半田めん『おなかがすいたハラペコだ② おかわりもういっぱい』 椎名誠
ソーメンの話がたびたび出てきますね。
著者の椎名誠さんも麺好きで、人類というよりも麺類の部類の方らしいですね。私はご飯好きの飯類ですが、飯を食いつつ麺を思ってしまう浮気者です。稲作に向いた土地の少ない山国育ちのせいか、飯だけでは足りず、夕ごはんのときは必ずうどんの汁物がついてました。大抵は、おっきりこみです。
おっきりこみは、大きな枠の中では煮込みうどんですから、汁を吸って太くなりますね。打った麺をそのまま汁に入れますから、汁も小麦粉が溶けてとろみが付きます。
冬の寒いときでも、おっきりこみの一杯で温まります。なぜか心まで温まるから不思議です。それが私の麺体験の原点にあります。
ですから、ソーメンという麺は、その対極にある麺類ですね。ひたすら細く、かつ水で冷やして、さらに氷まだ持ち出して冷たくして食べるっていうんですから。かと言って、麺を冷やして、つけ汁で食べるというのが受け入れられないわけじゃありません。うどんと同時に蕎麦も、土地に恵まれない山国の貧乏人の腹を満たしてくれる、とても大切な食い物でしたからね。
だけどあそこまで細いとね。どうも、上品にすぎるんじゃないかって気がします。もちろん太ければいいってわけじゃないですよ。すすりあげることが不可能なくらい幅広のうどんがあると聞きますが、それでは食指が動きません。私の連れ合いとはきしめんが好きなのですが、私はきしめんが得意ではありません。すすりあげたときに、くちびるのところできしめんがベロベロするのが、・・・ちょっとね。理由はそれだけのことですから、決して拒否はいたしませんが・・・。
細い方に戻ってソーメンです。暑いわけじゃありませんから、フーフーしなくても、本来ガンガン食えるはずなんです。だけどソーメンだと、なかなかおなかが一杯にならないんですね。ある程度の充足感に達するにも、けっこう箸を動かす必要があります。そばのように香りが高いわけじゃありませんから、そのうち飽きちゃうんです。若い頃は、そういう理由でソーメンから遠ざかったこともありました。
たしかに、他の麺類以上に工夫が必要ですね。薬味をいろいろ準備しておくのは変化があるし、楽しみにもなりますね。途中で汁の味を変えるのもいいですね。連れ合いと一緒になってからは、そういう方法を教えてもらって楽しんで食べられるようになりました。
私は、いまだにソーメンと冷や麦の見分けが付きません。もとは、ソーメンは手延べで、冷や麦はうどんを細く切ったもので“切麦”という呼ばれ方もあったとか。明治時代に入って製麺機ができると、製法の違いが曖昧になってきたんだそうです。調べてみると、今は太さで分類しているそうです。直径1.3ミリ未満がソーメン。1.3~1.7が冷や麦。それ以上がうどん。幅が4.5以上がきしめんなんだそうです。
そこで問題になるのが半田ソーメンです。半田めんとの出会いは、七年前になります。娘の結婚した相手が徳島県の男性で、もっぱら半田面を食する麺類だったのです。
一度食べた私は、すっかり半田めんのとりこになりました。ソーメンと違って太いですから、ある程度腹にたまるまでに時間がかかるというソーメンの弱点を克服しているのです。私は半田めんにハマりました。娘を掠め取った相手、一般には婿といいますが、それを受け入れるかどうかは別にして、半田めんは大歓迎です。ありがとう、徳島県の人。
一つ、問題があります。私は「半田めん」と読んでおりますが、娘をさらいとったトンビのよな男(婿)を始め徳島の人たちは、これを半田ソーメンと呼ぶのです。半田めんは太いです。少なくとも1.7ミリを超えることは間違いありません。明らかにうどんです。でも、徳島の人たちはこれを「うどん」、または「半田めん」と呼ばれることを頑なに拒否するのです。
定義の上から言うと、1.7ミリ辺りになるとそれで十分細いですから、それ未満であればソーメンと呼ぼうが冷や麦と呼ぼうが、作った人に任されるそうですが、太いとなると、やはり「うどん」のはずです。今度、私のかわいい二人の孫の父親(婿)が来たら、「半田うどん」と口を滑らせてみようか。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
著者の椎名誠さんも麺好きで、人類というよりも麺類の部類の方らしいですね。私はご飯好きの飯類ですが、飯を食いつつ麺を思ってしまう浮気者です。稲作に向いた土地の少ない山国育ちのせいか、飯だけでは足りず、夕ごはんのときは必ずうどんの汁物がついてました。大抵は、おっきりこみです。
おっきりこみは、大きな枠の中では煮込みうどんですから、汁を吸って太くなりますね。打った麺をそのまま汁に入れますから、汁も小麦粉が溶けてとろみが付きます。
冬の寒いときでも、おっきりこみの一杯で温まります。なぜか心まで温まるから不思議です。それが私の麺体験の原点にあります。
ですから、ソーメンという麺は、その対極にある麺類ですね。ひたすら細く、かつ水で冷やして、さらに氷まだ持ち出して冷たくして食べるっていうんですから。かと言って、麺を冷やして、つけ汁で食べるというのが受け入れられないわけじゃありません。うどんと同時に蕎麦も、土地に恵まれない山国の貧乏人の腹を満たしてくれる、とても大切な食い物でしたからね。
だけどあそこまで細いとね。どうも、上品にすぎるんじゃないかって気がします。もちろん太ければいいってわけじゃないですよ。すすりあげることが不可能なくらい幅広のうどんがあると聞きますが、それでは食指が動きません。私の連れ合いとはきしめんが好きなのですが、私はきしめんが得意ではありません。すすりあげたときに、くちびるのところできしめんがベロベロするのが、・・・ちょっとね。理由はそれだけのことですから、決して拒否はいたしませんが・・・。
細い方に戻ってソーメンです。暑いわけじゃありませんから、フーフーしなくても、本来ガンガン食えるはずなんです。だけどソーメンだと、なかなかおなかが一杯にならないんですね。ある程度の充足感に達するにも、けっこう箸を動かす必要があります。そばのように香りが高いわけじゃありませんから、そのうち飽きちゃうんです。若い頃は、そういう理由でソーメンから遠ざかったこともありました。
たしかに、他の麺類以上に工夫が必要ですね。薬味をいろいろ準備しておくのは変化があるし、楽しみにもなりますね。途中で汁の味を変えるのもいいですね。連れ合いと一緒になってからは、そういう方法を教えてもらって楽しんで食べられるようになりました。
新日本出版社 ¥ 1,296 おなかがすいて、メシを食う。ほんとうのおいしさはイブクロのあとで胸に染みるもの。 |
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私は、いまだにソーメンと冷や麦の見分けが付きません。もとは、ソーメンは手延べで、冷や麦はうどんを細く切ったもので“切麦”という呼ばれ方もあったとか。明治時代に入って製麺機ができると、製法の違いが曖昧になってきたんだそうです。調べてみると、今は太さで分類しているそうです。直径1.3ミリ未満がソーメン。1.3~1.7が冷や麦。それ以上がうどん。幅が4.5以上がきしめんなんだそうです。
そこで問題になるのが半田ソーメンです。半田めんとの出会いは、七年前になります。娘の結婚した相手が徳島県の男性で、もっぱら半田面を食する麺類だったのです。
一度食べた私は、すっかり半田めんのとりこになりました。ソーメンと違って太いですから、ある程度腹にたまるまでに時間がかかるというソーメンの弱点を克服しているのです。私は半田めんにハマりました。娘を掠め取った相手、一般には婿といいますが、それを受け入れるかどうかは別にして、半田めんは大歓迎です。ありがとう、徳島県の人。
一つ、問題があります。私は「半田めん」と読んでおりますが、娘をさらいとったトンビのよな男(婿)を始め徳島の人たちは、これを半田ソーメンと呼ぶのです。半田めんは太いです。少なくとも1.7ミリを超えることは間違いありません。明らかにうどんです。でも、徳島の人たちはこれを「うどん」、または「半田めん」と呼ばれることを頑なに拒否するのです。
定義の上から言うと、1.7ミリ辺りになるとそれで十分細いですから、それ未満であればソーメンと呼ぼうが冷や麦と呼ぼうが、作った人に任されるそうですが、太いとなると、やはり「うどん」のはずです。今度、私のかわいい二人の孫の父親(婿)が来たら、「半田うどん」と口を滑らせてみようか。


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