『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』 早坂隆
“あとがき”に、《私はこれまで「ノンフィクション作家」「ルポライター」などと名乗ってきたが、最近では「ジョーク収集家」などと呼ばれることもある》と言っておられます。実は私、この本をもつけた時、「おっ、ジョーク収集家の早坂さんの本じゃないか」と思って手にとった次第です。なにしろ、この間、『世界はジョークで出来ている』を読んだばかり、大笑いさせてもらったばかりですからね。 |
その本ばかりじゃありません。早坂隆さんの出した“ジョーク系”の本は全部読んでます。それらからは、非常に多くのことを勉強させていただいたと感謝の気持ちでいっぱいです。私が、今日紹介する『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』を見つけた時、「おっ、ジョーク収集家の早坂さんの本じゃないか」と思ったのは、感謝と尊敬の意を込めて思ったことなんです。
それに私は、早坂さんの書いたルポルタージュも読んでいます。『鎮魂の旅 - 大東亜戦争秘録』という本です。とてもいい本でした。内容もそうですが、表紙の絵や色使いも素晴らしく、装丁が内容にピッタリあっていて、本として優れていると思いました。 |
その紹介の中で、私はこの本について、以下のように書いています。
あの時代を生きた者なら、だれもが一つや二つは今の人が驚くような物語を抱えている。だれでもそうだ。だからあえて語らない。語らないけどみんなそうだと知っている。だからあえて聞きもしない。 そんな中でもここに収録されたお話は、著者が丁寧に集めたもの。いずれも、こころの慄えるものばかり。“今の人”に属する私だが、それでも、わりと“この時代の人”に近い。この本の話は、父や母の時代の話になる。その分だけ切なく伝わる。 |
早坂さんは、私よりも13もお若いんですよね。しかも、この本は2013年に出されたものです。そのお若さでこの本が書けたのは、世界の紛争地を訪ね歩いた経験があってのことだったんですね。イスラエルの取材で、早坂さんがこうおっしゃっている場面があります。
《その後、私は外国の紛争よりも自分の国の先人たちが経験した先の大戦のことを書くようになり、今に至っている。私を大東亜戦争への取材に向かわせたのは、パレスチナ人の青年の一言であった》
それが、次の一言です。
『日本人の君に、僕たちの悲しみは理解できないよ』
PHP研究所 ¥ 950 各国の庶民の目に映る「憧れのニッポン」像は、日本人が知らない「世界と日本」を教えてくれた |
何度も書いて申し訳ないんですけど、私にとって早坂隆さんは《ジョーク収集家の早坂さん》という印象が強いです。これも繰り返しになりますが、以前から早坂さんの本を読ませていただいて、大笑いさせていただくとともに、大いに勉強させていただいていることに、感謝と尊敬の念を込めて《ジョーク収集家の早坂さん》と読んでいるのです。
そのジョークも、この本につながるような“旅”の中で集められてものだったんですね。
生きていくことは厳しいですね。今の日本人の想像を超える過酷な状況で生きている、しかも、年端もいかない子どもたち、少年少女、若い人たちが、世界には、ごく当たり前のように存在しているんですね。
もちろん、日本だって人間の想像を超える過酷な歴史を刻んできました。
だけど、大東亜戦争の記憶は、若い人たちの中では完全に歴史の中の一コマでしかなくなってしまっています。それはおそらく、オットー大帝の時代にスラブ人が被った悲劇と何ら変わらない出来事としてしか認識されていないんだろうと思います。
早川隆さんは、今は活動の足場を、大東亜戦争の記憶の掘り起こしに置いているということですが、本当に頑張って欲しいと思います。
ボーダーレスがどうのこうのと騒がれる時代ですが、国として、民族としての記憶を失って、どうして世界に立ち位置を求められますか。
何があろうと、生きていてくれただけで、心の底からありがたい。


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