『里山奇談 めぐりゆく物語』 coco 日高トモキチ 玉川数
どうも、虫やさんが、虫取りに、あちこちの里山をまわっているうちに、もちろん虫も集めたんでしょうが、どうやらおかしな話もたくさん集まってしまったみたいです。
集まった話の多くは、はっきりしない話なんですね。「確かに出ました」っていうような話とか、「ここでは以前、・・・というようなことがあったようです」っていうような話とかじゃないんですね。ただ、「へ~、なんだか不思議な話だね」って感じの話が多いですね。
山を歩いていて、地図にないのはもちろん、獣道か人の踏み馴らした道かも判然としない道がありますね。そんな道にテープのマーキングがあると、・・・私はついつい入ってしまう方なんです。この本に載ってる《みちしるべ》って話もそんな話でした。
その道に入っていくと、前を歩く人を見つけて、声をかけようと追いかけるんです。足を早めて、下りもあって加速がついたところで突然前がひらける。そこは切り立った崖の上で、すんでのところで踏みとどまるんです。すると、脇のヤブの中から、「チェ」という舌打ちが聞こえたという話ですね。・・・怖い!
若い頃に、奥秩父の和名倉山を歩いているときです。もとから道のはっきりしない山で、当時はまだ正規のルートでも藪こぎ込みでした。この山、もとは林業の山なんですね。私の生まれた家は、秩父の影森というところで、夕日は和名倉に沈みます。子供の頃、その和名倉山が山火事で何日も燃えたのです。日が沈む頃、夕日の赤と山火事の煙がとても不気味で、怖かったな~。
高校一年の秋に、山岳部の仲間と4人で和名倉山に登って、道に迷って、とても楽しかった。そんな思い出を胸に、一人で和名倉山を歩いているときなんですが、あえて正規のルートを外れて、マーキングに従ってみたんです。でも、やはりこれは危険でした。マーキングは、付ける人によって全く目的が違います。山仕事の人たちのマーキングを目当てに歩くと、場合によってはとてつもない急斜面に行き当たることがあります。
また沢登りの人たちのつけたマーキングだったら、突然、滝上に出る場合もあります。そんな経験をした人の話が、尾ひれを伴って“怖い話”に変わっていったのかもしれませんね。


和名倉山という山は、大きくて、茫洋とした山で、こういう山で道を失うと、もとに戻るのが大変です。今はどうなっているでしょうね。また行ってみたいな。
ただ、そのときもそうなのですが、不思議な何かを求めてるところもあるんですね。沢登りの人のマークングを、言わば逆にたどって下山していけば、まず必ずどこかで滝上か、急斜面の上部に出ることは間違いありません。
私なら、その道に入ってしまった原因をいろいろ脚色するでしょう。「なにかに誘われるように・・・」ということですね。どうせ「誘われる」のなら、できればたぬきや狐よりもきれいな女のほうがいいですよね。きれいな女がその間道の入口で“おいでおいで”をしていたら、そりゃちょっと怖すぎて、絶対ついていきません。
間道の奥で、先を行く人たちの声が聞こえるなんてのはどうでしょうか。そして、崖から一歩足を踏み出したものの、思いっきり伸ばしたてで藪をつかんで、なんとか落ちずに済んだ。その藪の根本に、女ものの靴と荷物が置かれていた。・・・なんてのはどうでしょう。
この本に出てくる話は、そういうふうに作ってない話が多いです。作ってない。だけど、ちょっと手を加えたくなるような、怖い話の題材なりそうな、そんなお話が揃ってます。
いかがでしょう。これを使って、読んだ人が、夜、トイレに行けなくなるような怖~い話を作ってみては・・・。
私は、それを読ませてもらう方がいいですね。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
集まった話の多くは、はっきりしない話なんですね。「確かに出ました」っていうような話とか、「ここでは以前、・・・というようなことがあったようです」っていうような話とかじゃないんですね。ただ、「へ~、なんだか不思議な話だね」って感じの話が多いですね。
山を歩いていて、地図にないのはもちろん、獣道か人の踏み馴らした道かも判然としない道がありますね。そんな道にテープのマーキングがあると、・・・私はついつい入ってしまう方なんです。この本に載ってる《みちしるべ》って話もそんな話でした。
その道に入っていくと、前を歩く人を見つけて、声をかけようと追いかけるんです。足を早めて、下りもあって加速がついたところで突然前がひらける。そこは切り立った崖の上で、すんでのところで踏みとどまるんです。すると、脇のヤブの中から、「チェ」という舌打ちが聞こえたという話ですね。・・・怖い!
若い頃に、奥秩父の和名倉山を歩いているときです。もとから道のはっきりしない山で、当時はまだ正規のルートでも藪こぎ込みでした。この山、もとは林業の山なんですね。私の生まれた家は、秩父の影森というところで、夕日は和名倉に沈みます。子供の頃、その和名倉山が山火事で何日も燃えたのです。日が沈む頃、夕日の赤と山火事の煙がとても不気味で、怖かったな~。
高校一年の秋に、山岳部の仲間と4人で和名倉山に登って、道に迷って、とても楽しかった。そんな思い出を胸に、一人で和名倉山を歩いているときなんですが、あえて正規のルートを外れて、マーキングに従ってみたんです。でも、やはりこれは危険でした。マーキングは、付ける人によって全く目的が違います。山仕事の人たちのマーキングを目当てに歩くと、場合によってはとてつもない急斜面に行き当たることがあります。
また沢登りの人たちのつけたマーキングだったら、突然、滝上に出る場合もあります。そんな経験をした人の話が、尾ひれを伴って“怖い話”に変わっていったのかもしれませんね。
『里山奇談 めぐりゆく物語』 coco 日高トモキチ 玉川数 KADOKAWA ¥ 1,512 野山を歩きつくした”生き物屋”が遭遇する、奇妙でノスタルジックな物語 |
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和名倉山という山は、大きくて、茫洋とした山で、こういう山で道を失うと、もとに戻るのが大変です。今はどうなっているでしょうね。また行ってみたいな。
ただ、そのときもそうなのですが、不思議な何かを求めてるところもあるんですね。沢登りの人のマークングを、言わば逆にたどって下山していけば、まず必ずどこかで滝上か、急斜面の上部に出ることは間違いありません。
私なら、その道に入ってしまった原因をいろいろ脚色するでしょう。「なにかに誘われるように・・・」ということですね。どうせ「誘われる」のなら、できればたぬきや狐よりもきれいな女のほうがいいですよね。きれいな女がその間道の入口で“おいでおいで”をしていたら、そりゃちょっと怖すぎて、絶対ついていきません。
間道の奥で、先を行く人たちの声が聞こえるなんてのはどうでしょうか。そして、崖から一歩足を踏み出したものの、思いっきり伸ばしたてで藪をつかんで、なんとか落ちずに済んだ。その藪の根本に、女ものの靴と荷物が置かれていた。・・・なんてのはどうでしょう。
この本に出てくる話は、そういうふうに作ってない話が多いです。作ってない。だけど、ちょっと手を加えたくなるような、怖い話の題材なりそうな、そんなお話が揃ってます。
いかがでしょう。これを使って、読んだ人が、夜、トイレに行けなくなるような怖~い話を作ってみては・・・。
私は、それを読ませてもらう方がいいですね。


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