めんどくせぇことばかり 『遺訓』 佐藤賢一
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『遺訓』 佐藤賢一

前に、『新徴組』を読んだ時に、沖田総司の義理の兄にあたる沖田林太郎が実在の人物であるということは、何とか知ってました。でも、この『遺訓』に登場する沖田芳次郎まで実在の人物とはね。実際、新徴組の隊員として庄内藩の側で戊辰戦争を戦っているようだし、剣の腕もかなりのものだったとか・・・。それから、明治に入ってからも鶴岡に残り、松ヶ丘の開墾にも関与していたらしい。

それでも、庄内藩、鶴岡でのありようも、“・・・らしい”の域を出るものではないようで、西南の役とのかかわりとなるとさっぱり。

結局、空白の多い沖田芳次郎という男を使うことで、著者の佐藤賢一さんは、明治維新のありよう、明治6年の政変の本質、それらに関わる西郷の思いをあらわしたかったということなんだろうと思います。
NHKの大河ドラマ『西郷どん』見てますか。私は今のところ、見てます。大河ドラマも、ここのところいたんだかいなかったんだか分からないような人物だったり、いたにはいたけど文献もなにもほとんどないような人物だったりが選出されて、まるで韓国の歴史ドラマ化されちゃってましたよね。

ただ面白く、視聴率だけ稼げばいいんなら、歴史上実在した人物を使うのはやめてほしいです。それは視聴率のために歴史をゆがめる行為ですね。

ただ、限りある資料をつなぎ合わせて、資料と資料の間の整合性は保ちながら、空白の部分を著者の歴史感覚と創造力で埋め合わせていく。そこに生み出される作品は著者の歴史観と人間性の表出であって、著者はその作品に全面的に責任を負わなくてはならない。あえてそこに史実と違うものを盛り込む場合、やはりそれなりの対応をする必要がある。

そうでなければ、韓国の歴史ドラマと一緒です。


『遺訓』    佐藤賢一

新潮社  ¥ 2,052

命もいらず、名もいらず――西郷隆盛が、すべてを賭けてこの国に遺したかったものとは
第一部  明治政府
第二部  西郷暗殺
第三部  西南の役


西郷隆盛だけじゃなく、明治維新を扱うだけでもそれなりの覚悟が必要ですね。『八重の桜』のあと、『軍師官兵衛』を挟んで『花燃ゆ』、これがひどかった。『八重の桜』とバランスとっただけですからね。ちょうど“明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業”の世界遺産リスト登録と時期が一緒で、右を見ても左を見ても安倍晋三首相におべんちゃら。忖度は、実はこのころから始まっていたんですね。

おべんちゃらだったら、大河ドラマって看板を替えてくれればいいのにね。「明治維新という時代と真っ向から取り組む」なんて、夢のまた夢。

中でも西郷隆盛は明治維新最大の謎と言っていい。

西郷隆盛は、坂本龍馬の暗殺に、何らかのかかわりを持った。西郷隆盛は、小御所会議で山内容堂を殺そうとした。西郷隆盛は、江戸市中焼き討ち、乱暴狼藉を働かせた。西郷隆盛は、赤報隊をうまく使い、罪を押し付けて皆殺しにした。西郷隆盛は、江戸幕府を倒すため、志ある若い連中をたくさん殺した。西郷隆盛は江戸幕府を倒すため、無辜の市民をたくさん悲しい目に合せた。そして、江戸幕府は倒れた。

次の瞬間、西郷隆盛は変わった。降伏を受け入れた庄内藩に対し、官軍を鶴岡城下に入れた西郷隆盛は、万事寛大をもってなすよう命令した。戦後の処分も軽く、会津藩のように他領への転封も免れた。庄内藩は藩を上げて西郷隆盛の処置に感激した。会津が苦しに比して、ことさら際立った。

通常、それだけで、一人の人間の中で処理できる感情ではない。西郷隆盛のような人間を推しはかろうとすること自体、私には無理な話だけど、佐藤賢一さんはそれに挑んだ。

明治六年の政変の顛末。西南戦争に、なぜあえて神輿となって担がれたのか。一蔵と吉之助の甘えと確執。

私は本を読むのが遅い人間なんですが、さすがに一晩で読みました。




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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