めんどくせぇことばかり 『永遠のおでかけ』 益田ミリ
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『永遠のおでかけ』 益田ミリ

お父さまが亡くなられたんですね。

ごく当たり前に、いつもそばにいてくれてた人がいなくなってしまう。そう、いなくなるんですよね。そして、どんなに思っても、二度と会えない。病に倒れたことでそれを意識し、恐れながらも心は勝手にその日に備えて準備を始めるんですよね。ついにその日を、やっとその日を、なんとかその日を迎えるわけです。その時は儀式の手配に追われている気づかないけど、あとから「もう、どうしたってあえない」ってことを思い知らされるんですよね。

益田ミリさんは、そんな言葉は使わない。使わないんだけど、静かだけど深い感情が、掌の中で脈を打っているかのように、ひしひしと伝わってきます。

父は母が死んでから10年生きました。ずいぶん経ってから、飲んでるときに、ふと、こんなことを言いました。「出てこないんだよ。お化けになって出てきてくれるかと思ってたのに、お化けどころか、夢の中にさえ出てこないんだ」

酒に強い男で、接待も含めて、なんだかんだと酔っぱらって帰ってくることが多い父でした。いくら酔っぱらって帰って来ても、朝にはしゃきっとしてましたね。・・・しゃきっとしてるふりはしてましたね。一度は母が小言を言ったとき、「酔っぱらってお前に起こしてもらったことがあるかよ」って言い返してたことがあった。母がいろいろと苦しんでたの知ってたから、「くそ親父」って、心の中では大声で叫んでたんだけどね。

まあ、そんな父が、「死んだ母が現れない」って、「お化けになって出てきてくれない」って、・・・精神的には、ずいぶん母を支えにしてたんですね。まあ、夫婦のことは、どうしたって、他人には分からないですよね。

そんな父も亡くなって、もう13回忌も過ぎました。時間をかけて、それを受け入れていった時には、もう自分の始末を考えるころになってました。

『永遠のおでかけ』    益田ミリ

毎日新聞出版  ¥ 1,404

大切な人の死で知る悲しみとその先にある未来 誰もが自分の人生を生きている
叔父さん       タクシーの中で
売店のビスケット  ほしいもの
おでんを買いに   ドールハウス
父語る         縁側のできごと
父の修学旅行    美しい夕焼け
冷蔵庫の余白    クジラの歌
おばんざい      最後のプレゼント
クラスメイトのこと   ひとり旅
桜花咲く頃       わたしの子供
卓袱料理        ハロウィンの夜


エッセイでも、女性の書いたものを読むことはあまりないんですけど、・・・失礼しました。この人は、本質的には漫画の人なんですね。マンガ家で、デザイナーで、エッセイストということのようですね。

以前に詠んだこの人の本の中でも、『言えないコトバ』という本が印象に残ってます。やはり、言葉っていうのは生き物ですからね。誰がその言葉を使うかによって、イメージどころか、場合によっては意味合いまで変わってしまうこともある。

同じ言葉であっても、暖かく人を包む真綿のようになることも、いたるところでひっかき傷を作りそうなのこぎりみたいになることもありますね。

同じ言葉でも、その歳では似つかわしくない言葉とか、この人ならかっこいいけど、こっちの人が使ったチャンチャラおかしいなんてこともありますね。

そんなところに気持ちが囚われてなにを言うのも怖くなっちゃうような、だからといって黙ってちゃ仕方がないから思い切って口にしてみたら、一生懸命に気を使いまくったことが全部台無しになっちゃうんじゃないかって堂々巡りの心配の迷宮に閉じ込められていきそうな、そんな優しそうな人と想像しながら読んだものでした。

今回呼んだこの本で感じたのは、この人の強さでした。悲しいけれど、仕方がないものとして、それを受け入れる。そこに感じる強さは、おそらく女特有のものじゃないかな。悲しみにさいなまれながらも、それに流されずに受け入れて・・・。きっとこの人は、この出来事を自分の血肉に変えていく。淡々とした、優しさに溢れた文章でありながら、そんな強さを感じつつ、自分が同様の日々を過ごしてきたことを、思い出しました。




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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