『問題は右でも左でもなく下である』 適菜収
かつて自民党は保守的な側面もあり、伝統的な家族制度の護持を唱えていたが、今では配偶者控除の廃止を検討し、農協をはじめとする中間共同体に攻撃を仕掛け、国民をだましながら移民政策を進めている。昔の自民党と今の自民党は完全に別物。国民の声を吸い上げるシステムも崩壊し、マーケティング選挙による集票を基盤とするいかがわしい都市政党となってしまった。 ・・・「戦後レジームからの脱却」などと駄法螺を吹きながら、アメリカの要望通りに国の形を変え、「戦後レジームの固定化」を進めてきた。シンプルな対米追従・売国路線・・・ 本書p28 |
宰相リシュリューのもとに王権の強化が図られ、ブルボン朝は最盛期を迎えることになりますね。なにしろリシュリューの手腕はすごかった。政治史の中では大政治家、偉大なるマキャベリスト、まれにみる無私の人と持ち上げられます。なんかそんなセリフを聞くと、ビスマルクや大久保利通を連想してしまいます。
だけど、文学の世界では、評判悪いですね。デュマの『三銃士』の中では、あるで悪の権化。“王妃様の浮気はともかくとして”という話ですから何とも言えませんが、やはり人々からの人気がなかったのは確かみたいですね。
このリシュリューと、それに続くマザランが宰相を務めたこの時代のフランスでは、やはり、中世以来の中間層が、その足場を切り崩されていくんですよね。その反発がフロンドの乱の原因となり、それが鎮圧されて、絶対王政が確立していくっていう流れ。
中間層は場合によっては中間搾取層となり、新たな勢力の登場を頭から押さえつける反動勢力でもあったわけですね。だけど、中間層ってのは直接民衆の生活に接して、大きな力を持ってますからね。政治の暴走の大きな歯止めの役割を果たしていたわけです。
たしかに、今の日本でも同じことが進められてますね。安倍首相を大リシュリューになぞらえるつもりはありませんが、これまでの“良き日本”を支えてきた中間層がどんどん力を失いつつあることは、仕事をしていても確かに感じます。
ベストセラーズ ¥ 1,404 今の政治は、「下」の気分を探り、プロパガンダで「下」を動かすことで成り立っている |
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「民主よりはマシ」派でしたね、・・・たしかに私は。
でも、第一次安倍内閣時代から、安倍首相のやり方が道理に合っていないことを非常に残念に思っていました。私がそう思ったのは、教員免許制度の改革についてでした。仕事上、学校の先生との付き合いが多いのですが、現場の教員の方々はあきれ返っていました。その制度、今でも続いているのですが、免許更新にあたっている教員の方々は3万円払って、夏休みに一週間ほどの講習を受けるんだそうです。その講習は日頃の学校での勤務や専門教科には、ほとんど関係がないんだそうです。皆さんのおっしゃるところでは、講習を請け負っている貧乏な三流大学の救済策ではないかとのことです。
それでも、「戦後レジームからの脱却」の最大の好機と期待をしていました。・・・けどね、残念ですね。
激しい言葉が使われている本は、心が乱されるのであまり読まないようにしているのですが、この本は、題名にもなっている《問題は左でも右でもなく下である》という言葉に惹かれて読みました。
それは、本書第四章の章題にもなってました。この第四章は著者の適菜さんと帝塚山学院大学教授の薬師院仁志さんの対談形式になってます。薬師院さんの書いた『英語を学べばバカになる』などを大変面白く読ませてもらってますが、どうも、肌が合うみたいです。
英語もそうなんですよね。英語が自由に使いこなせるなら、新しい言葉を日本語に翻訳すればいい。日本はこれまで、自分たちの言葉で世界一流の学問に触れることができる国だった。それが日本の強みだったはず。
今の日本の政治は、グローバル一辺倒ですからね。
・・・潮時かなぁ。


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