めんどくせぇことばかり 『鬼平先生流 粋な酒飯術』 佐藤隆介
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『鬼平先生流 粋な酒飯術』 佐藤隆介

後に《必殺シリーズ》と呼ばれるようになる時代劇の始まりが、池波正太郎の『仕掛人・藤枝梅安』にあったことを知ったのはだいぶあとのことでした。先にテレビ時代劇としての《必殺シリーズ》に馴染んでしまったので、池波正太郎という人物が頭に浮かぶ前に、藤田まことの顔が浮かんでしまいます。でも、『仕掛人・藤枝梅庵』を読むと、やっぱり池波正太郎なんですね。

梅安さんもそうだけど、鬼平も剣客商売の小兵衛も、ものの食い方には型があって、口うるさいんですよね。だけど彼らが主張するその型にはちゃんと筋の通った理屈があって、まるで彼らの舌は、その理屈を外しては、それの旨さを感知しないようになってるんじゃないかってくらい型にこだわる。

土台、彼らがこだわる食い物は、あらためて考えてみれば、そうそう大したものではないわけです。豆腐だったり、蛤だったり、ごくごく当たり前のものばかり。そういう誰でも手に入りやすい食材を、ちょっとの工夫で「うまく食おう」、「うまく食ってほしい」っていう知恵だったり、心配りだったりに感じられるわけです。

この本は、数多くの“飲むこと食うこと”エッセイをまとめたものですが、それらの最後の方に《鬼平先生流[粋な酒販術]》っていうのがあります。そこに「粋の基本は、抑制のきいた控えめな姿勢にある」と書かれています。どうもひとつ、私の思ってきたものと違います。さらに、以下のように続きます。
鬼平時代の江戸は人口百万を超える世界有数の大都市だった。ボンヤリ歩いていればたちまち人にぶつかる。つねに、周囲の人間に、気配りや気遣いが欠かせない。その気配りや気遣いがまとまって洗練されたマナーが「粋な振る舞い」に他ならない。

どこか「粋」というものを、自分を良く見せようとか、姿格好にこだわったもののように捉えた部分がありましたので、パウロではありませんが、目から鱗が落ちました。人を気遣って、しかもそれを感じさせない心遣いが「粋」な振る舞いなんですね。小兵衛たちのもののくい方にも、なんだかそれに通ずるところがあるようです。



小学館  ¥ 659

池波正太郎の書生を10年務めた著者の食をめぐる痛快エッセイ 人生とは畢竟、口福に尽きる
鴨は葱背負っては来ない        蕎麦屋とは昼酒処なり
そもそも小料理屋とは何ぞや      ホワイト・アスパラガス万歳
手塩にかける心              日本一ぜいたくな駅弁
叶ふはよし 叶ひたがるはあしし    遊びをせんとや生まれけむ
寿命は「御御御付」で決まる       とりあえず卵さえあれば
鮑捕る海女の眉目よき潮めがね    「いただきます」忘るべからず
反骨                     会う人すべてが我が師
一日不作 一日不食           お茶の子さいさい
夏酒の友                  花間一壷酒 獨酌無相親
お楽しみ袋                 花気随酒
毘梨耶は大根の皮にあり        丑の日は「どぜう」にしよう
色不異空 空不異色 色即是空    松茸飯ごっこ
ホワイトデー                朝湯 朝酒 朝マル鍋
池波流「冷やし汁」            俺のカレーライス
豊葦原瑞穂国に帰れ           酒酣心自開
おもしろうわさびに咽ぶ泪かな     薫風には西洋ウドとキャベツ蚕豆
涼菜涼酒                  海苔弁
盤中祇有水精塩              たかが蒟蒻 されど蒟蒻
「目くじら」も今は死語か         辰巳芳子『食に生きて』読むべし
枝豆を喰えば雨月の情あり       老驥伏櫪 志在千里
鬼平先生流 [粋な酒飯術]       蛤少々、浅利たっぷり


著者の佐藤隆介さんは、コピーライターが本業の方だそうです。副業として翻訳やら編集の仕事やらとありますので、大きな枠の中では池波正太郎さんと同じ《ものを書く仕事》を生業としてきた方だそうです。

著者が自称する"池波正太郎の書生”を務めることになったのは、『食卓の情景』がきっかけだそうです。《その一巻を貫く「生きることは食べること。食べることは生きること」という池波正太郎一流の人生哲学に私はしびれた》とあります。そして、"池波正太郎の書生”生活の中で、「人生の達人ならではの“粋な飲み食いの法”を叩き込まれた」とありますが、それは著者にも、それを受け取る土台があったということですね。

たしかに、《飲むこと食うこと》にここまでこだわれば、それを軸にした人生を送ることもできるんですね。びっくりしました。

海なし県の、しかも山国生まれということもあって、海の食材に季節を感じるということが、還暦間近のこの年になってもわかりません。自分からそれを求めることもなかったので、残念ではありますが今更どうにもなりそうもないですね。

山岳部時代の万年食当に始まって、誰かと山に行くときはいつもご飯の係をしていたこともあり、「作ること、食べること」が若い頃から大好きです。ただ、山の食当始まりということもあって、《早く、軽く、うまく》なんですね。まあ、家で料理するのに《軽く》は関係ありませんが、いまだに《早く》というのにはこだわってしまいます。

今はもう、連れ合いと二人の暮らし。寂しくなるのかと思ってましたけど、違いました。もう、二人のほうが気楽です。子供と同居なんて、もう、とてもとても・・・。いまは、《早く》からも開放されて、“うまい”飯を二人で楽しみたいですね。

この本の後半では、奥様に先立たれた著者の“飲むこと食うこと”エッセイが披露されたます。どこまでも、“飲むこと食うこと”に向き合って生きておられることに感服いたしました。私も、仮に連れ合いに先立たれることがあったとしても、山に登るために、うまいものを食うために、死ぬまで生きていこうと思います。



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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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