の底からの怒りを振り絞るようにして作った歌を、大伴家持は集めた。

その大伴家持は、最後は東北に遣わされて、東北蝦夷征討に従事し、任地で亡くなるんですね。このあたり、まさに“執拗で、容赦なく、卑劣な”藤原氏の本領発揮です。

蝦夷征討が本格化するのは709年。「何と立派な平城京」。平城京への遷都が710年ですから、藤原不比等のもとで蝦夷征討が始められているんですね。

東国の蝦夷征討に藤原氏の政敵である大伴氏などの旧勢力を派遣することで、両方の勢力を一気に弱めるという“執拗で、容赦なく、卑劣な”手口ですね。

でも、当初、蝦夷征討はなかなか進んでいないんですね。大伴氏ら東北に派遣された将軍たちに、本気で蝦夷を叩き伏せようなんて言う気がなかったからでしょうね。

伊治呰麻呂は怨みを隠して朝廷側につき蝦夷たちを慰撫していたものの、ついに耐えかねて反乱を起こす。しかしその時、大伴真綱と石川浄足を逃がしているんですね。《石川》は蘇我ですから、大伴も蘇我も、本来、藤原の敵対勢力ですね。

東北蝦夷征討っていうのは、藤原氏が権力基盤を固めるための、仕上げの一手だったんですね。




にほんブログ村 政治ブログへ 一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
関連記事

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

ありがとうございました



「《めんどくせぇことばかり》は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」
よくお越し下さいました

イーグルス16

Author:イーグルス16

息も絶え絶えです、ぜひ応援してください


現代とはなぜこんなにも棲みにくいのか。
前近代から近現代へと変貌し続ける世相の本質をつかみ生き方の支柱を示す。
カウンター
カテゴリ
こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
最新記事