『アメリカはなぜ日本を見下すのか』 ジェイソン・モーガン
いま、『リベラルに支配されたアメリカの末路』っていう本を読み始めたんですけどね。まったく、ずいぶん激しい言葉が躍りまくってるんですよ。 《アメリカは、脳が乗っ取られた状態で、ゾンビ化した国》なんですって。 |
んんん、この間読んだ、寄生虫の本を思い出してしまった。あんな感じで、寄生虫に乗っ取られたかたつむりみたいに、アメリカは木に登らされて鳥に食われてしまうのか?
この人、こんなに激しい人だっけ?
というのも、前にこの人の書いた『アメリカはなぜ日本を見下すのか』 っていう本を読んでるんですね。たしか、足の手術で入院しているときに読んでたんじゃなかったかな。その時、よくわかりました。日本が病んでいる以上に、アメリカは病んでいるんですね。その時の分の進め方も厳しいものだったけど、こんなにも鬼気迫った感じじゃなかった。最初にこの本を読んだ人は、きっと、ひいちゃうだろうと思います。
そんなわけで、前作、『アメリカはなぜ日本を見下すのか』の時のブログの記事を紹介しておこうと思います。
だいたいが、アメリカは建国のルーツそのものが問題であります。建国をになったピューリタンの教えが、そもそも独善的なものですね。
ジョン・ウィンスロップは、宗教の自由を求めて大陸へ移住し、マサチューセッツ湾植民地初代知事となったそうです。彼の行った《丘の上の町》という演説は有名で、「清教徒は神と契約を交わした民で、“丘の上の町”に住み、彼らは世界の模範にならなければならない」というもの。“丘の上の町”とはつまり、“約束の地”であり、契約の民は聖地への巡礼を試みるピルグリム・ファーザーズですね。
“宗教改革”に関する世界史の講義のようですが、カトリックにおいては、聖書の解釈権は教会に集中され、人々は教会に対して、神による救いを求めました。しかし、聖書主義の名のもとに、人々がそれぞれの立場で神とつながっていったことによって、宗教改革後の教えは、次から次へと分裂していってしまいます。
自分の離婚願望を満たすため、ヘンリー8世はローマ教会と袂を分かち、イギリス国教会を設立したのがイギリスの宗教改革でした。だからイギリスの宗教改革は、本来、その本質であるべき教義を問題としていません。当初はカトリックの形式がそのまま使われていたそうですね。今でも、ウィリアム王子の結婚式なんか見ていると、ずいぶんと伝統的な形式に傾いているように感じられます。そのため、教義をめぐる様々な主張は、あとから登場し、次から次へと分裂していき、中でも原理主義的な考え方は危険視されて、排除されたはずなんですね。そして、それがピューリタンだったわけです。
『アメリカはなぜ日本を見下すのか』 ジェイソン・モーガン ワニブックスPLUS新書 ¥ 896米国の大嘘を喝破 間違いだらけの対日歴史観を正す |
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著者のモーガン・ジェイソンは1977年生まれの、アメリカの歴史学者で日本史の研究者です。彼自身、アメリカの、リベラルという名の人種差別主義的、似非進歩主義的な学問の世界に身を置いていただけに、その主張するところには真実味を感じさせるとともに、切実さがにじみ出ています。学会や報道界がいかにひどい状況になっているかは、お読みいただかなければなりませんが、今日のところは、アメリカが日本を見下す理由として、アメリカの本質に関わる部分を、いくつかあげさせてもらいます。
さて、まずは、ピューリタンの独善性については紹介のとおりです。続いて、アメリカには本質的に、君主制国家を憎悪する性格があるという点についてです。単純な問題であるが、アメリカは、君主制国家イギリスから、信仰の自由を求めて逃亡した者たちが建設した国家です。同時に、君主制国家イギリスへの反乱によって生まれでた国家ですからね。
さらに、アメリカには中世がありません。これは20世紀初頭のイギリスのジャーナリスト、セシル・チェスタトンも、同様のことを言っていますね。ある意味では当然である、アメリカ建国の理念はいきなり啓蒙思想家によっています。なかでもロックであり、モンテスキューであり、ルソーらの革命思想によっています。しかし、古代、中世は歴史の厚みであり、アメリカにはそれがありません。その上、日本は、古代、中世、近現代に断絶がありませんからね。ヨーロッパには古代と中世に断絶があり、ペスト大流行で失われたものも多いが、長い歴史のなかで苦労して近代を築き上げた、それがないだけに、アメリカは過去や伝統に重きをおくことができず、軽視しがちであるわけです。いや、逆に憎悪しているんはないかとさえ感じさせられます。
アメリカが日本を見下す理由ですよね。今の三点を見ただけでも、アメリカが日本を見下す理由というのは、アメリカの本質そのものに関わっているというわけですね。
と、まあ、こんなことを書いてました。じつはこの本、大変興味深い本で、本編のほかにも、《アメリカの歴史学会について》、《アメリカの選民思想・排神思想について》と題して記事を書いています。それだけ大きな影響を受けたということですね。機会があれば、そちらも紹介してみたいと思います。
ともあれ、本当は前作から読まれた方がかと思いますね。


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