『日本は誰と戦ったのか』 江崎道朗
自分のやってること、考えていることが本質から遠く離れていることを、実はどこかで意識している。そちらに思考を向けようとすると、心のどこかで、なんらかの制御が働いてしまう。
それは言霊信仰であったり、御霊信仰であったりといった、日本人の宗教心に支えられたものであるだけに質が悪い。その宗教心ゆえに、日本人はその歴史の中で、たびたび過ちを犯してきた。幕末の黒船来校への対応、第二次世界大戦に向かう過程においても、戦争遂行においても、高度成長期の公害対策においても、バブル崩壊後の戦争遂行においてもさまざまな社会現象においても・・・。
この本にも書かれているように、フランクリン・ディラノ・ルーズベルトの進めた戦争政策を全肯定する立場のすべてを押し付けられて、戦後の日本社会はスタートを切った。アメリカでは、戦後間もなく、FDRの時代を検証する努力が始められたそうだ。その力は今、アメリカ全体を覆っているとはいい難いが、それなりの成果を上げつつある。
にもかかわらず日本では、嘘を押し付けられて、欧米のアジア侵略の債務まで押し付けられて、その上、固有の領土まで侵されているにもかかわらず、いまだにその嘘の海を漂っている。
第二次世界大戦に向かう過程を、戦争政策を批判する人たちも、実は囚われているんだ。レーニンがどんなに酷いやつだろうが、スターリンが何千万人殺そうが、ひとえにマルクス主義を信奉してやまない方々も、実は、言霊信仰、御霊信仰に囚われた、最も日本人らしい日本人であることを、その批判的精神を持って、自ら証明しているわけだ。
FDRはヤルタ秘密協定で、満州・樺太・千島列島・北朝鮮とそこに住む日本人をスターリンに売り渡した。さらに、それを実体化するやめ、ならず者のソ連軍を極東に向かわせる必要があった。そして、そのための時間を必要としていた。
「日本を降伏させてはならない」
布石は打ってあった。カサブランカ会談後の記者会見で、FDRは枢軸国に無条件降伏以外の降伏を許さないと言い放った。会談相手のウィンストン・チャーチルでさえ寝耳にミミズ、いえ、寝耳に水の話だった。
それでも日本は、有条件による“敗北”を模索した。しかし、間に合わなかった。スターリンは、まんまと欲しいものを手に入れた。
1930年代、1940年代、アメリカの政策決定の現場には、スターリンの意向をその政策に活かすために暗躍するエージェントたちが巣食っていた。FDRはそれに迎合したし、その死後を受け継いだトルーマンも、立場上隠蔽に加担した。
《アメリカの学会やマスコミは、アメリカを裏切った者たちを、あたかも無実の被害者であるかのようにかばい、むしろ英雄視してきました》
そりゃそうだ。アメリカの学会やマスコミで力を持つ者たちは、コミンテルンの策謀の利得者なんだから。そういった連中が歴史学会やアカデミズムを我がものとするアメリカ社会においては、彼らと国際政治や軍事専門家の間で歴史観が逆転してしまっているんだそうだ。
・・・日本よりは、ましだね。
最後に、著者のまとめを紹介しておきます。
日本が悪かったことが、やはりあるんだな。戦争にも、そしてインテリジェンスでも、日本は負けたということだな。負けてはいけないんだな。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
それは言霊信仰であったり、御霊信仰であったりといった、日本人の宗教心に支えられたものであるだけに質が悪い。その宗教心ゆえに、日本人はその歴史の中で、たびたび過ちを犯してきた。幕末の黒船来校への対応、第二次世界大戦に向かう過程においても、戦争遂行においても、高度成長期の公害対策においても、バブル崩壊後の戦争遂行においてもさまざまな社会現象においても・・・。
この本にも書かれているように、フランクリン・ディラノ・ルーズベルトの進めた戦争政策を全肯定する立場のすべてを押し付けられて、戦後の日本社会はスタートを切った。アメリカでは、戦後間もなく、FDRの時代を検証する努力が始められたそうだ。その力は今、アメリカ全体を覆っているとはいい難いが、それなりの成果を上げつつある。
にもかかわらず日本では、嘘を押し付けられて、欧米のアジア侵略の債務まで押し付けられて、その上、固有の領土まで侵されているにもかかわらず、いまだにその嘘の海を漂っている。
第二次世界大戦に向かう過程を、戦争政策を批判する人たちも、実は囚われているんだ。レーニンがどんなに酷いやつだろうが、スターリンが何千万人殺そうが、ひとえにマルクス主義を信奉してやまない方々も、実は、言霊信仰、御霊信仰に囚われた、最も日本人らしい日本人であることを、その批判的精神を持って、自ら証明しているわけだ。
FDRはヤルタ秘密協定で、満州・樺太・千島列島・北朝鮮とそこに住む日本人をスターリンに売り渡した。さらに、それを実体化するやめ、ならず者のソ連軍を極東に向かわせる必要があった。そして、そのための時間を必要としていた。
「日本を降伏させてはならない」
布石は打ってあった。カサブランカ会談後の記者会見で、FDRは枢軸国に無条件降伏以外の降伏を許さないと言い放った。会談相手のウィンストン・チャーチルでさえ寝耳にミミズ、いえ、寝耳に水の話だった。
それでも日本は、有条件による“敗北”を模索した。しかし、間に合わなかった。スターリンは、まんまと欲しいものを手に入れた。
『日本は誰と戦ったのか』 江崎道朗 KKベストセラーズ ¥ 1,250 戦後の常識が全てひっくりかえる 衝撃!米保守派の最新歴史研究…日本は? |
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1930年代、1940年代、アメリカの政策決定の現場には、スターリンの意向をその政策に活かすために暗躍するエージェントたちが巣食っていた。FDRはそれに迎合したし、その死後を受け継いだトルーマンも、立場上隠蔽に加担した。
《アメリカの学会やマスコミは、アメリカを裏切った者たちを、あたかも無実の被害者であるかのようにかばい、むしろ英雄視してきました》
そりゃそうだ。アメリカの学会やマスコミで力を持つ者たちは、コミンテルンの策謀の利得者なんだから。そういった連中が歴史学会やアカデミズムを我がものとするアメリカ社会においては、彼らと国際政治や軍事専門家の間で歴史観が逆転してしまっているんだそうだ。
・・・日本よりは、ましだね。
最後に、著者のまとめを紹介しておきます。
本書を読んで、「やはりルーズベルト大統領とスターリンが悪かったんだ。日本は悪くなかったんだ」というような誤読はしないでいただきたい。国際政治の世界では、騙されたほうが悪いのです。そして先の大戦で、日本はインテリジェンスの戦いで敗北したのです。自戒を込めて申し上げるのですが、その痛苦な反省に基づいて必死に学ぼうとすることが、日本にインテリジェンスの戦いの勝利をもたらすことになるのです。 本書p293 |
日本が悪かったことが、やはりあるんだな。戦争にも、そしてインテリジェンスでも、日本は負けたということだな。負けてはいけないんだな。


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