めんどくせぇことばかり 『平城京』 安部龍太郎
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『平城京』 安部龍太郎

本当に日本史というのは、物語の宝庫ですね。なかでも、飛鳥時代ってのは、まさに国家としての日本が誕生した時代。で、あるにもかかわらず、この時代は謎に包まれてます。かつ、手を付けようとする人が少ないですね。

新しい国造りをするにあたって、古くからの伝承をまとめようという動きがありました。しかしその動きは、激しい政治的動乱に巻き込まれていきます。その動乱の中、日本はわざわざ朝鮮半島に遠征軍を派遣して、唐・新羅連合軍と戦って敗れるという国家存亡の危機に立たされます。日本は、日本という国名を名のるに至る前に、もう国家存亡の危機ですからね。

それが済むと、今度は国を二つに割っての内乱です。なんとも忙しいことです。そんな大動乱の果に、『日本書紀』という正史が登場します。正史とされる『日本書紀』が登場すると、それ以外の書物が消えてしまうんです。まるで『日本書紀』に書かれていること以外の説を抹殺する意図でも働いていたかのように。イエスから300年後に新約聖書が編纂されると同時に、それに反する一切の説が抹殺されたのによく似てます。

近代史の中で、国家神道という偏狭な支配機構に国民を編成するなかで、安易に天皇やそこにつながる神話が利用されてきたってことはありました。でも、《羹に懲りて膾を吹く》じゃありませんが、戦後になって、『日本書紀』に関する研究、そこに書かれた時代に対する研究は、やはり停滞していたんでしょうね。

最近になってようやく、その時代に関わるとっても面白い、新しい説が登場しているみたいです。きっと、この『平城京』も、そんな流れの中で登場してきた物語なんじゃないかなって、そう思いながら読みました。・・・とても面白く読みました。

主人公は安倍船人。白村江海戦において、唐の水軍に大敗を喫した阿倍比羅夫の息子っていう役回りです。白村江の敗戦処理としての遣唐使船の船長の一人になるんですが、命令に背いて戦争捕虜の解放に関わって唐に留め置かれます。数年後に恩赦になって帰国するんですが、朝廷からは罰せられるものの、一部からは英雄視されるってわけです。

平城京の建設は、白村江の敗戦で政治の中枢から追いやられた安倍氏にとっては、起死回生のチャンス。安倍氏の当主である安倍宿奈麻呂を助けて安倍船人が奔走するっていう成り行きの中で天智派と天武派の争いに巻き込まれ・・・。っていうようなお話です。


『平城京』    安部龍太郎

角川書店  1,944

たった三年で、唐の長安に並ぶ新都を奈良に―実力者・藤原不比等からの必達の命だった
第一章   新しい都
第二章   建都の計画
第三章   新たな指令
第四章   葛城一族
第五章   見えざる敵
第六章   帝の行幸
第七章   奈良山の激闘
第八章   百済の泊
第九章   天智派対天武派
第十章   鳥部谷
第十一章  即身仏
第十二章  大極殿


白村江の戦いに敗れたことへの危機感は、とてつもなく大きいものだったでしょうね。だいたい、なんで唐・新羅連合軍と戦わなきゃいけないんでしょう。百済復興のために日本が滅びてもよかったんでしょうか。じつは、そのへんのことも、微妙にこの物語のあらすじに出てくるんですけどね。

ただ、そのあたりは、非常に表面的に感じました。もっともっと、飛鳥時代の闇というか、『日本書紀』が闇に葬ろうとしたことは、もっともっと重大なことにつながってるんじゃないかと思います。

いつか、さらに突っ込んだ物語を書いてもらいたいな。・・・絶対読みたいな。
ずい分前に読んだ本ですが、服部剛さんの『感動の日本史』って本に、白村江の戦いで捕虜となり、唐に留め置かれた大伴部博麻という人の話が書いてありました。

大伴部博麻は、遣唐使として唐に渡ったものの戦争の余波で帰れなくなった人たちと一緒のなるんですね。ある時、唐が対日遠征軍を編成しようとしているという情報を掴んで、なんとかその情報を伝えなくてはと躍起になるんです。博麻は自分の身を奴隷に落としてお金を作り、仲間を日本に帰すんです。

結局、唐の遠征軍は送られずに済むんですが、博麻は農奴として唐にとどまります。ずいぶん経って、すでに持統天皇の時代になったころ、日本に渡る僧侶が博麻のことを知り、僧侶に買い戻されて帰国し、持統天皇にその愛国心を讃えられたそうです。

白村江の戦いにおける敗戦の危機って、考えれば考えるほど半端ないですよね。・・・半端ない ああ半端ない 半端ない

・・・愚かな私を許してください。




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歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。

ありがとうございました



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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