めんどくせぇことばかり 『帰郷』 浅田次郎
FC2ブログ

『帰郷』 浅田次郎

買ってからどれくらい経つでしょう。2016年6月に出たんですね。ちょっと気がつくのが遅れて、買ったときには秋風が吹いてました。やっぱり、8月に読まないとね。そういうわけで、2017年回しになってた本なんですが、2017年も、なぜか8月にこの本のことを失念しておりまして、気がついた時には、・・・そう、秋風が吹いていたんです。そういうわけで、2018年回しになっていた本です。

表紙の兵隊さん、帰ってこれたんですね。良かった、良かった。ページを一つめくると、折り返しにこの兵隊さんからあいさつをされている人が写ってるんです。・・・それだけで、・・・うう

やっぱり、8月に読む本ですね。
ずいぶん前ですが、倉本聰さんの戯曲を本にしたもので、『帰国』っていうのがありました。太平洋戦争中に南の海で戦死した英霊たちが、現代の平和な日本にやってくる話でしたね。かれらは、自分たちが命を懸けた守ろうとした60年後の日本を見るわけです。・・・そして思うところは・・・。そういう本だったんですが、何とも切ない本でしたね。

この『帰郷』という本は、戦争にまつわる六つの話からなる短編集です。この本の紹介の中には、“反戦小説集”なんてわざわざ記したものまでありましたけど、戦争を描いた小説で、それを面白おかしく、もっとやれ、もっとやれなんて書いたものがありますか。白人世界でなら、蒙昧な有色人種の保護と、野蛮な原始的宗教の崇拝者の教化という意味合いで、もっとやれ、もっとやれと書かれたものもあるんでしょうけど。

日本が悪いと書かなけりゃ戦争賛美で、日本が悪いと書けば反戦小説という判断基準で今も生きている方がいるなら、そりゃ、生きながらに長寿銭でも配っていただきたいくらいです。そんな基準で判断されては、この『帰国』だって戦争賛美のお話にされちゃいます。

題名が似てるもんで、そのイメージを持ったまま読んだんですけど、ここに収められた六つのお話は、とても淡々と、 戦争に翻弄された人々の話が書かれています。


『帰郷』    浅田次郎

集英社  ¥ 1,512

戦争小説を書く著者が、「いまこそ読んでほしい」との覚悟を持って書いた反戦小説集
歸鄕
鉄の沈黙
夜の遊園地
不寝番
金鵄のもとに
無言歌


どの話も、はやり、切ないですねぇ。

みんな、当たり前に生きようとしていただけの人たちの話なんですね。だけど、この時代の人たちは、・・・“時代”なんて切って捨ててはいけませんね。私の父母や、祖父母の世代の方々は、多かれ少なかれ戦争に関わっています。

戦争に関わって、命を失った人も数百万人に及ぶわけだし、その人の身内を考えれば数千万人、戦争に人生を翻弄された人は、・・・どれだけなんて、考えることに意味はありませんね。

最近、思うんです。もう、目前に還暦を迎えようという年齢になってあれなんですけど、ようやく、いろいろなことの意味がつながってきたような気がするんです。父母が亡くなってだいぶたちますが、今ごろになって、知らなかった父母の若い頃の話が入ってきたりするんですね。

そういう話を聞いて、「ああ、だから私の家はああだったのか」と、今さらながらに思い至るってことがあります。

家族の制度が一気に崩壊していく中で、家の記憶なんてあっという間になくなるでしょう。ましてや、進んで表に出したくないことなんて、意識したって探り出すこともできなくなるでしょう。父母の若い頃のことも、家にまつわる出来事です。二人とも、そのせいで、ずいぶん切ない思いをしたようです。だけど、それでも、家によって守られてきたものもたくさんあるんです。

それにしても、あの世代は、どうして何も言わずに死んでいくんでしょうか。次の世代の私たちが、あんまり情けない連中だからでしょうか。だから、自分が受け止めてきたつらい経験を、私たちでは受け止めきれないと考えていたんでしょうか。だとしたら、なんだか申し訳ないな。そのこと自体が切ないな。

母が亡くなったときの父の慟哭の、その何割かは理解できたかもしれません。だけど、父母、祖父母の世代が背負ってきたものは、どうやらもっと大きいもののようですね。この本のお話の中にもそれらが垣間見えますが、まだまだ底は深そうです。

とりあえず、この本で底の見えないその沼に、足を浸してみませんか。




にほんブログ村 政治ブログへ 一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
関連記事

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

ありがとうございました



「《めんどくせぇことばかり》は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」
よくお越し下さいました

イーグルス16

Author:イーグルス16

息も絶え絶えです、ぜひ応援してください


現代とはなぜこんなにも棲みにくいのか。
前近代から近現代へと変貌し続ける世相の本質をつかみ生き方の支柱を示す。
カウンター
カテゴリ
こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
最新記事